米Appleのスマートフォン「iPhone」の最新モデル「iPhone 5s」と「iPhone 5c」が20日から発売された。端末の特徴もさることながら、NTTドコモの取り扱いが開始され、携帯3社から同じ端末が登場するという初めての状況であり、3社とも特徴をうちだそうと自社ネットワークの優位点をアピールする舌戦も注目されている。今回、発売と同時に3社のiPhone 5sを入手し、東京都内のいくつかの場所でスピードテストを実施。各社のネットワークの実力を測ってみたので紹介しよう。

なお、スピードテストにはiOS向けアプリ「RBB TODAY SPEED TEST」アプリを利用。各地点で、3回計測したうちの平均を出している(小数点第2位以下は四捨五入)。念のため、Field Testモードで電波強度がなるべく近い場所を選び、同じ周波数帯域幅(今回は10MHz幅)でそろえて測定している。なお、スピードテストは、時間、場所、人の流れで頻繁に変わり、一歩動いただけで結果が変わる、ということもあり得る。これがすなわち各社の実力を示すわけではないので、参考程度に見て欲しい。

テストの様子。実際に3台同時に行ったのではなく、順番にテストを実施している。見た目はまったく同じだが、左からNTTドコモ、ソフトバンク、auのiPhone 5s

最初のテストの時のField Testモードの表示。なるべく電波強度を近づけ、帯域幅もそろえた

テスト結果

まず、最初にテストしたのは秋葉原。ヨドバシAkibaで多くのiPhone 5c/sが販売されたであろう場所の午後2時前にテストを行った。テストしたのはクラブセガ秋葉原新館。なお、いずれも結果の単位はMbps。

テスト日時 2013年9月20日 13時40分頃

NTTドコモ au ソフトバンク
下り 17.83 31.2 19.75
上り 2.78 13.46 4.66

本地点で上下とも最も速かったのはauで、特に下りは36Mbpsという速度になった。上りも10Mbpsを越え、とにかく速い。ほかの2社も十分なスピードで、なかなか快適な場所だった。電脳街でもある秋葉原だけに、各社とも対策を行っているのだろう。

続いて、流動人口が多く、各社とも苦心している池袋で計測。ただし、今回は時間帯がラッシュアワーではなかったため、屋外のテストとして池袋西口公園でテストを行った。駅にも近く、東京芸術劇場やバスターミナルも隣接しているため人通りは多い。

テスト日時 2013年9月20日 15時10分頃

NTTドコモ au ソフトバンク
下り 11.57 11.52 25.95
上り 3.36 8.33 14

ここで特に速かったのがソフトバンクで下り20Mbpsオーバーを記録。上りも10Mbpsを越え、安定してスピードが速かった。とはいえ、ドコモもauも下り10Mbpsを越えており、通常の利用であれば不満を感じるレベルではない。

次に移動したのは渋谷のQFRONTビル。渋谷のスクランブル交差点を見下ろすビルで、人の行き来が激しい場所にある。

テスト日時 2013年9月20日 16時頃

NTTドコモ au ソフトバンク
下り 4.81 25.74 9.66
上り 2.35 8.66 9.37

一人20Mbpsオーバーをたたき出したのがau。ソフトバンクも比較的健闘しているが、やや苦しかったのがドコモ、という結果になった。さらに六本木に移動し、東京ミッドタウン内でテストしてみた。大型商業施設だけに、平日とはいえ人も多く、各社の対策にも力が入っていそうな場所だ。

テスト日時 2013年9月20日 17時頃

NTTドコモ au ソフトバンク
下り 22.18 9.24 28.11
上り 10.2 0.27 12.94

ここで不思議なのがauの上り速度。総じて数百Kbps程度で、タイムアウトもするなど、ちょっと不審な結果となった。下り速度は十分なだけに、何かあったのかもしれない。逆にドコモやソフトバンクは20Mbpsを越え、特にソフトバンクは30Mbps近い速度をたたき出しており、安定していた。

最後の場所は赤坂Bizタワー。赤坂サカスに隣接するオフィスビルだが、ちょうど終業時刻付近だったため退勤しようとする人も多く、通信利用者が増えていそうな時間帯だった。

テスト日時 2013年9月20日 17時30分頃

NTTドコモ au ソフトバンク
下り 19.38 15.81 26.29
上り 3.24 8.66 15.37

各社とも健闘しており、安定してスピードが出ていた。特にドコモとソフトバンクの下り速度は僅差で、auを含めても、時間帯などによっては順位が変動しそうだ。ただ、上り速度が安定して速かったのがauとソフトバンクで、ソフトバンクは10Mbpsを越えてきた。

結果はソフトバンクが3勝、auが2勝

結果を見てみると、単純に比較するとソフトバンクが3勝、auが2勝、という結果だが、ドコモも状況によっては逆転する可能性のある場所もあり、ドコモが完敗という印象はない。auは1カ所不自然な結果になってしまったが、2勝とも他社を圧倒する、というスピードを発揮するなど、基本的には「安定して速い」という印象だった。

ソフトバンクは、これまで5MHz幅でしか提供していなかったLTEサービスについて、10MHz幅のサービスを開始したことで速度が改善していることが分かる。今回、10MHz幅の地点で統一したこともあり、それが発揮された形だろう。とはいえ、今回のテストは、あくまで「その時、その場所で、このテストを行った」際の結果でしかない。日が変われば結果も変わるだろうし、各社とも今後も改善を続けていくはずなので、同じ結果になるとは限らない。

それでも、各社がほぼ同じ端末を一斉に出してきたことで、ユーザー側にとってはそれぞれのネットワークの有利不利、得意不得意が見えやすくなった。人気シリーズのiPhoneだけに、「3社の同じ端末を持つ人が集まる」というシーンも多くなり、比較されることも増えるだろう。こうした状況に対して、各社がどのようなネットワーク競争をしかけていくか、今後も注目したい。

(原稿執筆:三谷真)