通信各社の2013年夏モデルでは、ワンセグに加えて、「フルセグ」を搭載するモデルが登場した。本稿では前後編にわけて、それぞれの特徴、メリット・デメリットを紹介している。前編では、フルセグとワンセグがどういう技術か紹介した。後編では、それぞれのメリット・デメリットについて説明していく。

フルセグとワンセグのメリット、デメリット

前編で説明した通り、画質だけでいえば1,440×1,080の解像度の地デジ放送を受信する「フルセグ」のほうが、ワンセグよりも高画質だ。しかし、ワンセグにもメリットはある。それが放送エリアの広さと移動時でも映像が途切れにくいという点だ。

ワンセグは通常の地デジ放送と同じく各電波塔や中継局から発信されており、それを受信して映像を表示している。そのため、地デジ放送と同等のエリアで視聴できる。しかし、スマートフォンなどでは小さいアンテナしか設置できず、受信感度が低くなるため、地デジ視聴可能エリアでも、屋内、ビル陰など電波が浸透しにくい場所では映りにくくなる。そこで、フルセグとは異なる変調方式を採用するなどの工夫を施すことで、屋内、移動中でも電波が強い場所であれば比較的安定して視聴できるようにしている。

デジタル放送推進協会(Dpa)による地デジ放送のエリアの目安。中央の東京タワーで広く関東をカバーしている

一方、フルセグにはそうした配慮はなく、屋内アンテナや移動中は視聴が難しい場合も多い。これは、屋根のアンテナで電波を受けて宅内に引き込んでテレビに接続する、という使い方を想定しているためだ。

そのため、今回登場したようなフルセグ搭載のスマートフォンでは、アンテナやチューナーのスペース、性能に限度があるため、移動時や屋内での視聴は難しいと考えた方が良い。

基本的には、地デジ視聴可能エリアであっても、自宅の大画面テレビのような感覚で利用できるわけではない。また、ワンセグのように移動しながら視聴する、といった使い方もあまり期待しない方が良いだろう。

これが現時点でのフルセグ搭載スマートフォンの性能だ。そのため、シャープのフルセグ搭載スマートフォン/タブレット「AQUOS PHONE Xx」「AQUOS PAD」は、付属のクレードルにテレビアンテナケーブルを接続し、それでテレビを観るという使い方を提案している。このクレードルを利用すれば、自宅のテレビと同等の環境で視聴することができる。

AQUOS PADのクレードル。背面にアンテナを接続する

ARROWS AはUSB経由でアンテナケーブルを接続できる

今回、各社が提供するフルセグ搭載スマートフォンは、フルセグが受信できない場合はワンセグに切り替える機能を搭載している。なので、移動中はワンセグで、カフェの窓際など受信環境が良いところではフルセグを視聴する、といった使い方が可能だ。

なお、今回KDDIはフルセグ搭載スマートフォンを発表していないが、「ポータブルフルセグチューナー(仮称)」を今後発売する予定だ。同製品は、フルセグ・ワンセグを受信して無線LAN経由でスマートフォン・タブレットに表示するというもの。家庭内のアンテナケーブルに接続したり、窓際の電波の入りやすい場所に設置するなどすれば、スマートフォンのモバイル性を維持した上でフルセグが視聴することができる。

KDDIのポータブルフルセグチューナー(仮称)。バッテリ内蔵で持ち運びもできるほか、アンテナを外して、アンテナケーブルを接続できる

ちなみに現在、東京タワーから発射しているテレビ電波は、5月31日9時から東京スカイツリーに移行されることになっており、カバーエリア内でのワンセグの視聴環境は向上することが期待されている。ただ、シャープらによれば、それでもフルセグ対応スマートフォンでフルセグを視聴できるエリアはそれほど広くならないとのことだ。なお、今回発表されたフルセグ対応スマートフォン/タブレットは、フルセグのデータ放送には非対応となっている(ワンセグのデータ放送には対応している)。

前後編にわたってワンセグとフルセグの特徴を紹介してきた。基本的には、画質と視聴環境が大きな違いとなる。フルセグの方が画質はキレイだが、屋内や移動時の視聴が難しい場合も多い。逆にワンセグは、屋内や移動時の視聴はしやすいが、画質は低い。なので、ワンセグ、フルセグ両方の機能を状況に応じて使い分けるのが良いだろう。