高速性は知られているが、コスト的な事情から対応するディスク製品の数が少なく、Macに標準装備されて以来もっぱらディスプレイ接続用インターフェイスとして利用されてきた「Thunderbolt」。ここに紹介する「DeLOCK 61971」は、Thunderboltは高い、という従来の常識を変えるインパクトを持つベア型のThunderbolt-SATAアダプタだ。その実力のほどを検証してみよう。

ようやく登場したベア型Thunderbolt-SATAアダプタ

Thunderboltは、IntelとAppleの共同開発によるシリアルバス規格。転送速度は最大10Gbps、現行のUSB 3.0(5Gpbs)の2倍という高速性が特徴だ。しかも上り/下り線とも10Gbpsの全二重通信であり、読み書きを同時に行ってもレスポンス低下が生じにくく、ユーザにストレスを感じさせない。IEEE 1394(FireWire)のようなデイジーチェイン接続にも対応、ホスト側1ポートあたり最大6台の周辺機器を数珠つなぎに接続できることもメリットだ。

そのThunderboltポートを備えたMacが登場したのは、2011年2月のこと。しかし同規格に準拠した周辺機器はほとんど存在せず、Mini Displayportとコネクタに互換性があることから、ディスプレイを接続する位しか使い途がなかった。2011年6月に「Thunderboltファームウェア・アップデート」が公開、高価ながらハードディスクケースなど対応製品が現れはじめ、価格も下がり始めたここ1年ほどでようやく"現実的な接続規格"となってきた感がある。

今回紹介する「DeLOCK 61971」は、ドイツDeLOCK社が販売するThunderbolt接続のSATA専用アダプタ。国内販売は株式会社ITランナーが行っている。ディスクをむき出しのまま接続するタイプの製品であり、わかりやすくいえばセンチュリー「裸族シリーズ」のThunderbolt版だ。ドライバを使わず複数のHDD/SSDを入れ替え差し替えできるため、従来のThunderbolt対応製品に食指が動かなかったパワーユーザにとっても魅力的な製品と映ることだろう。

ベア型のThunderbolt-SATAアダプタ「DeLOCK 61971」

ベア型なのでネジ止めなどの手間は不要、SATA対応SSDの差し替えは一瞬で完了する

電源はDC 12V、付属のACアダプタから供給する。屋外で使用する場合はコンセントの確保が必要だ

姉妹機の「DeLOCK 42490」。アルミ製外付ケースで、2.5インチHDD/SSDを内蔵できる

外付けSSDの接続方法としてベストチョイス

DeLOCK 61971の本体サイズは60×80×21mm/約70gと、軽量コンパクト。ただし電源がDC 12VのためACアダプタは必須、屋外でノートPCと組み合わせて使う場合にはコンセントを確保しなければならない。Thunderboltケーブルが同梱されないことも、購入時の確認事項といえる。

テストには、ディスクとして9.5mm厚2.5インチHDDと同じ形状を持つSSD(BUFFALO SHD-NSUH、SATA2/128GB)を使い、ThunderboltとUSB 2.0それぞれで接続したときのアクセス速度を測定した。テスト機にはMac mini(Mid 2011)をチョイスしたが、これはFireWire 800という選択肢があるものの将来性の観点からUSBとThunderboltの二者択一が現実的、という考えがあってのことだ。

最初のテストは、ディスクの初期化とMountain Lionのインストール、および起動時間を測定するというもの(表1)。ThunderboltとUSB 2.0の差は、連続するデータが読み書きされる初期化とOSの起動、および約4.35GBの連続データがSSDへコピーされるインストールの前半(再起動前)で顕著に表れた。サイズの小さいファイルが大量に書き込まれるインストールの後半(再起動後)は大きな差とならなかったが、これはディスクイメージの内容物を展開しつつファイルコピーする処理がボトルネックになったものと推測される。

その裏付けとなるのが、ベンチマークソフト「Xbench 1.3」を利用したディスクテストだ。ThunderboltとUSB 2.0それぞれで実行したところ、全項目にわたりThunderboltが2~5倍高速という結果になった(表2)。アプリケーションの起動がUSB 2.0接続時は2バウンドだったSafariが1バウンドで済むなど、体感速度の差も明らかだ。

このように、USB 2.0と比較して圧倒的なディスクアクセス速度を実現するThunderbolt、そのインターフェイスを1万円台半ばで提供するDeLOCK 61971のコストパフォーマンスは抜群だ。もちろん起動ディスクとして利用できるので、秋に公開予定のMavericksは当面外付けディスクで対応したい、というユーザにはうってつけと言える。本機はThunderboltポートが1基しかないため、Mini Displayportでディスプレイを接続しているユーザはHDMIなど他の接続経路を検討しなければならないが、SSDの高速性を損なわない外付けディスクとしては魅力的な選択肢となるはずだ。

DeLOCK 61971にSSD(BUFFALO SHD-NSUH、SATA2/128GB)を接続、Mountain Lionのインストールにかかる時間を測定した

起動ディスクとして利用できるので、スタートアップマネージャにも表示される

電源オン直後に「T」キーを押し続ければターゲットディスクモードで起動する

表1:Mountain Lionのインストール
Thunderbolt USB 2.0※
初期化 3.4秒 12.2秒
インストール(再起動前) 1分20秒 2分01秒
インストール(再起動後) 13分04秒 15分23秒
OSの起動 12.2秒 26.1秒
※:BUFFALO SHD-NSUHに内蔵のUSBポートを使用
表2:Xbench 1.3 Disk Test
Thunderbolt USB 2.0※
Disk Test 283.33 61.42
Sequential 185.39 41.09
Uncached Write(4K blocks) 330.77 51.49
Uncached Write(256K Blocks) 257.72 45.81
Uncached Read(4K blocks) 83.63 24.43
Uncached Read(256K Blocks) 368.41 66.02
Random 600.65 121.52
Uncached Write(4K blocks) 391.91 70.06
Uncached Write(256K Blocks) 475.82 484
Uncached Read(4K blocks) 1633.04 902.39
Uncached Read(256K Blocks) 717.43 177.6