イラスト制作会社MUGENUPからディレクターの所澤友大氏、アートディレクターの金枝菜美子氏、イラストレーターの芳賀あゆみ氏を講師に迎え、「モバイル端末・ゲームで映えるイラストにブラッシュアップする技術」を学ぶワコム主催のセミナー「Wacom Creative Seminar vol.14 ~for Illustration~」が開催された。

同セミナーは前・後編に分かれており、前編ではキャラクターを魅力的に見せる構図や彩色を学んだ。このセミナーでは「60点のイラストを120点にする」というサブタイトルが掲げられたのだが、ここで指す100点とは、所澤氏によれば「セミナー前半の内容」だという。ここからお届けする後半では、キャラクターをより活かすための"プラス20点"を学んでいく。

背景の役割

作品の完成度を高める背景の描き方について、金枝氏はそのポイントを「キャラクターを引き立てるものとなっていることが大前提」と述べた。作例では魔法少女という設定に合わせた幻想的な夜空に、白い衣装が引き立つ深いブルーを基調とした。空を飛んでいることも世界観の演出に効果的だ。

背景を加えた作例の修正前(左)と修正後(右)

修正前の作品は、背景の描画そのものが悪いわけではないが、キャラクターが空を飛んでいることを説明する要素が少なく、浮遊感があまり感じられない。一方、修正後の作品では、画面下方に街を配置し、キャラクターが空のどの高さにいるのかが表現され、人間が住む街を舞台にしたファンタジーという世界観も伝わる。また、きちんと描き込まれた手前の家に対し、奥の家は描き込みを抑えて遠近感が強調されている。リアルさを求めながらも描き過ぎない、キャラクターを活かすバランスが必要だ。

雲の流れ(矢印)が、キャラクターの構図の際に意図した、顔からロッドへという視線誘導を補助する効果もある

背景のクオリティは絵の印象に与える影響が大きいため、キャラクターを活かす背景を描くスキルは必須だ。MUGENUPでは分業制を用い、キャラクターと背景を別のイラストレーターが担当する場合もあるが、金枝氏は「キャラクターを描いた人に背景も描いてもらうのは、イメージを統一するためにも大切」だと語る。パースや彩色などのスキルだけでなく、キャラクターと背景の関係を考えて描く視点も身に付けたい。