私はiPhoneを2台とAndroid端末を1台所有しているが、ともに過ごす時間が長いのはiPhoneだ。理由はいくつかあるが、できるだけ客観的に語れる内容をピックアップしてみたい。

なぜiPhoneかについて語る前に、iPhoneとの"なれ初め"を紹介しておこう。所有した日付は日本で初めてiPhone(3G)が発売された2008年7月11日だが、その10カ月ほど前からiPod touchを利用していた。App Storeどころかネイティブアプリの開発が許可されていない時代であり、できることは限られていたが、セッセとあることに励むように……そう、ジェイルブレイク(脱獄)だ。

ジェイルブレイクでは、いろいろなことを確認できた。そのベース部分はカーネルから各種ライブラリ、ディレクトリ構造に至るまでOS Xのサブセット版に近い内容で、シェルの利用も可能など"モバイルUNIX"という雰囲気。そこにiOS独自のUIおよびタッチ機構が上乗せされたものがiOSであり、現在もその基本構造は変わらない。前身のNEXTSTEPを含めると、2007年時点でOS Xに10年以上接していた身としては、そこにかなりの安心感を覚えた。

あわせて、OS Xで培われたObjective-Cの開発スタイルを継承できるかも、という将来への展望を持った。その読みは的中し、当初Webアプリの形で進められようとしていたアプリ開発は、間もなくネイティブアプリを中心とする方針へと転じた。デスクトップPCほどリソースが豊富でない小型端末なだけに、パフォーマンス重視の姿勢は現実的な判断だったといえる。

最初に手にしたiOSデバイスは、初代iPod touch。すぐに"脱獄"を実行、OS Xと深く関わりのあるシステムであることを確認した(スクリーンショットはiPhone OS 2.0のもの)

iPhone 3Gの箱は、現在よりもひとまわり大きかった

このコラムのお題は「Androidよりも……」だが、2008年7月の時点でAndroidという選択肢は存在しなかった。だから当時の心情は「フィーチャーフォンよりも……」に近く、実際iPhone 3Gはフィーチャーフォンからの乗り換えだった。数年使うであろう端末の選択はある意味賭けだが、前述した安心感と将来への展望に対する期待感が、私の背中を押したのだと記憶している。以来フィーチャーフォンを使う時間は激減し、外出時はもっぱらiPhoneを持ち出すようになった。「慣れ」がiPhoneを選ぶ理由の1つであることは確かだ。

その後現れたAndroidは、Linuxをベースとするシステム。こちらもコアOSとしての実績は豊富で、しかもオープンソース。アプリ開発にはJavaのノウハウを活用できるので、潜在的な開発パワーがある。Googleの開発者支援体制にも力が入れられ、アプリの数も急増した。スマートフォンでどちらを選ぶかの俎上に載せる価値はじゅうぶんあるし、防水などiPhoneにない機能を備えた端末は多い。