6月11日(現地時間6月10日)、アップルのデベロッパーカンファレンス、WWDCが開幕した。予想通りOSはそれぞれアップデートが示され、ハードウェアもMacBook Air、そしてまさかのMac Proが発表された。今回の基調講演を見て、アップルの今後を検証してみよう。

Mac OS Xは細かな進化

アイコンも変わり壁紙は大波に

Marvericksの由来はサンフランシスコ西のビーチのようだ

まずMac OS Xは10.9へと進化。コードネームはネコ科がとうとう終了してしまったため(Sea Lion(オットセイ)というジョークもあったが)、Marvericksへと変わった。これはサンフランシスコの西にある、伝説的な大波が来るビーチの名前だそうで、壁紙が波の画像なのはそのためのようだ。

Marvericksではメモリを圧縮して使える部分を増やしたり、CPU利用の管理をより効率的にすることでMacのパフォーマンスが向上している。他にはiBooks、MapsといったiOSアプリのデスクトップ版が搭載、マルチディスプレイ機能の強化、キーチェーンがiCloudで復活するなど機能アップも図られた。ファインダーではタブやタグが使えるようになったことでよりファイルの整理がしやすくなっている。細かな進化だがより使いやすく、iOSとの融和性も高まったアップデートになっているようだ。

他にもずっと以前から噂されていたiWorkがiCloud上で利用できるようになり、Windowsからもブラウザ経由で使えるようになるのはよい知らせだ。iPodがWindowsで使えるようになったときからシェアを拡大していったように、iWorkも使ってみれば良さが分かるソフト。Windowsユーザーを取り込めるかどうかは今後の大きなポイントになるかもしれない。

まさかのスニークプレビュー Mac Pro

ハードウェアではMacBook Airが新しいCPU Haswellを搭載して登場。バッテリー駆動時間が11インチで9時間、13インチで12時間と向上した。噂されていたRetinaディスプレイの搭載は見送られたというよりは、モバイルという用途においてはバッテリー持続時間が優先されるという判断だろう。また無線LANはようやく802.11acに対応したものになり、同時にac対応のAirMac ExtremeとTimeCapsuleが登場。これを機にMacはac対応していくと考えて間違いないだろう。acの高速通信は単にネットワークだけでなく周辺機器への接続も可能にするはずであり、ワイヤレスディスプレイや高速ストレージなど、ac対応製品が出てくることが期待される。

Mac ProはこれまでのMac Proよりも非常に小さい。発売時にはおそらくThunderboltディスプレイもRetina化されて発売されるのではないかと思われる

驚いたのは新型Mac Proだ。アップルには珍しく半年先に発売する予定の製品をスニークプレビューという形で公開した。さらに驚くべきはその姿。円筒形で黒く、ワークステーション性能を持つMac Proにしては非常に小さく、各種ボードは内部の三角の辺にそれぞれ設置され、上部にあるファンで冷却するという。内部にはフラッシュストレージのみを持ち、他はすべて外付けのUSB3か新規採用のThunderbolt2で接続するようだ。新しいMacはいつでも興奮させられる。まだ発売は半年先だが、非常に期待の高まる製品だ。

そして脱ジョブズが示されるiOS 7

これまでとは全く違うOSとして登場したiOS 7

そしてiOS 7は噂通りのフラットデザイン。しかしこれは平面というよりは奥行きを考えた3Dなもので、アイコンと壁紙の間に空間があり、アイコンは浮いているように見える。これまでの、実際にあるものをUIに取り込むスキュアモーフィズムは一掃され、シンプルで綺麗なデザインになっている。一部のユーザーからは「Androidっぽい」という声も聞こえてくるが、これまでのiOSを完全に一新した新しいOSと言っても過言ではない変わりようだ。

各機能は[Webサイト(]http://www.apple.com/ios/ios7/)にアクセスして確認することができる。iPhoneでアクセスすると画面いっぱいで表示され、iOS7の動きをiPhoneでシミュレートできる

機能面でも大幅な改良がなされている。下からせり出すコントロールセンターや通知センターの詳細化、マルチタスクの改善、カメラ、Siriの改良など、細かなことを上げればキリがない。

iOSが登場して5年、このところ少し古くささが目立つようになったと感じていたこともあり、今回の進化ーいや「生まれ変わり」はiOSが再度トップランナーに躍り出るきっかけになるだろう。と同時にアップルはようやく「ジョブズ」という巨大なイコンから解き放たれようとしているのではないかと感じる。その象徴がスキュアモーフィズムの廃止であり、他にもジョブズの時代には考えられなかったマルチタスクの開放などの変更が行われている。今回のiOSの一新はジョブズが居なくてもアップルは十分にやっていけるという意志表明であり、iOSの完成度はこれまでの不安を一層するには十分な役割を果たせそうだ。

iOS 7の登場はこの秋。おそらく次期iPhoneと同時に登場することになるだろう。続く次期iPhoneにはどれほどの進化が盛り込まれているのか、期待したいところだ。