若手社員の話題について行きたいけれど、聞こえて来るのは意味不明な言葉ばかり。時流に乗ってスマホを持ってみたものの、使いこなせている気がしない……。このコーナーでは、明日から話題の中心になりたいオジサンのために、スマホ・ソーシャル界隈でいま話題の用語を取り上げて解説します。今回は、日本で唯一のPHS事業者であるウィルコムが提供するサービス「だれ定」について。

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かつては3つの会社が事業展開していて、1990年代後半の携帯電話普及期には一定の存在感を示していたPHS。とりわけ、若者の間で人気となり、"ピッチ"という愛称で呼ばれていたことは、当時若者だった皆さんも覚えているかもしれません。その後、PHSは低迷していき、紆余曲折あって2社がサービスを終了したほか、残る1社であるウィルコムも2010年2月に会社更生法の適用を申請するなど、苦戦が続いていました。

しかし、ウィルコムはソフトバンクの支援を受けて再建に取り組み、2013年7月には繰り上げ弁済により会社更生手続を終結。2010年12月末に365万件に落ち込んだPHSの累計契約数も増加に転じ、2013年8月末の累計契約数は527万件にまで伸びています。その躍進の一因となっているのが、「だれとでも定額(だれ定)」というPHSならではの特徴を活かしたサービスです。

ウィルコムが提供するオプションサービス「だれとでも定額(だれ定)」

そもそもPHSは、携帯電話とは通信方式が異なり、低料金で音質が良いのが特徴。しかし、一方で1つの基地局がカバーする範囲が狭いため、エリアによっては通話できなかったり、通話が途切れるというデメリットもあります。携帯電話普及期には、低料金であることがPHSの人気の要因となりましたが、その後、携帯電話の利用料金も下がったことからメリットが薄れ、低迷していきました。

ですが、ここへ来て状況は変わりつつあります。ひとつは携帯電話がスマートフォンに移行したことによる利用料金の高額化です。LTE/4Gに対応したスマートフォンでは、パケット定額料金が高めになっているほか、他社携帯・固定電話宛の通話料が30秒21円と高いプランが一般的になっており、高額な利用料金を気にする人も増えています。そして、もうひとつがウィルコムが2010年12月に提供開始した「だれとでも定額」です。

だれとでも定額は、基本使用料などに加えて月額980円を支払うことで、10分以内の通話が月500回まで無料になるサービス。ウィルコムだけでなく、他社携帯や固定電話にかけても10分以内の通話であれば無料という点が魅力で、2013年6月末時点で加入者270万人という人気サービスになっています。基本使用料がもっとも安いプランと組み合わせた場合、月額2,430円で利用できるため、スマートフォンの通話料が高額となっている人であれば、スマートフォンとの"2台持ち"でウィルコム端末を使っても利用料金の総額を下げられる可能性があります。このような状況を受けた2台目需要の高まりが、同社の躍進を後押ししていると言えるでしょう。

ウィルコムの小型ケータイ「ストラップフォン2 WX06A」。携帯電話にはないユニークなラインナップも同社の魅力だ

また、2013年7月には同サービスの専用端末としてカード型アダプター「だれとでも定額パス」が登場。PHS回線を使った通話が自身のAndroidスマートフォンで行えるようになる製品で、Bluetooth接続したスマートフォンをPHSの"受話器"として利用できるというもの。使いこなすためのハードルはやや高めですが、同製品の基本使用料はわずか490円で、だれとでも定額の980円と合計しても月額1,470円で利用できるため、とにかく利用料金を安く抑えたい人には最適。新たな"2台持ち"スタイルとして、浸透していくかもしれません。

PHS回線を自身のAndroidスマートフォンで利用できるようにするカード型端末「だれとでも定額パス」

移り変わりの激しい携帯電話業界において、苦戦を経て、いま盛り返しつつあるPHS。唯一のPHS事業者となったウィルコムは、だれとでも定額のほかにも、低料金のスマートフォンプラン「だれスマ」なども精力的に展開しています。ユーザーにさまざまな選択肢を与えてくれる存在として、今後も注目しておきたいところです。

さっそく、話題のワードを使ってみよう!

上司 「相談があれば、いつでも電話しなさい。『だれ定』なら無料だからな!」
部下 「とはいえ、相談相手は"誰でも"というわけにはいきません」

……話題の中心になるための道のりは続く。

株式会社ライターズハイ
鈴木友博・日沼諭史・藤縄優佑

2009年3月設立。スマートフォン、携帯電話、PCなどIT分野を中心に、おもにオンラインメディアでの記事執筆を手がけるライター集団。記事執筆のほかに、ソーシャルゲームへのシナリオ提供やアプリ制作なども展開する。近著に「今すぐ使えるかんたんPLUS Androidアプリ大事典 2013年版」(技術評論社)、「ポケット百科WIDE Xperia Tablet Z 知りたいことがズバッとわかる本」(共著・翔泳社)がある。