小さい頃から歌うことが大好きな私。プライベートではバンドのボーカルを務めるほどで、アマチュアとはいえ自分の"美声っぷり"には結構な自信がある。もちろんカラオケも大好きなのだが、なぜだろう……不思議なことにスコアは90点を超えたことがない。まぁ私の魂の叫びが理解できないなんて、カラオケも所詮「機械」なのよねぇ……。

そう思っていた私だが、とあるテレビ番組を見て考えが変わった。その番組自体は、芸能人同士がカラオケで対決!! …的な割とありきたりな内容だったのだが、興味深かったのは「歌が上手い人は軒並み高得点を叩き出していた」という事実だ。やっぱりカラオケの採点は馬鹿にならないのかも。では、なぜ私は……!? ガリレオの福山雅治ばりに素早く計算したが、もちろん答えは見つからなかった。

私が普段、採点に利用している「LIVE DAM」の「精密採点DX」の点数。みんなは上手いと言ってくれるのに、なぜ90点台にいかないのか……

ボーカル・トレーナーとの出会い

この不思議なガジェットで私は生まれ変わる!?

そんな悶々とした日々を過ごしていたある日、職場の先輩が不適な笑みを浮かべてやってきた。「この製品に興味あるんじゃない? 試してみていいよ」。……なぜか恩着せがましい口調で渡されたのは不思議な小型のガジェットだった。

この先輩は何の見返りもなく物を貸してくれるような人物ではない。私はすぐに悟った。要はその製品に関するレビュー記事を手伝えということなのだろう。しかし、私も通常業務で忙しい身。どう断ろうかと悩んでいると、先輩が意外な言葉を口にした。

「これ使ったら歌が上手くなるよ。カラオケでスコアアップ間違いなし!!」

歌が上手くなる……だと!? ここ数日の悩みを見透かされたようで一瞬ひるんだが、よくよく聞いてみると、それはローランドの「ボーカル・トレーナー VT-12」という話題の製品で、ひと言で説明すると"ボーカリスト専用のチューナー"なのだとか。チューナーといえば、一般的には楽器を調律するための機器を指すが、これは"歌声を調律"してくれる素晴らしい機械なのである。

まんまと乗せられた私を見て、先輩は満足そうに去っていった。面倒くさい先輩だと思っていたけど、たまには役に立つじゃん。その日、私はこの製品を自宅に持ち帰り、ドキドキしながら早速試してみた。

ローランド「ボーカル・トレーナー VT-12」。写真のオレンジのほか、ブルー、ブラックの3色が用意されている

1声を平均率で検出する「MONO EQUAL」、2声を平均率で検出する「CHORD EQUAL」、2声を純正律で検出する「CHORD JUST」の3モードから選べる

ゲーム感覚で歌唱力がアップ!!

付属の説明書を読んでみると、この製品には前述のチューナー機能に加えて、リズム感を鍛えられるメトロノーム機能、ボーカル・トレーニングのための多彩な練習曲、歌声を録音・再生できるレビュー機能などが内蔵されているらしい。しかも、音楽の名門校として知られる「バークリー音楽大学」のメソッドが詰まった練習ガイドも同梱されているのだ。これらを上手く組み合わせてトレーニングすれば、確かに総合的な歌唱力が身に付きそうである。

とはいえ、手っ取り早くカラオケでスコアアップしたい私は、メインの機能であるピッチ・チューナーで音感をトレーニングすることに決めた。カラオケが"機械的"に歌唱力を評価するのなら、私はこの「VT-12」という"機械"でトレーニングするまでっ!! 目には目を、「機械(カラオケ)には機械(VT-12)を」である。

手に持ち30cmほど離れた状態で使用する。スタンドが付いているので、デスク上に設置して使うこともできる

名門バークリー音楽大学の出版部門が作成した教則本が付属する。この教則本だけでも価値が高い
(C)2006 by Berklee Press

そんな訳で、まずは基準音を再生しながらピッチを合わせる練習をしてみた。VT-12には12音階24半音の基準音が内蔵されていて、再生中の基準音と歌声のピッチが本体のインジケーターに表示されるのだが、どうも私はピッチがブレやすいみたいだ。うーん、悔しい……。しかし、歌いながら視覚的にチェックできるせいか、半ばゲーム感覚で粘り強く練習を繰り返すことができた。ピッチがピッタリと合った時は音感的にも視覚的にも快感なのである。

また、内蔵の練習曲に合わせて自分の歌声を録音してみると、自分が思っている音と実際に発声されている音には若干のギャップがあることがわかった。こういった自分の問題点を自覚することで、ピッチがかなり合うようになってきている。気をよくした私はメトロノーム機能も利用し、音感とリズム感の同時トレーニングという星飛雄馬も真っ青の過酷なトレーニングにも挑むこととなった。

トレーニングの結果はいかに!?

こういった練習を数週間ほど繰り返した結果、歌いながらピッチやリズムを強く意識するクセがしっかりと身に付いたように思う。もちろん実際に人前で歌う際にはその2つにばかり気を取られてはいけないのだが、これまで漫然と歌っていた自分にはとてもいいトレーニングになった。自宅でここまで歌唱力が鍛えられるなんて、すごい時代になったものだ。

さぁ、練習の成果を披露するぞ……

想いよ、届け!(90点台にいって!)

その後、満を持してカラオケ店に向かった私。結果は写真のとおりで、見事自己ベストを更新!! VT-12で重点的にトレーニングした音程とリズムの評価の高さが、スコアに反映されたかたちだ。すごいじゃん、私。そして、ありがとう、VT-12。

見よ、この輝かしい点数を!ここから私の伝説が始まる