KDDI(au)が2012年春に開始した「auスマートパス」の会員が600万人を突破した。スマホの月額定額制コンテンツサービスを牽引してきた同サービスだが、6月に大規模なリニューアルを実施。この際、新たに導入した「タイムラインUI」も好評だという。また今後、会員限定のスペシャルな特典が続々と提供されるという話もあるようだ。

そこでマイナビニュース編集部では、auスマートパスの"中の人"に話をうかがった。今回、対応してくれたのは、KDDIの繁田光平氏と、リクルートの国内旅行情報雑誌「じゃらん」や結婚情報雑誌「ゼクシィ」の創刊、オールアバウトの生活総合情報サイト「All About」の立ち上げなどに携わった経験を生かし、現在"auスマートパスの中の人"として活躍しているメディアコンサルタントの森川さゆり氏のおふたりだ。

今回、話をうかがったKDDI 新規事業統括本部 新規ビジネス推進本部 auスマートパス推進部 部長の繁田光平氏(写真右)と、メディアコンサルタントの森川さゆり氏(写真左)

auスマートパスとは?

――― auスマートパスとは、どんなサービスなのでしょうか?

繁田氏 390円でアプリが取り放題になる、auスマートフォン向けのサービスになります。初めてスマートフォンを手にしたお客さまの中には『私に使いこなせるかしら』と悩まれる方もいるかも知れない。そうした方々に『このアプリさえ入れておけば大丈夫ですよ』とオススメできるラインナップを揃えています。

何十万というAndroidアプリの中から厳選したものを、ユーザー様にお届けします。『携帯電話のテンキーは打ちやすかったけどスマートフォンでうまく文字入力できるか不安』というお客様には「ATOK」を用意。また、個人情報の流出などを心配されているユーザー様のためにセキュリティソフトも用意しています。スマートフォンのビギナーから上級者まで、幅広いユーザーが満足できるサービスになっています。

auスマートパスはアプリが取り放題になるサービス。人気雑誌や人気映画など、対応コンテンツの幅も広い

UIのデザインが一新

――― 6月6日にリニューアルして、デザインも変わりました。

繁田氏 はい。これまで厳選した500アプリを提供する、というスタンスで展開してきましたが、それでも初心者の方がアプリを探すには量が多いのでは、という部分がありました。新しいUI(ユーザーインターフェイス)ではお客様にレコメンド(推薦)していくというコンセプトになっています。

これだけ多くのアプリがあるので、ともすると階層構造が深くなったりページが長くなったりして使いたいアプリを探すのが難しくなってしまいます。でも従来と変わらない見せ方だと、お客様にはリニューアルしたという印象を与えられません。そのとき旬な情報を的確にお見せするためには、どうしたら良いか。最終的に、今回の新UIが最適な形だという結論に至りました。

新しいタイムラインUIの利用イメージ。「知りたい情報が飛び込んでくる」というデザインコンセプトになっている

――― タイムラインUI導入に踏み切ったきっかけは?

繁田氏 早い段階でスマートフォンを手にした方のアプリのダウンロード数はとても多かったのですが、最近スマートフォンユーザーになった方はダウンロード数が比較的少なめになる傾向がありました。そのあたりを改善したかったというのが、理由のひとつです。 また、ユーザー様の意見を汲み上げる中で、スマートフォンにプリインストールされるアプリについては、好意的な意見も否定的な意見も両方いただいていました。タイムラインUIがその解決策になるのでは、という思いがあります。

――― タイムラインUIは、ブラックとホワイトを基調にしたシンプルなデザインが目をひきます。

繁田氏 auのイメージカラーはオレンジ色です。オレンジ色をUIのデザインに取り込むと確かに目立つのですが、目立たせるべきはUIではなくコンテンツである、と考えました。UIはむしろ限りなく無色透明なものの方が良い。そこで、ブラックとホワイトの2色になりました。デザインはフレンドリーな雰囲気を大切にしています。近未来的なUIも検討していたんですが、シンプルで分かりやすい、親しみやすいデザインの方が反応が良いようです。

中の人について教えて欲しい!!

――― auスマートパスはどんな方々が運営しているのでしょうか?

繁田氏 auスマートパスには日々、常に進化が求められます。したがって1年先を見て戦略を練っているメンバー、それを実行するメンバー、できあがったものを運営し編集していくメンバーとで構成されています。

――― 運営にあたっての工夫などはありますか?

森川氏 auのメインユーザーである20代後半~30代前半の方々をターゲットにしつつ、どの年代の方が見ても納得のいくコンテンツになるように工夫しながら運営しています。タイムラインUIは、キャラクターが話しかける形式になっています。そこで、普段の会話は親しみやすい話し言葉にし、ユーザー様の生活に寄り添うように。一方で、真面目な内容では「です・ます調」でお伝えするということを考えています。

――― タイトル、文言によって注目度も変わってきます。本質を崩さずに、情報を伝える表現上の工夫がありそうですね。

森川氏 タイムラインは、KDDI(au)が様々なサービスを展開していく場です。ですので、それぞれのサービスが良い形でお客様にアプローチできるようアドバイスなどを行なっています。24時間の中で、アピールすべきコンテンツも当然変わってきます。朝はモチベーションのあがるようなもの、夜はまた別のものといった風に。テレビ番組の編成表みたいなものをつくり、『この時間だったら、利用者は何をしているだろう』などと想像しながら、運営しています。

例えば、店舗のクーポンの情報を夜中に流しても買いに行けない。また、時間のかかるコンテンツは夜にダウンロードしてもらうのが最適だったりもします。生活形態を想像しながら、という点が大事になりますね。情報の更新回数は様々で、頻度の高いものでは1時間に何十回と更新することもあります。

――― ユーザーは、タイムラインをどの程度閲覧すると想定されていますか?

森川氏 正直なところ、1日分のタイムラインを全部閲覧するのは難しいと思っています。想定では、タイムラインを閲覧した時刻から4~5時間くらいなら遡って見ていただけているのではないかと。

――― 運営していく上で心がけていることはありますか?

森川氏 ユーザーの方は、それが広告なのか編集記事なのか、という区別はせず、純粋に自分に必要な情報を欲しているわけです。常にその方の目線で、適切なものを正しい内容で伝わるように工夫していきたいと心がけています。

今後のauスマートパスの行方について

――― 新サービスには、どんなものが追加される予定ですか?

繁田氏 auスマートパスは現在、600万人を超える方々に利用して頂いていますが、さらなる進化を目指します。今後とも様々なビジネスを展開していく予定です。例えばスマートフォンの中でデジタルコンテンツを楽しむだけでなく、実生活において良いことがあるようにということで『Simple & Lucky』をテーマに、デジタルコンテンツ以外のラッキーを皆さまにお届けできるサービスを企画しています。

いま上がっている具体案では、「ぴあ」との協業があります。auスマートパスの会員限定でチケットの先行予約を始めたり、限定ライブ、それからバックステージへの招待なども企画しています。そのほか、電車の遅延情報なども含めて生活に必要な情報、お得な情報などはプッシュ通知で端末に届けることを想定しています。

今後とも、会員であることの"プレミアム感"を出していきたいですね。タイムラインUIにアクセスしたときに、一番上にお得な情報が表示される。そうしたことで、ユーザー様の日常生活にリアルなラッキーをお届けしていければと。

――― 最後に、改めてauスマートパスの魅力について教えてください。

繁田氏 いまフィーチャーフォンを使っておられる方でも、スマートフォンには興味をもたれているのではないかと思います。でも、実際にスマートフォンで何ができるのかが分からない。そこで、auスマートパスが『全てのユーザーへの水先案内人』のような存在になれればと思っています。

『auスマートパスがあるなら、スマートフォンを使ってみようかな』と思っていただけるようなサービスを目指して、これからも努力を続けていきます。「毎日がちょっとラッキーになる」を合言葉に、朝起きてから夜眠るまでに、ユーザー様の周辺で"ちょっと良いこと"が起こる。auスマートパスを通じて、ユーザー様の日常生活に少しずつラッキーを加えていければと思っています。