相撲部だけでも珍しいのに、ビーチ相撲とは?

あの電通に、相撲部があるらしい…そんなうわさを聞いて尋ねてみたところ、「今度、僕たちが起ち上げたNPO法人が主催するビーチ相撲があるから来ませんか?」と誘ってもらった。NPO法人? ビーチ相撲? 一体どういうことなのか、現地に行ってみた。

たどり着いたのは、千葉県富津市にある「KANAYA BASE」。ビーチバレーはメジャーだが、ビーチ相撲は聞いたことがない。が、確かに浜には土俵ができている。早速、相撲部の加形さんと山田さんに話を伺う。

電通グループの社員組織ではじめた相撲部

加形さん「もともと、僕が高校から相撲をやっていたんです。2003年に電通に入って、先輩にその話をしたら、是非相撲部を作りなさいと言われて…。実はその先輩というのが、とある 大学の相撲部監督の娘さんだったんですよ」

行事も行っていた加形拓也さん

こちらは山田健さん。2人は同期

さすが、個性あふれる人たちが集まっている! 電通には「電通会」という、社員の会費と電通グループ会員社の補助金によって成り立っている組織があり、相撲部はそこに属しているとのこと。

加形さん「まわしを問屋で仕入れて、部員にパワーポイントで締め方を説明するところから始めました」

活動はどんどん評判を呼び、社内でも有名な活動になった。 そんな彼らが海へ向かったのは一体どうして?

山田さん「打ち上げなどでいつも、海へ行っていたんです。毎年夏に"海の運動会"を企画していたこともあって、ここでいろいろな方と相撲をとったら面白いんじゃないかと…電通会の活動とは別に、電通会相撲部のメンバーと普段一緒に相撲をとっていた社外の仲間と一緒にNPO法人を立ち上げました」

加形さん「いやー大変でしたよ。つてをたどって名古屋大学相撲部の細谷教授に理事長への就任をお願いしたり、仕事で知り合った、クライアントの方にも話を聞いたりしましたね。その甲斐あって、ビーチ相撲大会も毎年盛り上がっています。由比ヶ浜や三宅島、紋別、猿島など、様々な地域と交流しながら続けられていますね」

2人とも、爽やかな笑顔ですごい行動力…。

ロケーションはばっちり! 8月3日に行われた金谷場所

波打ち際での名刺交換…社会人の鑑だ

仕事で培った力が相撲部に!

当日は外国人力士が大活躍。日本人がんばれ!

部活動の輪を飛び出して、イベントを企画した相撲部のみなさん。そこまでさせる、相撲の魅力とはいったいどのようなところにあるのだろう。

山田さん「相撲をやると、初対面でも仲良くなれるんですよ。勝つとすごくうれしいし、負けるとめちゃくちゃ悔しい。だからその後のバーベキューでも、"あのとき、ああしておけば…"と話題になりますし、対戦相手と仲良くなることも多いですね」

加形さん「大体、ビーチ相撲に興味を持ってきてくれる人って、いい意味で”もの好き”な人が多い(笑) だからこそ、一生付き合える仲間ができると思っています」

それにしても、NPO法人を起ち上げるなんて聞いたことがない。しかも、立っているのぼりやポスターもおしゃれで、”相撲”に感じているイメージがいい意味で裏切られる。

山田さん「僕が会社でクリエーティブの仕事をしているので、デザインなどを担当しています。仕事と同じように、本気で取り組んでいますよ」

法人化してイベントを実行すること、それを広めることに、みなさんが今までの仕事で培った力が注がれている。そこへ一般の参加者や地元の方が押し寄せる大会が、盛り上がらないわけがない。

この日の参加者は個人・団体含めて約50人。動員は約150人だったという

珍しいからこそ、相撲の"口コミ力"が生かされる

実際にこのビーチ相撲の活動をしていてよかったと思うのはどんな時なのだろうか。

加形さん「テニスとかサッカーとかって競技人口が多いじゃないですか。でも相撲って国技とはいえ、やっている人はなかなかいないですよね。だから逆に、口コミ力があるんです。"相撲をやっている"と言うと、すぐ覚えてもらえるんですよ」

山田さん「社内でも"相撲をやっているらしい"とうわさになり、相撲部屋にプレゼンする機会をもらったりして(笑) 他にも、大手メーカーの車体デザインを手がけた方が関わってくれたり、外資コンサルの方がクラウドファンディングで資金を集めてくれたり、協力をいただけることが多くて」

加形さん「"ビーチ相撲"というマイナーな競技だからこそ、面白いと思ってもらえる力があるんだと感じています」

"はっけよい"でお互いにとびかかる!

砂が飛び散る迫力

団体戦では女性同士の戦いも。いやらしさ目的ではないのでビキニは禁止!

負けてしまってもなんだかさわやか

伝統ある競技に別の光の当て方を

かなりの盛り上がりを見せていた相撲部&ビーチ相撲。「今後はこんなことをやってみたい」ということはあるのだろうか。

山田さん「ビーチで相撲を取るって、伝統ある競技に別の光の当て方をすることだと思うんです。こういったやり方もあるんだと、他の競技などのベンチマークになれればいいですね」

加形さん「ビーチで相撲をとることで、浜をきれいに清掃、地域の方とのかかわりを活性化し、国技である相撲をもっと普及していきたい。ビーチという足場なので、体型関係なく誰が勝つかわからない面白さがありますよ」

山田さん「あとはぜひ、若い人に参加してもらえれば! 僕たちも、30過ぎているので…最近は筋肉痛がつらいです(笑)」

会社をもとにした組織の部活動を飛び出し、新しい競技の場を見つけ出したみなさん。"相撲部"のイメージからは想像できない、意外な取り組みだったが、そこには仕事のエッセンスが生かされていた。

大会終了後に振る舞われるちゃんこは、相撲部屋に行って習ったものだとか。ビーチに似合うだしのきいた塩味

地域の名産品を食べられるのも魅力。こちらは金谷名物、黄金鯵

ちなみに、NPO法人日本ビーチ相撲協会の次の活動は8月25日(日)。伊豆諸島の三宅島で、地元青年団と合同でのビーチ相撲大会を企画しているとのこと。また、電通会相撲部では、ビーチではない普通の相撲でも対外試合の相手を常時募集しているそうで、対戦してみたいというチームは日本ビーチ相撲協会のウェブサイトへ。