日本AMD エンタープライズ事業部長 林淳二氏

AMDは18日(現地時間)、2014年のサーバ向けプロセッサのロードマップを公開した。プロセッサの要件を各ワークロード別に分けて、"Warsaw"、"Berlin"、"Seattle"(いずれも開発コード)という3つのプロセッサを投入する予定だという。これに合わせて記者説明会を開催し、日本AMD エンタープライズ事業部長 林淳二氏が詳細について解説した。

林氏はまず、「スマートフォンに代表される、インターネットに接続可能なモバイルデバイスが急速に普及していく中で、ネットワーク越しに接続するサーバでもデータ容量やネットワークの接続数が増大し、今後も増え続けていく」と現状を説明する。

クライアント側の機器では、画面解像度や動画再生能力の向上といった描画能力への要求が高まり、一方、サーバ側では超並列演算への対応、サーバ数の増加に伴って増える消費電力の削減や機器のスペース削減とさまざまな課題が生じている。クライアントサーバともに新しいテクノロジや製品、ビジネスモデルが必要になるという。

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こうした課題に対して、AMDでは「まったく新しいOpteronプロセッサ製品群でx86ビジネスを強化」「新しい命令セットをCPUへ - ARM系でサーバ」「さらに高効率なサーバを開発」「新しいオープンなビジネスモデルへ」という4つのサーバ戦略を策定した。

4つのサーバ戦略

今回新たに存在を発表した3つのプロセッサは主に「まったく新しいOpteronプロセッサ製品群でx86ビジネスを強化」と「新しい命令セットをCPUへ - ARM系でサーバ」の2つの戦略に関係している。

同社では現在、仮想化やデータベースなど従来型のワークロードで、価格当たりのパフォーマンスやスループットが求められる領域にはOpteron 6300やOpteron 4300といった製品群を展開する。

ワークロードに合わせた製品投入

一方、Webホスティングやビッグデータ、マルチメディアストレージといったクラウド向けのワークロードで、価格当たりに加えて電力当たりのパフォーマンスや高密度が要求される領域にはOpteron 3300や2013年5月に発表した「Opteron X」(開発コード:Kyoto)を提供している。

2014年もそれぞれのワークロードに適したプロセッサを提供する方針は変わらないが、従来型ITのワークロードに求められる2P/4Pサーバ向けには「Warsaw」、ホスティングなどのワークロードに向けては「Berlin」と「Seattle」を投入する。

Warsaw

Warsawの概要

Warsawはエンタープライズ領域の2ソケット/4ソケットサーバ向けのプロセッサとして現行のOpteron 6300から電力当たりのパフォーマンスが向上したという。アーキテクチャとしてはOpteron 6300と同様で、CPUコアにPiledriverコア(12コア/16コア)を採用しているが、命令セットの追加などを行うことで性能の向上を図るとしている。

また、同社が展開しているAMD Open 3.0サーバに向けて、演算性能の高いプロセッサを供給し、サポートしていくという意味でもWarsawが必要になるという。出荷の開始は2014年第1四半期を予定している。

Berlin

Berlinの概要

Berlinのブロックダイアグラムなど。ついにPCI Express 3.0に対応する予定

Berlinは「Opteron X」(Kyoto)の後継として2014年上半期の投入を予定する。CPUにPiledriverコアの後継であるSteamrollerコアを4コア搭載するほか、GPUにGCNベースのRadeon GPU Coreを512基搭載する。

また、Berlinはx86系サーバにおいて初となるヘテロジニアス・システム・アーキテクチャー(HSA)対応のAPUで、CPUとGPUのユニフォーム・メモリアクセスを可能とし、パフォーマンスを向上させる。AMDでは現行のフラグシップである「Opteron 6386SE」と比較して、7.8倍のパフォーマンスを発揮するとしている。

AMDが2013年下半期での出荷を予定する次世代APU「Kaveri」(開発コード名)も、Berlinと似たような仕様で投入されるものと思われるが、KaveriとBerlinの違いとして、AMDではサーバ向けのBerlinではECCメモリやサーバ向けOSのサポートを挙げている。

Seattle

Seattleの概要

そしてSeattleは、8コア(今後16コアまで拡張)のARM Cortex-A57コアを搭載するSoCで、2GHz以上のクロックで動作する。「Opteron X」(Kyoto)と比較して2~4倍のパフォーマンスを発揮する。

また、CPUの負荷を低減するオフロード・エンジンやサーバの暗号化、10GbEを含むレガシー・ネットワーキング、SeaMicroのネットワークファブリック「Freedom Fabric」をプロセッサに統合する。

「2012年の実績ではx86系のサーバCPUは1,300万個、対してARM CPUはクライアントも含めてだが80億個以上出荷している。これまでの歴史を考えるとより小さく、コストが低く、大量に出荷できるプロセッサが成功している。また、OEM/ODM、ならびに大手の顧客からARMコアに対して大きな期待を集めている」と林氏はARMコア投入の背景を語る。

また、「AMDではARMコアに関して経験がないため、製品の知識およびソリューションは遅れている」と後発故の弱みを認めつつ、「しかし、これまでのサーバ分野における技術やノウハウ、IP、ファブリックネットワークなどの優位性があるとし、サーバ市場におけるポジションを高めることができる」とした。