テレビが観られる「ワンセグ」機能を搭載したスマートフォン/タブレットは多い。このワンセグは、おサイフケータイや赤外線通信と並び日本の携帯電話ではおなじみの機能となっている。各社の2013年夏モデルでは、ワンセグに加えて、「フルセグ」を搭載したモデルも登場した。「フルセグって、どんな機能?」と疑問に思う読者も多いだろう。そこで本稿では前後編にわけて、フルセグとワンセグの違い、それぞれのメリット・デメリットを紹介する。

なお今回、2013年夏モデルとして、登場したフルセグ搭載スマートフォンは、NTTドコモの「AQUOS PAD SH-08E」「ARROWS NX F-06E」、ソフトバンクモバイルの「AQUOS PHONE Xx 206SH」「ARROWS A 202F」の4製品だ。

ドコモのAQUOS PAD SH-08E(左)とARROWS NX F-06E

ソフトバンクのAQUOS PHONE Xx 206SH(左)とARROWS A 202F

テレビと同じ高画質放送をスマートフォンで

まずは日本の"テレビ"についておさらいしておこう。従来のアナログ放送から地上デジタル放送(地デジ放送)への移行は2001年よりスタート。2012年にアナログ放送が全て停波し、デジタル放送への完全移行が完了した。この最中、2006年に地デジをベースにしたサービスとして登場したのがワンセグ放送だ。

日本の地デジ放送は、周波数帯域を50のチャンネルに分割しており、1つのチャンネルに6MHzの帯域幅が割り当てられている。この6MHz幅はさらに13のセグメントに分割されており、これを使ってテレビ放送が行われている。

地デジ放送では、12セグメントを束ねることでフルHD(正確には1,440×1,080ピクセル)の放送行っている(4セグメントを束ねてSD画質の放送も可能で、1つのチャンネルで3つの番組を同時に放送する、ということもできる)。

一方、残る1セグメントを使って放送を行っているのが「ワンセグ」(1セグ)だ。このワンセグは、移動端末向けの地デジ放送という位置づけで、1セグメントしか使わないため、解像度は320×240または180となる。

ワンセグ(左)とフルセグの映像。フルHDディスプレイのARROWS NX F-06Eのため、画質の差が大きい

この画像を拡大したところ。左がワンセグで、画質の差は明らか

主に携帯電話やカーナビなどモバイル端末向けとして利用されており、前述の通り多くのスマートフォンがワンセグ機能を搭載している。だがこのところ、スマートフォンの高解像度・大画面化にともない、320×240の解像度では画像が粗くなってしまう、という欠点が出てきている。

そこで、1,440×1,080の解像度で提供する12セグメントの地デジ放送を受信するスマートフォンの需要が出てきた。この12セグメントを使った放送を「フルセグ」という。

フルセグは、本来は据え置き型の家庭のテレビなどに対して行われる放送で、モバイル機器向けの放送ではない。いち早く大画面化、高解像度化したカーナビの世界では、すでにフルセグ視聴可能な製品も提供されているが、スマートフォン向けには今までなかった。 これは、日本の地デジ視聴では暗号化された放送を復号するためのB-CASが必要となるため。従来のB-CASは、クレジットカードサイズのカードを挿入する必要があり、このスペースがスマートフォンにはなかった。しかし、このB-CASが進化し、ソフトウェアベースのB-CASが提供されるようになったことで、スマートフォンでもフルセグが視聴できる環境が整った。

ちなみにこのフルセグという単語は、これまであまり使われてこなかった。ワンセグとの違いを明確にするためにフルセグという使われ方をすることが多いようだ。

*  *  *

前編では、フルセグとワンセグがどういう技術か紹介した。後編では、それぞれのメリット・デメリットについて説明していく。