Appleが米国時間9月10日にリリースした新型スマートフォンiPhone 5cとiPhone 5s。概ね事前のリーク情報や噂を大きく脱する発表ではなかったものの、ライフスタイル面、アーキテクチャ面、体験面での着実な進化を遂げている。その中でも大きく進化したポイントは、カメラとセキュリティだ。

iPhoneを代表する体験となったカメラ機能の進化

iPhoneは写真の世界を一変させてしまった。写真共有サイトFlickrに投稿される写真のトップはiPhone 4以降、iPhoneがトップを守り続けている他、iPhoneがビデオ撮影をサポートすると、YouTubeへの写真投稿もiPhone経由が飛躍的に拡大した。 携帯電話とカメラとの関係を真っ先に見出し、文化に昇華させたのは日本であるが、Appleは写真の楽しみ方のトレンドを見据えながら、ハードウエア、ソフトウエア、そしてクラウド面で、写真の体験を新たにしようとしている。

iPhone 5cはiPhone 5を踏襲するF2.4レンズと800万画素センサーを搭載しており、ハードウエア的な進化はない。iPhone 5sではレンズの明るさをF2.2に引き上げ、センサーも同じ800万画素ながらセンサーサイズを拡大させた新しいカメラを搭載した。

レンズの明るさはF2.2に引き上げ

センサーサイズの拡大は一般的に、画質の向上や同じレンズの焦点距離の場合の広角化、暗所撮影の低ノイズ化、半径の小さなボケ味が得られる。またフラッシュは2色を搭載し、環境や被写体に合わせて自動的に最適化してくれるようになった。iPhone 5sはA7チップへの進化に伴い、秒間10コマの連写撮影、秒間120コマのスローモーション動画撮影、そして複数枚の静止画からもっともシャープな部分を合成する機能を実現している。

複数枚の静止画からシャープな写真を選択

被写体に見合った光を当てられる

秒間120コマのスローモーション動画撮影に対応

こうしたカメラ機能のハードウェア的な向上を、iOS 7とiCloudのソフトウエアとクラウドがサポートする。

iOS 7ではカメラのインターフェイスが刷新され、これまでも搭載されてきたパノラマ撮影に加えて、Instagramで人気を博しているフォトフィルターや正方形の写真の撮影に対応した。また写真アプリのデザインも一新され、よりたくさんの写真を一覧したり、写真を時間や場所によって分類する新しい表示方法を採用した。

またiCloudの機能の1つ、フォトストリームは写真を自動的にクラウドにバックアップし、デバイス間の共有をしたり、友人との間で共有できるようにしていたが、新しいフォトストリームはFacebookのタイムラインの表な表示方法を採用した。またこれまで共有主のみがアップロードできた共有フォトストリームに、参加メンバー全員での写真投稿が可能になった。SNSにアップロードしたくない家族の写真やパーティーの写真の共有がより手軽になった。

さらにAirDropによって、その場にいる人同士での1枚単位の写真の受け渡しも瞬時に行えるようになっている。単にハード上の進化だけでなく「写真体験」全体の向上に取り組んでいる様子がうかがえる。iPhone 5cをiPhone 5と同等のカメラ性能に据え置いたことからも、廉価版であってもiPhoneが写真を最も楽しむことができるスマートフォンとしてアピールしようとしていることがわかる。