9月20日に発売された米Appleのスマートフォン新製品「iPhone 5s」「iPhone 5c」は、発売から3日間で全世界の販売台数が900万台を突破したことが報告されている。iPhone 5s/iPhone 5cは、日本でも同日より販売が開始され、NTTドコモ、KDDI(au)、ソフトバンクモバイルの主要3キャリアがそれぞれ回線を提供している。

この3キャリアのiPhone 5s/iPhone 5cで販売が好調なのは、どうやらソフトバンクのようだ。家電量販店での実売データを集計した「BCNランキング」において、発売後の販売台数シェアで第1週、第2週ともにソフトバンクがトップとなっている。本稿では、この結果について考えてみたい。

iPhone 5s(左)とiPhone 5c

第1週、第2週の結果を考察

家電量販店における実売データを集計した「BCNランキング」が、9月25日に発表した携帯電話ランキング(2013年9月16日~22日)によれば、上位10位のうち7機種がiPhone 5sで、早くもランキングはiPhone一色となっている。iPhone 5s/iPhone 5cは、従来よりiPhoneを販売してきたソフトバンク、KDDIに加えて、新たにNTTドコモが販売に参入したことで、各キャリアの順位にも注目が集まるが、今回のランキングでは1位、2位となったのはソフトバンク版iPhone 5sの2機種。よって、発売第1週はソフトバンクが勝利したかたちだ。

ランキングを詳しく見てみると、第1位はソフトバンク版iPhone 5s 32GB、第2位はソフトバンク版iPhone 5s 64GB。第4位となったのはKDDI版iPhone 5s 32GB、第6位はドコモ版iPhone 5s 64GB、第7位はドコモ版iPhone 5s 32GB。なお、第3位と第5位には前モデルの「iPhone 5」がランクインしている。そのほか、第8位はソフトバンク版iPhone 5s 16GB、第9位はKDDI版iPhone 5s 64GB。iPhone 5を含めると、実にランキング上位10機種中9機種がiPhoneであることと、長らくiPhoneを販売してきたソフトバンクが1位、2位を独占し、他社を引き離しているのが印象的だ。なお、各社のiPhone 5cは、ランキング15位から30位までに位置しており、まずはハイエンドモデルであるiPhone 5sのほうに人気が集まったようだ。

次に、10月2日に発表された発売第2週にあたる最近の携帯電話ランキング(2013年9月23日~29日)では、意外なことに1位に前モデルのKDDI版iPhone 5 16GBがランクインするかたちとなったが、新型iPhoneで最上位となっているのは、2位のソフトバンク版iPhone 5s 64GBという結果。新型iPhoneの販売では、2週連続でソフトバンクが勝利した格好だ。

なお、前モデルのiPhone 5が1位にランクインした背景には、別稿でも紹介した通り、各販売店がキャッシュバックなどを付けることで、残りのiPhone 5を売り切る"在庫セール"が続いている影響が考えられる。

ソフトバンク好調の理由を考える

今回、新型iPhoneの順位において2週連続でソフトバンクが勝利した背景としては、まだ発売直後であることが影響していると言える。ハイエンドモデルのiPhone 5sに人気が集まったことからもわかる通り、発売直後に最新モデルを購入する人のほとんどは既存のiPhoneユーザーであり、その点、多くのiPhoneユーザーを抱えるソフトバンクにとって有利だったと考えられる。

また、iPhoneなどの携帯電話は通常、購入後2年以上が経過してから買い替えるのが一般的であり、今回のiPhone 5s/5cを購入する層としては、既存のiPhone 4s、iPhone 4などのユーザーが該当すると思われるが、ソフトバンクではこれらのユーザーを対象として「かいかえ割」を提供し、iPhone 5s/5cへの機種変更を支援している。かいかえ割は、パケット定額料を1年間1,050円割引の4,410円/月で利用できるというキャンペーンで、学生の場合、割引期間が2年間となる。さらに、ソフトバンクではiPhone 4s/4の残った本体代金を免除するという「残債無料キャンペーン」、iPhone 4s/4などを下取りする「スマホ下取り割」も実施しており、iPhone 4s/4ユーザーにとっては、iPhone 5s/5cに機種変更しやすくなっている。これらのキャンペーンにより、iPhone4s/4などからiPhone 5sへの買い替えが喚起されたことが、今回のソフトバンクの勝因となったと言える。

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本稿で紹介した通り、iPhone 5s/5c発売後の第1週、第2週のBCNランキングでは、ソフトバンク版に人気が集まった。発売直後は既存のiPhoneユーザーによる買い替えが多いと考えられ、既存ユーザーを対象としたソフトバンクのキャンペーンが買い替えを促し、ランキングにも影響したと見ることができる。

ちなみに、ソフトバンクではiPhone 5s/5cの発売に合わせて、「倍速ダブルLTE」を開始している。倍速ダブルLTEは、ソフトバンクとイー・モバイルの「ダブルLTE」が倍速化し、より安定した高速通信が楽しめるというもの。さらに、2014年4月にはプラチナバンドの900MHz帯によるLTEサービスの開始も予定している。