2012年11月に公開され、その衝撃の内容に賛否両論が巻き起こった『悪の教典』。『鍵のかかった部屋』『新世界より』が相次いで映像化されるなど、今もっとも注目を集める作家・貴志祐介氏の原作を、圧倒的な映像力と繊細な演出で国内外のファンに衝撃を与え続ける奇才・三池崇史監督が映像化した本作は、興収23.4億、観客動員175万人を突破する大ヒットを記録した(2013年1月7日現在)。

三池崇史監督

『海猿』で海上保安官を演じる伊藤英明が、自らが築き上げたイメージをぶち壊すかのように、本作では最凶最悪のサイコキラー・蓮見聖司(ハスミン)を熱演。今作で日本アカデミー賞新人俳優賞をダブル受賞した二階堂ふみと染谷将太など、注目の若手俳優も多数出演するなど、非常に注目度の高い『悪の教典』が、2013年5月24日、Blu-ray/DVDとなってリリースされる。

そこで今回は、Blu-ray/DVDのリリースに先駆け、三池崇史監督にあらためて作品の魅力を振り返ってもらった。

三池崇史監督が語る『悪の教典』

――昨年11月に『悪の教典』が公開されましたが、その後どのような反応がありましたか?

三池崇史監督「久しぶりに『やったね』っていう感じですか。何となく何かが戻ってきたのか、とにかく死んでしまってなくてよかった、みたいな(笑)。海外からも連絡がありました」

――三池監督健在という感じでしょうか?

三池監督「そうですね。寝たふりしていたな、みたいな感じでした」

――監督ご自身でも作品を作っている段階から手ごたえは感じていましたか?

三池監督「とにかく居心地のいい現場でした。基本、バイオレンスの作品は愛情に満ちているわけじゃないですか。実際は誰も怪我しないし。女の子たちだって初めて弾着を付けたり……この作品がなければ、たぶんそんな経験はしなかったと思うんですよ。強烈な経験になるし、思い出にもなる。ドキドキしているのがわかるんだけど、撮影が始まったら、みんな上手くやってのけちゃう。映像では悲惨に死んでいって、すごく可哀想に見えるけど、本人たちは『OK! 上手くいった!』みたいな。お芝居が上手くいくのとはまた違った喜びがあるんですよ」

――通常のお芝居とは違った喜びですか?

三池監督「死ぬ瞬間のコンマ何秒、本当に1秒足らずのことなんだけど、役者としては非常にやりがいがある。死を演じるわけだからね。その瞬間にたくさんのものが込められているので、けっこう楽しい。そしてそれが、バイオレンスの怖さ、バイオレンス映画が存在することの根っこにある部分だと思うんですよ。観る側にとっても、恐怖というか怖さというか……死を予感する瞬間とか痛みは、誰もが経験することですから。バイオレンス好きというほどではないんですけど、撮っていると楽しくなるというか楽になっていきます」

――監督の求める死の演技とはどのようなものですか?

三池監督「できれば今まで見たような死に方じゃないように演じたい、そんな意思を持っている役者たちをキャスティングしたいと思っています。何とかだ! って言って、ガクッと死ぬようなことだけはやめてほしい。もう見飽きちゃっているから。たとえば染谷(将太)とか二階堂(ふみ)だったら、どこかで見たような、映画的というかテレビ的、お芝居的な死に方って放っておいても絶対にしないと思うんですよ。もうそれはギャグですよね。そういう意味では、自分の知っているものとは違うものにも挑戦できる場所だと思うし、互いの死に方に刺激を受けちゃったりしていましたね、『あいつ、すげえ死に方したな』みたいに(笑)」