KDDI∞Labo第5期生
参加チームの皆さん

KDDIは9月25日、スタートアップ企業やエンジニアを対象としたインキュベーションプログラム「KDDI∞Labo(ムゲンラボ)」の第5期参加チームを発表した。

ムゲンラボでは、SNSを通じて友人にギフトを贈る「giffty(ギフティ)」など、これまでに19チームの卒業生を送り出している。各期4~5チームが参加し、学生枠を設けて将来性を見据えた支援も行っている。

KDDI 新規事業統括本部 新規ビジネス推進本部の江幡 智広戦略推進部長は、ムゲンラボについて「これまでのプログラムを通して見つかった課題がある一方、新しい発見もあった」と振り返る。

同プログラムは、サービス立ち上げ経験を持つKDDI社員をメンターとして各グループに一人ずつ付けている。様々な外部エンジニアや、参加チームが望む法人への面会を、KDDIが持つネットワークを生かして叶えることで「KDDIはかじり尽くすことで頑張って欲しい」(江幡氏)という。

参加5チームの概要

参加チームは、いずれも一般ユーザー向けのサービス提供者となった。

会社名 サービス名 サービスコンセプト
ザワット スマオク 女の子のためのブランド古着オークションアプリ
BearTail Dr.Wallet レシートを撮影して送るだけ。家計簿自動作成サービス
チームPEDALRest PEDALRest 遊休スペースと自転車通勤者のマッチングサービス
アオイゼミ 学校の教室をWebに再現するサービス
ズカンドットコム ズカンドットコム 世界の知識と写真情報をまとめる図鑑サービス

なお、Dr.WalletのBearTailは、学生枠での参加となる。

スマオクは"本当のオークションを目指す"

ザワットの「スマオク」は、女性向けのブランド古着オークションアプリで、クローゼットの中に眠っている古着をオークションで売ってもらおうというサービスだ。

ターゲットは売り手が20代後半~30代前半の女性で、買い手は1階層下の20代前半~20代後半女性としており、まさにクローゼットの中を売ってもらおうという意図が見て取れる。

すでにサービスを開始しており、着実に利用者層が増加しているフリマアプリ「フリル」や、大手のヤフオク!などが競合となるが、CEOの原田 大作氏は、「ヤフオク!などはオークションシステムが複雑になっており、簡単に、気軽に出品できるとは言いがたい。本当の意味でのオークションシステムをやろうとしているのがスマオク」だという。

決済はスマオクが代行することで、スムーズな取引を可能にしており「たった3分で簡単に売り出せる。もう一度オークションをシンプルなものにする」(原田氏)と語っていた。現在、特別先行ゲスト登録を行っており、招待制の限定オープンでサービスを行っている。

Dr.Walletは人力で家計簿データ化

BearTailのDr.Walletは、レシートを撮影して送るだけで、家計簿データにできるというサービス。学生枠として参加しているが、既に商用版を提供しており、完成度は高い。

家計簿データ化は、全て人力で行っているという。OCRによる文字認識機能の活用とは違い、人の手でデータ化が行われるため、非常に精度が高く同社によると99.99%のデータ化精度を誇るという。

グラフ化や分類などもアプリ内で閲覧でき「ドクターなのでカルテ風にしました(笑)」(黒崎代表取締役)としており、見やすいデータを標榜している。

「OCRはまだまだ不正確なのが実情。人力を強みにしているが、ムゲンラボの期間中に独自OCR機能を実装したい」(黒崎氏)と語っていた。

PEDALRestは自転車通勤者の悩みを解決

PEDALRestは、遊休スペースと自転車通勤者のマッチングサービスで、主に東京都内の自転車利用者をターゲットとしている。

環境問題対策や、ベンチャー企業などで自転車通勤を奨励している企業がある一方、駐輪スペースが少ないという東京都内特有の事情がある。そのため、「ガードレールなどに鍵をかけて置いても、放置自転車として自治体に回収されてしまう」(チームPEDALRest中島氏・幸氏)ことを解決するために提供するサービスだ。

遊休スペースは、駐車場サービス提供者などから借りることで場所を確保し、自転車通勤者とのマッチングを図る。現在は12月までオープンβサービスを提供している。

月極での契約を想定しているが、将来的に時間貸しも想定している。中島氏は「今の社会は自転車乗りにとって快適な社会ではない。このサービスを通して自転車通勤者の増加、そして波及効果で社会状況の改善が図ることが出来れば」と語っていた。

すでに1700の授業配信を行っているアオイゼミ

葵のアオイゼミは既に実績十分のオンライン動画学習サービスだ。レッスン動画は既に1700種類のライブラリがあり、動画はUstreamやニコニコ生放送でも同時配信されている。

代表取締役を務める石井 貴基氏は、リクルートからソニー生保と、学習サービスに携わった経験はない。しかし、「ファイナンシャルプランナーでの経験を通して、学習に興味を持った。家計の悩みは教育費で、ITの時代になっても解決していない」と語る。

これを解決するためにアオイゼミを立ち上げたといい、「コストだけではなく、利用者の中学生にも楽しめるようにサービスを作っている。Twitterなどとの連携により、オンラインでも双方向でのやり取りができるから、興味が続く」と語る。

ムゲンラボを通した取り組みでは、「ライブ配信以外でもコミュニケーションを取ることが出来るよう、サービス内SNSを立ち上げる。これにより、Webに学校の教室を立ち上げることを目標にしたい」と話していた。

ズカンドットコムはWikipedia超えを目指す

ズカンドットコムは、ターゲットが主要10言語のネット利用者約18億人と壮大な目標を掲げている。最終目標は、"Wikipedia超え"だという。

人間にとって、学習の基礎である「収集」と「分類」という行動を取り込むWeb図鑑サービスは、ユーザーが画像投稿することで、図鑑の幅が広がっていく。

現在は、魚図鑑のみ提供されており、ユーザーが新規の図鑑を作成する機能も提供されていないが、ムゲンラボの取り組みを行う間に実装を行うという。これにより、ムゲンラボ第5期終了時までに、100図鑑の掲載を目指すという。

参加チームの成功が、KDDIにとって最高の結果に

KDDI 新規事業統括本部 新規ビジネス推進本部 江幡 智広戦略推進部長

記者からの質疑応答で、「第5期の選出にあたって念頭に置いた基準は」と問われた江幡氏は、「ユーザーの課題解決をしっかり行えるかどうかを念頭に置いた。今回は、B2C、B2B2Cのサービス展開申し込みが多く、選出結果もその通りになったが、B2B向けをリジェクトしたわけではなく、純粋に可能性を考えた」と語った。

最後に江幡氏は「多くのチームからKDDIに対する期待を持ってもらっているということを感じている。我々はその期待にGIVEしますという考えでやっている。皆さんが成功したときに、少し良いことがあればいいなと言うことでKDDIはムゲンラボを行っている。何でもやって、目一杯頑張っていただきたい」と、第5期チームに対する期待を語った。