米Appleは6月10日(現地時間)、次期モバイルOSの「iOS 7」を発表した。アイコンデザインを含めユーザーインターフェイスが大幅に刷新されたのが特徴で、iPhone 4以降の端末に無償アップデートとして今年秋に提供される見込み。同日米カリフォルニア州サンフランシスコで行われたWWDCにおいて、そのプレビューが公開されている。

一新されたUI

発表前からの噂にあったように、iOS 7におけるアイコンはよりシンボリックでフラットなデザインとなり、ホーム画面の雰囲気は一新された。また設定メニュー等の項目は半透明のデザインで背景にオーバーレイで表示されるようになり、OS全体が大きく変化した印象を受ける。iOSは初代iPhoneから基本デザインは変更されていないため、実に6年越しの初めての大幅刷新といえるだろう。

iOS 7は今秋提供される

UIの変更としてほかに特徴的なのは「Control Center」「Notification Center」「マルチタスク」の3つだ。Control Centerは機内モードやWi-Fi/Bluetoothのオン/オフ、明るさや音量調整、主要機能の呼び出しまで、これまでiOS上にばらばらに存在していた設定メニューを一覧表示し、変更可能な統合設定メニューだ。Notification Centerは今日の予定や連絡事項、SMS/通話に関する履歴管理まで、いわゆるTo-Do的な機能を集約したメニューとなる。2つの設定メニューともに半透明のメニューがホーム画面やアプリに被さる形で出現し、システム上の設定メニューであることがわかるようになっている。なお、Notification Centerはロック画面からでも呼び出せる。

マルチタスクは従来の制限が緩和され、すべてのアプリについてバックグラウンドでの動作が認められるようになった。新しいバックグラウンド動作用のAPIが提供されており、これに対応することでより柔軟な運用が可能になるとみられる。例えば、朝7時に起きてメールやSNSのアップデートを確認する習慣がある場合、これらアプリがバックグラウンド動作であらかじめ情報のアップデートを行っておくことで、ユーザーがアプリを開くタイミングにはすでに最新情報に置き換わっているといった使い方が可能になる。またマルチタスクの操作画面も変更されており、ホームボタンを2回連続で押すことで専用の切り替え画面が出現する。左右にスワイプで切り替えるほか、画面を上方向にスライドすることで強制終了も容易になっている。

改良されたアプリと新機能

カメラと写真アプリも大きな変更が加えられている。カメラアプリではフィルター選択が用意され保存時点で簡単に加工が行えるようになったほか、「Square」と呼ばれる真四角の画角オプションが用意された。写真アプリも改良され、時間や場所単位で簡単に分類して過去の写真を確認できるなど、より閲覧性や検索性が向上している。さらにiCloudを組み合わせることで友人との写真共有のほか、Photo Streamによるコメント付与など、SNS的な機能を利用できる。

Safariも変更が行われており、MacのOS X同様にアドレスバーと検索バーが統合されたUnified Smart Search Fieldとなっているほか、タブの切り替え画面が変更され、複数のタブのサムネイルを一度に閲覧可能な3D表示になるなど、モバイルOSでは若干使いにくい印象だったタブ切り替えに工夫が行われている。またiCloud Keychainにより、iCloud上にオートフィルによるIDやパスワード保存や共有が可能など、iCloud連携を意識した作りが行われている。モバイルOSではパスワード入力が煩雑になることが多いが、さらにPassword Generatorという機能により、難易度の高いパスワードを自動生成し、かつそれをiOS自体が記憶することが可能となっている。ユーザーはそのパスワードを覚えておく必要はない。

そのほかの改良点としては、OS Xで実装されているAirDropへの対応によりユーザー間のファイル送受信が容易になったこと、Siriで男声と女声のバリエーションを選択可能になったこと、Find My iPhoneでリモートワイプやロックを使った際に再アクティベートにはロックに使ったApple IDの入力が要求されること(つまり盗難時に本人のApple IDがないと再利用ができない)、などが挙げられる。UIが全体に変更されたことを受けて、このほかApple標準アプリの数々も再デザインが行われている。その意味で、いままでのiOSとは異なった印象を受けるだろう。

新サービス「iTunes Radio」

「iRadio」などの名称で噂されていたAppleのインターネットラジオサービスが正式発表された。「iTunes Radio」の名でもわかるように、複数の異なるテーマに沿った「Station」が用意され、200以上のジャンルに細分化された楽曲ストリーミングを楽しむことが可能になる。iOSではMusicアプリで聴けるほか、MacでもiTunesを利用してiTunes Radioを楽しめる。既成のStationのほか、ユーザー自身の志向とルールに合わせてカスタマイズした独自のStationを楽しむこともできる。Station経由でライブ配信されるフェスティバルやイベントなども用意されるという。

iTunes Radioは基本的に広告表示を前提とした無料の楽曲配信サービスとなっており、この点はライバルのPandoraなどに近い。また年額24.99ドルのiTunes Matchサービスを組み合わせることで、該当ユーザーはiTunes Radioの広告表示を消すことも可能。同サービスは今年秋にも提供開始予定で、秋に発表されるiPhone新製品と合わせて大きな目玉となりそうだ。

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iOS 7の対応ハードウェアはiPhone 4以降、iPad 2以降、第5世代iPod touch以降、またはiPad miniとなっている。iPhoneの対応ハードウェアとして3GSがついに外れる形となった。なお、ハードウェアによっては一部機能に制限があるという。新バージョンのSiriではTwitterのタイムラインを読み上げる機能が搭載されているが、対応するのは米国、フランス、ドイツのみで、その他の言語については現時点でアナウンスされていないなど、iTunes Radioを含め地域的な制限のある機能もあるようだ。

また発表同日より開発者にはiOS 7 BetaのソフトウェアとSDKが提供されており、アプリのリリース前にテストが行えるようになっている。