マカフィーは、2013年5月のサイバー脅威の状況を発表した。これは、マカフィーのデータセンターが捕捉したウイルスなどの集計をもとに、各項目ごとのトップ10を算出したものだ。さらに、今月は、McAfee Blogから「悪質なアダルト出会い系アプリ」について紹介したい。

ウイルス

5月も脆弱性を悪用したドライブバイダウンロードに関連した脅威が多い。特に、検知会社数のランキングで1位のJS/Redirector.ar、3位のJS/Exploit!JNLP、6位と7位のJS/Exploit-Blacole、8位のJS/IFrame.gen.jと、不正なJavaScriptが半数を占めた。これは、ドライブバイダウンロード攻撃の初期に、JavaScriptによる不正なリダイレクトが使われたからである。いずれにせよ、非常に活発な活動が行われていることがうかがわれる。

これに対し、McAfee Labs東京主任研究員の本城信輔氏は「脆弱性を修正していないシステムを利用していると、ユーザーが気づくことなくいつの間にか感染してしまうことでしょう。特にJREは、最近の6か月でほぼ毎月といっていいほど悪用可能な脆弱性が発見され、実際にさまざまな攻撃に使われています。これらのアプリケーションをつねに最新のものにしておくことを心がけてください」と注意喚起している。

表1 2013年5月のウイルストップ10(検知会社数)

順位 ウイルス 件数
1位 JS/Redirector.ar 1,700
2位 Generic!atr 752
3位 JS/Exploit!JNLP 469
4位 W32/Conficker.worm!inf 424
5位 FakeAlert-WinWebSec!env.h 307
6位 JS/Exploit-Blacole.ht 261
7位 JS/Exploit-Blacole.lr 172
8位 JS/IFrame.gen.j 172
9位 Generic Autorun!inf.g 138
10位 ZeroAccess.b!env 121

表2 2013年5月のウイルストップ10(検知データ数)

順位 ウイルス 件数
1位 W32/Ramnit.a!htm 20,921
2位 W32/Conficker.worm!job 8,924
3位 X97M/Laroux.a.gen 8,224
4位 JS/Redirector.ar 5,872
5位 Generic!atr 5,362
6位 W32/Conficker.worm 4,353
7位 W32/Fujacks.remnant 4,141
8位 W32/Conficker.worm.gen.a 3,554
9位 W32/Conficker.worm!inf 2,794
10位 X97M/Laroux.e.gen 2,310

表3 2013年5月のウイルストップ10(検知マシン数)

順位 ウイルス 件数
1位 JS/Redirector.ar 2,849
2位 Generic!atr 1,440
3位 W32/Conficker.worm!inf 884
4位 JS/Exploit!JNLP 601
5位 W32/Conficker.worm!job 508
6位 W32/Conficker.worm.gen.a 490
7位 FakeAlert-WinWebSec!env.h 387
8位 JS/Exploit-Blacole.ht 317
9位 Generic Autorun!inf.g 241
10位 JS/IFrame.gen.j 239

PUP

PUP(不審なプログラム)は、めだった変化というほどではないが、ランキングに変化がみられる。検知データ数と検知マシン数では1位が入れ替わっていた。PUPの活動はさほど活発ではないが、フリーウェアの利用に引き続き注意したい。

表4 2013年5月の不審なプログラムトップ10(検知会社数)

順位 PUP 件数
1位 Generic PUP.x 295
2位 Generic PUP.x!bjg 278
3位 Tool-PassView 180
4位 Adware-OptServe 172
5位 Adware-Adon 145
6位 Exploit-MIME.gen.c 127
7位 Adware-UCMore 125
8位 Generic PUP.d 106
9位 Generic PUP.z 92
10位 Obfuscated-FAS!hb 84

表5 2013年5月の不審なプログラムトップ10(検知データ数)

順位 PUP 件数
1位 Generic PUP.x!bjg 35,997
2位 RemAdm-VNC 10,290
3位 Exploit-MIME.gen.c 8,672
4位 Adware-OptServe 7,433
5位 Generic PUP.x 6,164
6位 Generic PUP.d 4,889
7位 Tool-PassView 4,151
8位 Generic PUP.z 3,811
9位 Generic PUP.z 3,311
10位 Spyware-eBlaster 2,081

表6 2013年5月の不審なプログラムトップ10(検知マシン数)

順位 PUP 件数
1位 Generic PUP.x!bjg 485
2位 Tool-PassView 468
3位 Generic PUP.x 368
4位 Adware-UCMore 211
5位 Adware-OptServe 206
6位 Adware-Adon 199
7位 Exploit-MIME.gen.c 177
8位 Tool-ProduKey 129
9位 Generic PUP.d 118
10位 Generic PUP.z 109

悪質なアダルト出会い系アプリがGoogle Playで急増 - McAfee Blogより

McAfee Blogでは、最新の脅威動向を解説している(図1)。今回は、「悪質なアダルト出会い系アプリ」について紹介したい。

McAfee Mobile Researchによると、悪質なアダルト出会い系アプリが急増しているとのことだ(図2)。日本語であることからも、攻撃対象は日本人であることは明白だ。似たような不正アプリにワンクリック詐欺があるが、McAfeeによれば、同一の開発者によって行われており、出会い系サイトの運営までは確認できないが、アフィリエイトなどなんらかの報酬は得ていると推察される。

図2 悪質なアダルト出会い系アプリの例

まず、これらの不正アプリは、存在する悪質な出会い系Webサイトをアプリ上のWebViewコンポーネントで表示、もしくはWebブラウザで表示したりする程度の機能である(図3)。したがって、容易に開発でき、多数がGoogle Playに登録されたと思われる。

図3 悪質な出会い系アプリが表示すWebページ

また、有名なオンライン掲示板のまとめアプリとして実装し、偽の記事スレッドによりユーザーを悪質サイトへ誘導する手口なども確認されている(図4)。

図4 記事まとめサイトを装った悪質な出会い系サイト誘導アプリ

これらの誘導アプリでは、図5のように誘導する記事を紛れ込ましている。

図5 記事内のリンクをタップすると悪質な出会い系サイトに誘導される

こうして誘導された悪質な出会い系サイトのランディングページ (LP)であるが、ここでも騙しの手口が使われている。Google Playのアプリ解説ページをまねるのである。こうして、いかにもこの出会い系サービスが公式アプリケーションストアで公認されているかの印象を与える(図6)。こうしてユーザーを騙しているのである。

図6 Google Playをまねた悪質な出会い系サイトのランディングページ

このような不正アプリをインストールすることで、個人情報などの収集などは行われない。ユーザー自らに、登録を行わせる(アドレスや電話番号を入力)。すると、サクラの異性会員から、メールが届くようになる。ここまでは無料であるが、実際に紹介などを行う段になると、

・有料会員への登録し、会費の請求
・プレミアム会員に当選したので、初回の登録料の請求
・高額当選を囮に、譲渡手続きのために入会請求

と、金銭を要求される。出会い系サイト自体は10年以上前から存在するが、金銭を騙し取る手口自体は、大きく変わっていない。別な被害として、登録で使用したアドレスに複数の出会い系サイトから多数のスパムが届くようになる(1日1000通以上にもなるとのことだ)。

McAfeeでは対策として、まず会員登録を行わないことが第一とする。もし、登録してしまった場合でも、メールのやりとりは行わず、運営側とも連絡をとらないことが望ましいとしている。McAfeeでは、これらの不正アプリをAndroid/DeaiFraudとして検出する。昔からある手口であるが、その被害はいまだに少なくない。セキュリティ対策ソフトを使い、不正アプリのインストール、さらには不正なWebサイトを事前にブロックすることで、被害を防ぐ方法が確実であろう。