AOSテクノロジーズは、データ復元ソフトやHDD入れ替えなどPCのメインテナンスやバックアップ、パソコンの移行ソフトなど幅広くコンシューマーソフトを展開している。なかでも、データ移行を行う引越しソフト「ファイナルパソコン引越し」シリーズは、古いPCから新しいPCへの乗り換え時などデータ、設定、ソフトウェアなどIT資産を3ステップの手順で、簡単に移行。累計500万本の販売実績を誇る定評のあるソフトだ。既報のとおり、新バージョンもコンシューマー向けに発売される。そんなAOSテクノロジーズが、Windows XPのサポート終了で起こりうるトラブル、いわゆる"2014年問題"についてのセミナーを先ごろ開催した。その様子をレポートしよう。

2014年4月9日、Windows XPのサポートが終了

企業・法人でのXPパソコンは意外に多いのだ

Windows XPのサポート終了が生み出す「2014年問題」

Windows XPは、10年以上にわたって利用されてきたOSだ。2012年11月時点でのIDCの調査では、法人におけるXPパソコンの稼働台数は、約1,400万台になるという。2014年4月にOSのサポートが終了すると脆弱性を防ぐための更新パッチも提供されなくなる。頻繁にマイクロソフトから提供されるこれらのパッチが無くなることは、セキュリティ上大きな問題を引き起こす可能性がある。多くのマルウェアが、脆弱性を突く構造を持つこと、また、ここ数年ではオンラインバンキングなど金銭を直接狙うような危険なものも登場してきている。危険性は非常に高くなると言わざるを得ない。これら懸念が、いわゆる2014年問題とされている。

それでは、具体的に「2014年問題」に対して、我々はどのような対策をとればよいのだろうか?この問題に対してAOSテクノロジーズの佐々木隆仁社長は、明確に「できる対策はどれも一時的なものであり、有効な対策はない」という。純粋にOSのサポートが切れると考えた場合に思い付くものとして、

・セキュリティソフトを導入する
・ブラウザのセキュリティレベルを最高にする
・インターネットに接続しない

の三つを挙げる。セキュリティソフトの導入に関しては、本質的にはセキュリティソフトはウイルスに対するものであり、個々のOSのぜい弱性を狙った直接攻撃への対応には限界がある。攻撃側がシステムそのものへの攻撃が狙いである以上、ブラウザのセキュリティレベルを上げても限界がある。インターネットへ接続せずにローカルのみで利用する場合は、上記よりリスクは低減する。しかし、USBメモリを媒介としたウイルスが登場している中で、人為的なミスも考えた場合ローカルでの安全が保てるか疑問だ。"結局どの対策も、一時的なものであり完全な対策ではなく、根本的な対策としては買い換えるか、バージョンアップするしかない"と述べた。

AOSテクノロジーズ佐々木隆仁社長

日本での対策は動きが見られるものの未だに 鈍い

佐々木氏は「現在は啓蒙活動の成果もあってか独自に入手したデータでは、7月、8月に非常に大きな動きがあった。コンシュマーも含めると約2,000万台がWindows XPで動いていると予想される」と、この問題の対策が十分進んでいない現状を語った。同氏は、外国企業のOSバージョンアップやPCの買い替えによるデータ移行の現場に何度も立ち会った経験から、日米のリテラシーに大きな違いを感じているという。

日本の企業で世界的にも有名なメーカーのサポートにあたったとき、担当責任者とシステム管理者の意識の違いを調整するのに大変苦労するのだという。日本のメーカーの責任者は、"業務利益"に直結しないPCへの投資を躊躇する傾向にある。一方米国では、経営者が常に"業務効率"を上げることに力を入れるため、できるだけ最新のOSやPCの導入をすすめる傾向にあるため、このような問題自体が起こりにくいのだという。

2014年問題についての対策としては、社内のユーザーが自分で行う「社内の DIY (Do It Yourself)」と社外の専門業者が提供する移行サービス「キッティングサービス」と大きく分けて二通りの方法がある。「社内のDIY」の場合は、作業にかかる時間が問題になるが、これに関しては、DIYで引越作業をする場合は、同社の試算では、PC一台あたり3時間と見積もっている。内訳は、事前準備に1時間、データの転送に80分、転送後の処理に40分。キッティングサービスを利用する場合、移行の失敗は避けられるものの割高になってしまう。

OSやパソコンの入れ替え作業をおおまかに分けた二つ

社内DIYの場合の移行作業時間のおおまかな見積もり

移行ソフト「ファイナルパソコン引越し」を使った低コスト移行術

PCの買い換えやOSのバージョンアップの費用に加えて、さらにデータの移行費用までかかる。こういう状況で、経費削減に役立つひとつの選択肢として同社も展開する「移行ソフトウェア」の存在を挙げる。「ファイナルパソコン引越し」のenterprise版では、管理用のパソコンから一括で複数のパソコンに自動で移行できる効率性、PC歴1年の事務員でも簡単に利用できる簡易性、そして、低コストで済むというメリットをもっている。引越しツールでどのくらいの経費削減ができるのだろうか?

米国Laplink社の会長兼CEO トーマス・コール氏

セミナーには、米国Laplink社の会長兼CEO トーマス・コール氏がゲストとして来日し、このソフトウェアを使った移行についての説明を行った。Laplink社は、米国の移行ソフトにおいて大きなシェアを持つ。また同氏は、マイクロソフトでドイツ支社長を勤めた経験もある。トーマス氏によれば、これらの節約には当然条件があって、システム管理者がすべてのPCの状態を把握して、一括で管理している環境、個々のユーザーが自由にアプリケーションをインストールできないような環境においては、移行ソフトを利用する必要はない。しかし、その効果を最大に発揮するのは、「本社などにすべてのパソコンが集約されているのではなく、支社などの遠隔地に複数設置されており、パソコンの管理を個々のユーザーが行っている」環境だという。米国の環境では、最低2,000ドル、日本円で20万円ぐらいの節約が可能になるだろうと述べた。

「ファイナルパソコン引越し」での引越し作業

セミナーではAOSテクノロジーズのソフトカンパニー CTO 志田大輔氏が会場で実際にenterprise版を使ってデモを行ってくれた。作業は、簡単で管理者のパソコンに「ファイナルパソコン引越し」をインストールし、ソフトを起動、引越し先のパソコンの選択、移行するデータ、アプリケーションを選択するだけでいい。このあとは、データの転送が始まるので、夜退社する前に実行して、次の日の朝に出社すると作業が完了しており、以前の環境のまま、新しいOSで仕事ができるといったことも可能になる。

AOSテクノロジーズ ソフトカンパニー CTO 志田大輔氏

ファイナルパソコン引越し enterpriseのインターフェイス

移行対象の選択

移行するアプリケーションの指定

移行するアプリケーションを個別に選択できる

引越し方法の選択

引越し手順の選択。ユーザーは、「おまかせで引越しする」ボタンをクリックするだけだ

移行できるものの紹介

同社のWebサイトには、法人向けに「ファイナルパソコン引越し」を使ったXP乗り換えにおける特設サイトも設置しており、体験版や相談窓口も設けている前提条件は、ケースによるだろうが同社の移行ソフトが有効な場合もあるだおろう。