Microsoftの独自デバイスである「Surface」シリーズは、2012年6月にARMプロセッサ搭載の「Surface RT」(OSはWindows RT)、Intel製プロセッサ搭載の「Surface Pro」(OSはWindows 8 Pro)の2種類を発表した。日本国内版は、米国版が発売された2012年10月26日から約半年遅れの2013年3月1日にSurface RTが発表、同年3月15日に発売されたが、上位モデルとなるSurface Proの日本国内展開は遅々として進まなかった。いや、進んだように見えなかったのである。2013年5月29日に開催された日本マイクロソフトのプレス向けイベントで、ようやくSurface Proの国内投入が公式に発表されたのだ。

壇上でSurface Proを紹介する日本マイクロソフト代表執行役 社長の樋口泰行氏(写真左)。日本で2013年3月15日に発売されたWindows RTは好調(写真右)

2013年2月に米国で発売されたSurface Proは同社の想像以上に好評だったらしく、その後の世界展開に向けて猛ピッチで生産に取り組んだと、日本マイクロソフト執行役のコンシューマー&パートナーグループ リテールビジネス統括本部長 兼コミュニケーションズパートナー統括本部長である横井伸好氏は述べた。まずは主なスペックから確認から確認したい。

日本国内版Surface Proは、先行発売されている各国モデルと同じく、Windows 8 Pro 64ビット版をプリインストール。きょう体は「VaporMg(ベイパーマグ)」と呼ばれるマグネシウム合金に、一体型Kickstand(キックスタンド)、HD解像度のWebカメラを備えるなど、基本的な差はない。Surface RTと比べると、USB3.0ポートやミニディスプレイポートの標準搭載、デジタルインクとして使える電磁誘導方式の専用ペンや、1,920×1,080ピクセルのワイドスクリーンHDディスプレイなどが特徴的だ。詳しいスペックは公式サイトで確認できるので、興味がある方はご覧いただきたい。

Surface Proのスペックなど詳細を語る日本マイクロソフトの横井伸好氏(写真左)。日本国内モデルはOffice Home & Business 2013をバンドルし、ストレージのSSD容量256GBモデルを用意

このように各国モデルと大差ないSurface Proだが、日本独自の特徴として横井氏は、Word、Excel、PowerPoint、OneNote、そしてOutlookからなる「Office Home & Business 2013」の標準搭載と、ストレージのSSD容量が256GBのモデルを用意したことを発表。参考価格は128GBモデルが99,800円、256GBモデルは119,800円(いずれも税込み)だが、想像以上に割安な価格設定であることに驚かされた。

もちろんOfficeのライセンスは自社製のため、価格に反映しないという見方もできるが、割安であることに変わりはない。実質的なライバルとなる各PCベンダーとの関係に対しては、「Windows全体を盛り上げ、OEMメーカーとの相乗効果を期待する」と横井氏は述べたが、「キーボードを同時購入すると、OEMメーカー製のPCとほぼ同等クラス」という気配りも忘れなかった。

Touch CoverおよびType CoverはWindows RTと共用可能。それ以外は基本的にSurface Pro専用アクセサリとなる

キャンペーン用キーボードを手にする同社業務執行役員クラウド&ソリューションビジネス統括本部長の藤本寛氏

アクセサリ類は、既に発売されているキーボード付きカバーの「Touch Cover」や「Type Cover」をそのまま使用できるが、それ以外はすべてSurface Pro専用。ただし、ACアダプタは48Wまで電力が拡大しているため、そのままSurface RTでも利用できるが、Surface RTのACアダプタは24Wのため、Surface Proでは使えない。バッテリ駆動時間は標準化された検証方法が存在せず、Windows 8 Proのソフトウェア面での改善で延長できた経緯もあるため、スペックとしては表記されていない。参考として、同社でSurface Proを実際に使った際の体験値としては、4時間程度の連続使用は可能だという。

6月7日からの発売に合わせて、国内のメジャーブランドであるBEAMS(ビームス)とBAROQUE Japan(バロックグループ)、およびSurface RT発売時に発表した「攻殻機動隊ARISE」との共同プロモーションとして、オリジナルのコラボレーションデザインキーボードが当たるキャンペーンを実施。Surface RTおよびSurface Pro購入者を対象に、独自のデザインが施された各色タッチカバーを100名にプレゼント。応募方法など詳しい説明はSurface Pro発売日から「Surfaceデザインキーボードプレゼントキャンペーンサイト」で行うという。

「Surfaceデザインキーボードプレゼントキャンペーンサイト」は既にオープン中だった

Windowsストアに大手ゲームメーカーが参入

同イベントでは、この他にもWindowsストアアプリが公開当初から6倍にまで増加したことをアピール。日本マイクロソフト Windows本部 業務執行役員 本部長の藤本恭史氏は、「我々は後発のため、アプリケーション数を競ってはいない」と述べつつも、既に2億5,000万本のWindowsストアアプリがダウンロードされ、のべ5億3,700万のユーザーが同ストアを訪れたことを発表した。

また、ユーザーからは「ゲーム」カテゴリの充実を求められているとし、2013年7月から大手ゲームメーカーであるコナミの参入を発表。同社の看板シューティングゲームである「グラディウス」や「ツインビー」、ニコリのパズルゲームがWindowsストアアプリに並ぶ。

Windowsストアアプリの成長をアピールする藤本氏。今年7月からコナミなどいくつかのゲームメーカーが参画するという

Windowsストアの充実もさることながら、過去からの膨大なWindowsソフトウェア資産を利用できるSurface Proの存在は大きい。販売チャンネルはSurface RTと同じく、大手量販店グループおよびMicrosoft Storeを利用するが、Surface ProはWindows 8 Pro搭載するため、ドメイン参加を前提としたビジネスシーンとの親和性も高いだろう。そのため、日本マイクロソフトは法人向け販売チャンネルも今後用意する予定だという。日本国内ではSurface RTから数えて3カ月弱の発売となるSurface Pro。スペックや利用シーンの幅広さを踏まえると、多くのユーザーが興味を抱くデバイスとなりそうだ。

会場に展示されたSurface Pro。実際に手にすることができたが、日本語化以外は米国モデルと同じだった

阿久津良和(Cactus