ドラッグ&ドロップ操作もマウス操作における特徴の一つだが、タッチ操作では長押しでドラッグし、そのままタッチ操作でドロップする仕組みを採用。HTML5では、ドラッグ&ドロップ専用の新しいイベントや新しいメソッド・属性が追加されているが、Internet Explorer 11では同機能を使って前述の仕様を実現している。

記事ではタッチ操作によるドラッグ&ドロップの例として、Test Driveの「Magnetic Poetry」を紹介していた。実際に試してみたが、長押しによる選択の遅延が少々気になるため、現時点では快適とは言い難い。同機能に関しては今後のチューニングが必要になるだろう(図09)。

図09 HTML5ベースのドラッグ&ドロップをタッチ操作で体験する最適なサイトとして、Test Driveの「Magnetic Poetry」を紹介していた

Patten氏はタッチ操作における拡大縮小に関しての改良も明らかにしている。Internet Explorer 10では、Webブラウザーで高負荷を与えるスクリプト実行中でも、ズームアニメーションをスムーズに実行することが可能だった。そしてInternet Explorer 11では、タッチ操作に加えてマウスやキーボードといったデバイスを利用した際も、ハードウェアアクセラレーションによる動作を実現していると言う(図10)。

図10 ストレッチ操作による拡大時のスムーズアニメーションは、キーボードやマウスといったデバイス利用時も有効になる

このようにInternet Explorer 11は目で見ることが可能な範囲以外でも、多くの改良を加え、タッチ操作環境でのUX(User Experience:ユーザーエクスペリエンス)を高めている。当初はサードパーティ製Webブラウザーの後塵(こうじん)を拝していたInternet Explorerシリーズだが、2009年3月に公開したInternet Explorer 8以降はHTMLやCSSといったWeb標準準拠の流れを踏襲し、レンダリングおよびJavaScriptエンジンの強化に努めてきた。

Patten氏の説明やInternet Explorer 11プレビューに触れてみると、タブレット利用時のWebブラウジング環境が快適になっていることに異論はない。だが、多くのユーザーがデスクトップ環境でサードパーティ製Webブラウザーを利用し、さまざまな拡張機能を併用して自身のWebブラウジング環境を確立している。

残念ながらInternet Explorerシリーズのアドオン(拡張機能)開発におけるコミュニティは広まらず、カスタマイズ性はさほど高くないのが現状だ。それでもNet Applicationsによる2013年7月時点では、約57パーセントのシェアを保持している。現在のMicrosoftが選択している方向性を踏まえると、今後デスクトップアプリ版は保持するものの、Windowsストアアプリ版と呼ばれるInternet Explorerシリーズに注力すると愚考するのは考えすぎだろうか。

阿久津良和(Cactus