個人ユースでも需要が高まる多機能型NAS

お気に入りの音楽データから、デジタルビデオカメラで撮りためたビデオや写真などは、自宅のPCにデータを移動させて、ため込んでおくのが一般的だろう。だが、日々増加するデータ量を格納するためには、数TB(テラバイト)クラスのストレージデバイスが必要となる。また、データを閲覧するためにPCの電源を入れるのも面倒な話だ。

一方で、オンラインストレージサービスにデータを保存する"クラウド化"も進みつつあり、これが当たり前になる日は必ず来るだろう。しかし、未来永劫、そのサービスが続くとは限らない。各オンラインストレージサービスを手放しで信用するのはリスクを抱えることになるのだ。

そこで導入を検討してほしいのが、個人向けNASである。HDDなどのストレージを搭載したコンピュータ(の一種である)として常に稼働し、ネットワーク経由でファイルの保存や参照を行うファイルサーバーだ。本来はオフィスなどのビジネスシーンで使われるのが一般的だが、冒頭で述べたように個人が利用するデータサイズの肥大化に伴い、個人ユーザーの需要も増えている。数あるNASの中でも高品質で注目度が高まっているのが、ASUSTeK Computerグループの関連会社として2011年に設立した、ASUSTOR(アサスター)のNAS製品だ。

多機能型のNASは各社からリリースされてきたが、ASUSTORは新たな第三極として多機能NAS市場に参入し、個人から中規模企業を対象にした製品を手がけている。今回はパワーユーザーも満足できそうなNAS「AS-302T」の試用機会を得たので、その結果をご報告したい。

パワーユーザーでも満足できる個人向けNAS「AS-302T」

AS-302Tはその外観からも分かるように、2ベイを備えたNASだ。各ベイには、2.5/3.5インチのSATA HDD/SSDを取り付ける。今回はデスクトップPC向けHDDであるSeagate Barracuda Green 2TBを接続した。最近は3TBや4TBクラスのHDDも安価で入手できるようになったが、NASに搭載するHDDは事実上24時間フル動作を強いられるため、耐久性の高いHDDを選択することをおすすめしたい(図01)。

図01 2ベイを備える「AS-302T」。正面には電源ボタンや各種LED、USB 3.0ポート、赤外線レシーバーを備える

搭載OSはカスタマイズしたLinuxであるため、ファイルシステムはext4に固定されるが、本体装備のUSBポートに接続可能なストレージデバイスは、FAT32やNTFS、Mac OS XのHFS+もサポートしている。なお、選択できるボリューム形式は複数のストレージデバイスをひとまとめにしたJBOD、ストライピングやミラーリングでアクセス速度の向上や冗長性を高めるRAID 0/1/5/6/10、そして各ストレージデバイスを独立した状態で運用するシングルだ。

CPUはIntelのAtom(1.6GHz)デュアルコアプロセッサ、メモリは1GBのDDR3を搭載しているが、メモリ増設は不可能である。また、背面に備えるHDMI出力ポートとテレビやディスプレイを接続し、AS-302Tに格納したマルチメディアコンテンツを再生する機能を搭載している。このあたりは以前紹介したAS-604Tと同じだ。

その他のハードウェア構成は、ネットワークインタフェースとしてギガビットイーサネット(1000BASE-T)×1、外部ストレージ用としてUSB 3.0ポート×2、USB 2.0ポート×2などを備えているが、興味深いのが赤外線レシーバーの存在だ。別売りのリモコンを用意すれば、後述する「Boxee」などで再生するマルチメディアコンテンツを遠隔操作できる。また、3.5mmオーディオジャックをアンプに接続すれば、格納したマルチメディアコンテンツを直接再生可能になる。このあたりはパワーユーザーを対象にしたAS-604Tでは見受けられなかった仕様だが、個人の利用シーンを踏まえて設計されたのだろう(図02~03)。

図02 背面にはイーサネットやUSBなどのポートに加えて、電源ポートが並ぶ

図03 電源はACアダプタと電源コードが分離式のものを採用。なお、上位モデルである「AS-304T」は電源コードを直接接続するタイプだ

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