【レポート】

東京タワーはどうしてあの色なの? - デザイン・設計のヒミツを広報さんに聞いてみた

東京タワー

2013年12月で開業55周年。戦後の復興期から、スカイツリーが注目を集める現在まで、誰もが認める東京のランドマークである「東京タワー」。女性にもたとえられるそのカタチについて、日本電波塔株式会社 総合メディア部の澤田健さんにお話をうかがいました。

――(名刺を見て)東京タワーの正式名称は「日本電波塔」というのですね!まずは設計者について教えてください。

「塔博士」、「耐震構造の父」と呼ばれた、日本を代表する建築構造家の内藤多仲(たちゅう)博士が設計指導を行い、トラス構造の自立式鉄塔として建設されました。

博士は同時期に、東京タワーも含めた「タワー6兄弟」(名古屋テレビ塔、二代目通天閣、別府タワー、札幌テレビ塔、博多ポートタワー)の設計を手がけています。

――エッフェル塔と比較されることも多いと思いますが、モチーフや参考にされた建築物などは?

エッフェル塔の完成は1889年。その高さ(320メートル)をしのぐものにしようという構想はあったようです。

造形について博士は、「東京タワーの美しさについて、別に作為はしませんでした。ムダのない、安定したものを追求していった結果できたものです。いわば、数字のつくった美しさとでもいえましょう」(「東京タワーの50年」より、日本経済新聞出版社)と語っています。アンテナと展望台を設置するという、電波塔の機能を満たした上で、耐震や安全を重視したら必然的にムダのない美しさになったということなのでしょう。

――究極の「機能美」ということですね。建築家らしい言葉にグッときます。高さ333メートルというのは、他にも意味があるのですか?

昭和34年にテレビ放送が本格的に開始されるのを前に、昭和33(1958)年末には開業することが決定していましたが、関東一円(半径100キロ)に電波を送るためには、鉄塔の高さが333メートル必要だということがわかりました。開業年との「3」つながりは偶然です。

ちなみに、工期が一年半あまりしかなく、全国から優秀な鳶(とび)を大勢集めたと聞いています。

――"紅白"のカラーリングも特徴的ですが?

地上60メートル以上の高層物は、航空障害灯(赤または白)を設置するか、規定の塗装を施すことが「航空法」で義務づけられています。色も塗り方も決まっていて、大展望台より上の部分が7等分され(1986年までは11等分)、「黄赤(インターナショナルオレンジ)」と「白」で塗られています。見た目の変化で言えば、昔はもっとスッキリしていましたね。地デジの共用アンテナや、中継用のパラボラアンテナなどが取りつけられ、少し雰囲気が変わりました。

地デジアンテナ取り付け前。大展望台が赤く、それより上が11等分に色分けされている(左)、大展望台は白、7等分に変更された。上から3、4等分めのところにタイヤのような地デジアンテナが設置されている(右)

ちょうど今、足場が組まれていて部分的にブルーの囲いに覆われていますが、5年に一度の塗り替え作業を行なっているところです。大勢の職人が、刷毛を使って手で塗っていくので一年以上もかかります。美観を保つ以外に、鉄骨の保全の目的も重要です。サビ落としなどの下作業のあとに、下塗り、中塗り、上塗りという3工程が行われる膨大な作業ですが、これによって鉄は半永久的にもつわけです。

――最近では、特別なライトアップも話題になりますね。

ライトアップには、180個のライトで東京タワーを照らす、定番の「ランドマークライト」(冬はオレンジ、夏は白)と、7色に変化する「ダイヤモンドヴェール」、イベントやプロモーションで色を変えたりメッセージを表示させたりする「特別ライトアップ」の3種類があります。

30周年をむかえた際に、照明デザイナーの石井幹子さんに「ランドマークライト」のデザインをお願いしました。それまでも電球で鉄骨の輪郭を縁取る「イルミネーション」は行っていましたが、石井さんによる「ライトアップ」は東京タワー自体を照らして浮かび上がらせるもので、これによって東京の夜景が変わったと言われることもあります。ろうそくの火のような、ゆらめくようなやわらかさがありますよね。

――シャープな鉄の塔でありながら、しなやかで女性的な印象を受けるのも、ライトアップの効果もあるかもしれませんね。

石井さんは東京タワーを「貴婦人」と呼び、50周年記念でスタートした「ダイヤモンドヴェール」は、「50歳の女性にダイヤモンドを贈る」気持ちでデザインされたそうです。

特別ライトアップでは、オリンピックやサッカー日本代表の応援カラーに変化させたりしています。東京タワーの公共性や、エリア的に広告表示に制限があるので、宣伝色が強いものや、個人の依頼は受けることができません。

ちなみに、大展望台に映し出される年号やマークなどは、窓の内側に光のパネルをはめ込むというアナログな手法で表示させています。基本的には24時に消灯なのですが、現在は工事の関係で22時に消灯し、22時半以降は、工事用に再点灯しています。営業終了後の工事は多岐に渡り、多くの人たちの手で支えられていることを改めて感じます。

左から、定番「ランドマークライト」の温かみのある冬バージョン、涼しげな夏バージョン、「ダイヤモンドヴェール」

――東京タワーの広報さんから見て、「東京スカイツリー」のデザインをどう思いますか?

電波塔という役割は同じなのに、まったく違うのが面白いですね。東京タワーがそうであったように、建設当時の最新技術の結晶として、あのようなカタチになったのではないかと思います。

いろいろと比較されることも多いのですが、あらためて東京タワーが注目されることになりましたし、下町に最先端のスカイツリーがあり、山の手に歴史を感じる東京タワーがあるという対比が、東京全体を観光スポットとして考えた時、とてもバランスの良い関係にあると思っています。

――今年「登録有形文化財」に登録され、2013年12月23日には開業55周年を迎えますが、これからもたくさんの人に愛される、東京のシンボルであってほしいと思います。最後に、東京タワーを毎日見ている広報さんが一番好きな"表情"を教えてください。

足下から見上げる東京タワー

景観の一部として遠くから見る方が多いと思いますが、ぜひ足元から見てください。4本足の間の曲線が好きなのですが、鉄骨の意外な細さや接合部分のディテール、地に足をつけてしっかりと立っている姿など、造形的にも美しいと思います。また、これをすべて半世紀以上前に「手計算で作った」のだと思いながら眺めると、また見え方が変わりますよ。

――ありがとうございました。

機能美を追求したその造形は一見、無機質でありながら、見る人がさまざまな思いを乗せる余白を持つ。シンプルなカタチこそ、見る人の気持ち次第でその表情を変えるのでしょうね。



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