いじめが問題なのは子どもだけではない。大人になっても、さまざまな形でいじめ(らしきもの)はある。職場でのいじめについて調べた米国の調査からは、ややショッキングなことが分かった――いじめる人ほど上からの"評価が高い"というのだ。Wall Street Journalの記事「職場のいじめっ子はどうやって昇進しているか(原題 : How Workplace Bullies Get Ahead)」で調査を紹介している。

人が何人か集まり、同じような目的を持つ場所で作業すると、人間関係ができ始める。強い人、弱い人、できる人、遅い人、口が上手な人、話下手な人……さまざまな人がいるだろう。次第に、特定の人やグループが、特定の個人を正当な理由もないのに意図的に攻撃し、時に暴力をふるうようになる――いじめだ。

いじめには大人も子どもも、国や文化も、あまり関係ないのだろうか。日本で新聞やTVを騒がせるいじめは学校のいじめだが、職場でのいじめを調べたニューヨーク州立大学バッファロー校のDarren C. Treadway教授が率いるチームによると、米国でも多いようだ。なんと、米国で会社や政府機関で働く勤務者の約50%が、職場でのいじめを目撃しているという。そして、ターゲットになったという人は3分の1もいたという。

調査では、米国のヘルスケア企業に勤務する54人の人間関係と上司からの評価の関連性について調べた。

その結果、いじめの加害者は、上司や主任といった上の立場にある人からポジティブな評価を得ていることが分かったという。なぜだろうか? いじめる人の多くが上司の前では愛想がよく、見えないところで他人を操作して自分に都合のよい状態を作ることができている、というのだ。時には、同僚について悪口を言うような場面もあるという。「ソーシャルな能力が高いため、戦略的に同僚の悪口を言いながらも上司からは気に入られるようにできる」「政治的スキルがある人は、悪いことを実に上手にできる」とTreadway教授は分析している。

別の調査では、いじめが横行する職場ではターゲットとなった人はもちろん、周囲の人もその職場を辞めたいという気持ちが強くなることが報告されている。

このように職場のいじめはチームに悪い影響を与える。会社はスタッフ間の人間関係に目を配り、従業員に対しいじめを回避できるスキルを身につけるよう支援すべきだ、と助言している。