【レポート】

未来館で「メディアラボ」の第12期展示「現実拡張工房」がスタート

 

日本科学未来館で7月2日に、2014年1月13日(月)まで公開される、3Fの常設展示「メディアラボ」の第12期展示「「現実拡張工房」The Studio - Extend Your Real World-」の内覧会が実施された。それに参加してきたので、第12期展示の魅力をお伝えする(画像1)。

画像1。メディアラボは3Fの展示エリアの入り口右手にある

今回展示されるのは、実世界指向情報環境、複合現実感、メディア+コンテンツ、実写に基づく映像合成、アート&エンターテイメントなどの研究に取り組んでいる、東京大学工学部 電子情報工学科の苗村健 教授(画像2)の作品たちだ。苗村教授は、科学技術振興機構(JST) CREST(Core Research for Evolutionary Science and Technology:戦略的創造研究推進事業)「共生社会に向けた人間調和型情報技術の構築」領域の中の、コンピュータなどの情報機器とコンテンツと人間のコミュニケーションの融合の可能性を研究する「局所性・指向性制御に基づく多人数調和型情報提示技術の構築と実践」の研究代表者を務めており、今回の作品はその研究成果である。

モニターの中のAR(拡張現実)というよりも、「現実世界を拡張する」という、言葉上は似ているが、実際には大きく異なることを苗村教授らは研究しており、それを明確に伝えることを念頭に置いたという。

画像2。東京大学工学部 電子情報工学科の苗村健教授

と書くとなんだか難しそうだが、実はまったくの逆だ。近年、こうした展示に関わっている研究者たちは、ほかの研究者の展示物で子どもたちが大喜びしているのを見ると「傷ついている(笑)」ということで、かなり子どもを意識した作りをするようになっているという。今回の展示も、夏休みおよび冬休みを含むこともあり、苗村教授は子どもたちが楽しめること、さらには夏休みの自由研究の課題にもなってもらえることも第一に考えて、6つのコンテンツで構成したというわけだ。つまり、技術的には最先端のものを使いながらも子どもたちが見て体感して楽しめる形となっており、まさに「夏休みに持ってこい」の小学生以下向けキラーコンテンツたり得る内容なのである(もちろん大人でも楽しめる)。

具体的にコンテンツを紹介すると、最初は、おそらく子どもたちが1度始めたらどかなくなってケンカが起きるのではないかと、筆者としては心配してしまう「Photochromic Carpet(フォトクロミック カーペット)」だ(画像3・4)。

メディアラボの入って左側のスペース中央に位置するコンテンツで、用意されているサンダルを履いてそのエリアを歩き回ると、色のついた動物の足形やハート(画像5)などが床面に残るというものである。歩けば歩くほど床面が賑やかになるから、特に小さな子どもたちは楽しめること間違いなしというわけだ。なお、内覧会の時点では濃いピンクというか紫という案配の色合いだったが、色は定期的に変更していくそうである。

画像3。Photochromic Carpetはメディアラボのほぼ中央に位置。夏休みは子どもたちが歩き回ることだろう

画像4。自分の歩いた跡が残るのは子どもにとって面白いはずで、それが動物の足の形だったりするとなおさら

画像5。これだけクッキリと形が残る。しかしすぐに自動的に薄くなるので、塗りつぶすのは至難の業

その仕組みは、紫外線に反応する特殊インクが床面に備えられていて、サンダルの厚い靴底の中には紫外線を出すLEDが足形やハート形などで切り抜かれた台紙と一緒に仕込まれていているので(画像6・7)、その形に床面が反応して、形が残るのである。時間が経つと消えていくので、足形だらけでいっぱいになってしまう心配もなく、子どもたちが大挙して押しかけても大丈夫である(床面を染めまくろうとする子どもは絶対にいるだろう)。

画像6。これを履いて歩き回るだけ。足のサイズ28cmでもなんとか押し込めるし、体重85kg強でも壊れたりする心配なし

画像7。サンダルの裏。紫外線LEDがハート形や動物の足の形に照射され、床面に残る仕組み

そして、これまた子どもたちが1度始めたら長時間居座りそうなのが、「EchoSheet(エコーシート)」だ(画像8・動画1)。これはメディアラボの出入り口にあり、お絵かき用の紙がセットされたイーゼルが3つほど並んでいるので、同時に複数組みで遊べる。内容としては、ペンを持って文字や絵、記号など何でもいいから書くと、小気味いい感触を味わえるものである。

画像8。EchoSheet。好きなように書くだけだけど意外と楽しい。
動画1。実際に適当に書いてみた様子。さりげなくペンネームを入れて自己アピールもしてみた

実は、紙に筆記具がこすれる際に立てる音(下のキャンバスに当たる音も含む)を集音して、そのままリアルタイムで増幅してイーゼル下方にあるスピーカーから大きくして出すというものだ(動画)。たかが音が増幅された程度と思うかも知れないが、書いている音が大きく聞こえると予想外に気持ちよく、ペン、色鉛筆、クレヨンなどなど、筆記具を取っ替え引っ替えして(紙も何種類かある)いろいろと書き(描き)味を試してみたくなってしまうのである。

何でも、漢字の書き取り練習にこのシステムを用いて実験してみたところ、決められた以上に書いてしまうことが多いようで、イタズラ書き/描きをしたい小さい子たちにとってみたら、その場に釘付けにするような危険な(?)コンテンツである。もう、連れてきた親御さんたちがが「ほら、ほかも見に行こうよ」と一生懸命手を引っ張るのが目に見えるようだし、どれだけこの夏に紙が消費されるのかを考えると、未来館の財政を圧迫しないか心配になってくる(笑)。

そして、すぐさまアーケードの大型筐体ゲーム機とか、パチンコ台などに使えそうな気がして、筆者的に一番感心した(というか、そういうエンタメ機器系の企業に売り込みに行こうかと思った)のが「でるキャラ」だろう(動画2)。裸眼で立体映像を見られる技術の1種なのだが(目の位置はある程度決まっており、180cmクラスの筆者ではちょっとかがまないとならない)、立体感がとても自然な感じなのが特徴だ。

動画
動画2。「でるキャラ」。ビデオなどで撮ると立体感が出にくいが、結構感じてもらえるのではないだろうか

複数のブロックが置いてあり、それを横に並べたり縦に重ねたりすると、その並び方や高さなどに合わせて、ヒヨコのキャラクターがその上に飛び乗ってくるというもの。普通、こうした立体映像は、カメラで撮った場合は立体には見えないものだが、影の付け方がポイントになっているのと、実物であるブロックが使われていてそこにフォーカスが合いやすいためであり、カメラで撮影しても少し立体的に感じられるほどだ(画像9)。これもブロックを手にとっていろいろとできるので、子どもたちが遊びまくりそうである。ちなみに、Xbox 360の周辺機器「Kinect」はAR系で大活躍だが、この装置でも利用されている(画像10)。

画像9。ブロックが実物で、きれいに影が落ちているのもあり、カメラで撮っても少し立体感がある

画像10。Kinect。装置の上方に備えられている

4つ目は、Photochromic Carpet以上に、床がハデハデでちょっと目がチカチカしそうというか、トリップしそう(?)なのが、「Graphic Shadow(グラフィック シャドウ)」だ(画像11・動画3)。白く照らされた床の上を歩くと、2つのプロジェクターからの光により、色とりどりの影が現れるという、光の混色を利用したコンテンツだ。これでレーザー光線などが行き交い、大音量のダンサブルな曲が流されれば、クラブになってしまいそうである。

画像11。Graphic Shadow。これで賑やかでダンサブルな音楽が流れていたら、クラブに早変わり
動画3。Graphic Shadowのハデな感じを動画で

それから5つ目が、今回の展示では数少ないメカ系の「MorPhys(モーフィス)」だ(画像12)。こちらはモーターで伸縮する巻き尺が柱を作り、自在に変化してコンピュータの中で空間設計をするように空間を作り出すというもので、「動く建築」という新しい形を提案するものである。

しかし残念なことに、こちらはとても繊細な作りで、開発されてから時間が経っていて半年ほど別の場所で展示されていたのもあり、少々サビが出ている部分もあるようで、内覧会の時点では不調できちんと動作できず、今のところは実機展示のみとなっている(その動きは近くのモニターで見ることが可能)。しかし、近い未来館の休刊日を利用して徹底的に修理して必ず動くようにするということなので、それを期待したい。

画像12。MorPhys。今は不調で動かないが、近日中に修理される予定

そして最後にお届けするのが、自分の体が発熱している感じや、自分をモノクロで撮影するとどんな風に見えるのか(筆者の場合、モノクロの方がいろいろとごまかせるから少しかっこよくなる気がする(笑))かがわかるのが、「Thermo-key(サーモキー)」だ。

複数のカメラを利用して(画像13)、リアルタイムにモザイクをかけたり(画像14)、温度分布を表示したり(画像15)、モノクロのカートゥーン風(画像16)で表示してくれるのである。自分の顔にモザイクがかかっているのを見るのは、なんか自分が歩く放送禁止(笑)になったようないかがわしさが増大するのを感じられて、これはこれでなかなか味わえない面白い気分になれるので、ぜひ試してみてほしい。

画像13。複数のカメラを利用しているThermo-key

画像14。リアルタイムモザイク処理の画面。いかがわしさが増大

画像15。半分普通の映像、半分温度分布。筆者は温度分布からすると、たぶん普通の人間

画像16。モノクロのカートゥーン風にするとかっこよさが何割か増すような気がする。常にモノクロでいたいかも

しかしこのThermo-key。余談だが筆者は、とある「検出器」としての裏の(?)使い方があるのではないかと勝手に思いついた。

ヒトの発熱の様子を見て取れるということは、映っているヒトがとても非常識な体温だったり温度分布だったりする場合は、それはヒトを模倣している何か、という可能性が出てくるというわけだ(もちろん、あくまでもとても少ない確率、というか夢物語的な話題だが)。例えば、衣服も肌も何もかも室温と一緒、という感じで映っていたら(たぶん全部青色とか緑色)、ゾンビやアンドロイドなどの可能性が考えられる。またアンドロイドの場合は、部分的に信じられないような高温域があることも考えられるだろう(内部の一部の機器が発熱量が多いことなどのため)。温度分布が変な場合は、ヒトに擬態した地球外生命体ということもある可能性だってある。それから、カメラの前に誰も立っていないはずなのに、室温とは異なるヒト型をした温度分布が映っていたら(画像17)、心霊現象ということが考えられる(霊体は夏場などは特に、室温・気温よりも体温(?)が低いという話もある)。もしかすると、熱光学迷彩技術でクローキングしているけど、熱が微妙に漏れている、という可能性もある。

画像17。画面左側の可視光による通常のカメラ映像には何も映っていないのに、右側の温度分布だとヒト型らしきものが…。そこに何が!?(画像は加工したものなので、実際にこうした映像を見える可能性は限りなく低いと思う)

ちなみに、どうでもいい余談の余談だが、もし自分の家族や友人、恋人などが人間以外の存在であることに気がついてしまった時は、向こうが危害を加えてこないような、静かに人間社会に溶け込んでいるだけの存在なのであれば、騒ぎ立てずに今まで通りに生活してつき合っていく方が無難だろう(本人を亡き者にして入れ替わっているというであれば話は別だが)。人ではないから人権がない、と言って、いじめたりするのもよくないだろう。

また、自分が人間じゃないという自覚のある方、無自覚だけどどうも生物学的に人間である自信がないという方は、未来館に遊びに行っても、Thermo-keyの前にだけは立たないようにすることをオススメするし、どうしても成仏したくて存在をアピールしたいという霊体の方は、未来館に迷惑になるような暗い雰囲気で出現するのだけは控えていただきたい。

最後の方は、どうでもいい余談になってしまったが、今回のメディアラボがどういったものであるか、感じていただけただろうか? メディアラボは常設展示ではあるが、一定期間ごとに展示内容が切り替わるので、厳密には期間限定の展示であり、この12期展示も約半年で終了となる。これまでの展示の中でも子どもが楽しめる度は上位の作りとなっているし、その一方で大人でも楽しめるので、ここは親子やおじいちゃん・おばあちゃんと孫といった組み合わせなどでぜひ訪ねてみてほしい。もちろん、子どもたち同士でもいいし、大人同士でもOK。この夏、ぜひ足を運んで、実際にその面白さを体験してもらえればと思う。



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