「日テレ Go!Next60」という赤い文字の日本テレビのロゴ。見方によっては「日テレ」または「0テレ」とふたつの読み方ができるロゴですが、これはどちらなのでしょうか? また、どういった意味が込められているのでしょうか? ロゴのデザインを担当された、日本テレビ編成局宣伝部専門部長の布村順一さんにお話を伺いました。

日本テレビのロゴ

ロゴの赤は還暦の赤?

――現在、日本テレビで使用されているロゴについて、このデザインになった経緯を教えてください。

現在のロゴになった経緯ですが、まず日本テレビでは2008年に開局55周年として、55周年の「55」と「Go!Go!」をかけた「日テレ55」というキャンペーンを行いました。

――CMなどが話題になりましたね。

この「日テレ55」では「(青信号を意識して)青に染めてどんどん前に進んでいこう」という「ブルーキャンペーン」を行っていたので、ロゴの色も青色でした。実はこの頃からすでに「次の60周年の際は赤色にしたいな」と思っていました。60といえば還暦ですし、還暦といえば赤色ですから。

――確かに還暦を迎えると「赤いちゃんちゃんこ」を着ますもんね。

還暦とは、干支が一巡し、起算点となった年の干支に戻ることなのです。還暦の「赤」は、赤ん坊の「赤」に由来していて、だから還暦を迎えると「赤いちゃんちゃんこ」を着るんです。そして、この「還暦の赤」には「ここから新たな出発という意味」もあるんです。このようなことから、開局60年のロゴは赤色にしたいと考えるようになったんです。

――ロゴの色に関しては5年前からイメージされていたんですね。

そうなんです。そして、60年だから「ロックジュー!」のような、またダジャレのようなものでやればどうか? と考えて、上層部にプレゼンしたのですが、「同じようなことをするな」と言われまして……。色や数字が変わっただけの、いわゆるキープコンセプトでしたので、「普通だ」と評されたわけです。

――同じではいけない……と。

「会社として、開局60年を『第2の創業』と位置付け、新たなスタートを切る日テレの企業姿勢をどうアピールしていくのかを考えなくてはならない大事な年に、ダジャレでキャンペーンというのはどうか?」という駄目出しをいただいたわけです。「もっと新しいことを! 」とも言われ、それこそ「0から考え直せ! 」というくらいに……。

デザインのヒントは時計から

――「会社として大事な節目の時期にふさわしいキャンペーンを」という指示だったんですね。

こういった指摘を受けて「では、どうしようかな? 」と試行錯誤しました。50年だと、半世紀ということで「もう50年を考える」といった内容にはしやすいのですが、「60年経ったから、もう60年」というのはあまりピンとこなかったんです。当時は「企画として成立しないんじゃないか」とまで考えるようになっていました(笑)。

――普通に考えると数字として中途半端ですもんね(笑)。

でも、あるとき「そういえば、テレビって時計のような役割もあるな」とふと思ったんです。いつも見ているテレビ番組が放送されていることで、今が何時ごろか自然に分かったりとか、朝の情報番組の時間帯には、常時画面に時刻が表示されていたりとか。

――それはありますね。「笑点が始まると17時30分」だなんて思いますよね。

そして「テレビは時計なんだ……」と思った瞬間に「60って60進法だと0に戻るじゃないか」と気付いたんです。そう考えると、「60年目を迎え、ここからもう一度次の60年を考える」といった考えにもぴったり当てはまります。

――中途半端だと思っていた60という数字が、綺麗にはまったというわけですね。

そうなんです。それを踏まえ「60」を「0」にした「0テレ」というデザインにしました。これには先程お話したように「0から次の60年を考える、0からもう一度始める」といった意味が込められています。

――ロゴの「0」にはそういった意味が込められていたのですね。ではこの「0」は日テレの「日」ではなく数字の「0」ということでいいのでしょうか?

数字の0ですが、日テレの「日」にも見えなくもないので、これは「そう読ませちゃえ!」ということなんです。今までも「日テレ」と呼んでいただいていますので、「0テレ」でも「日テレ」でも大丈夫です。

シンプルに意味が伝わりやすいように……

――「0から始めよう」といった意味が込められているロゴですが、これ以外にこだわった点はどこでしょうか?

デザインに込められた意味がダイレクトに伝わるよう、余計な味付けはしませんでした。画面に映し出される際に、どんなサイズでもしっかりとロゴが分かるように、太さなどにも気を使って、パッと見でもすぐ分かるという点を大事にしました。

――料理でいうところの、余計なことをせず、素材の味を活かすみたいな感じですね。今回のロゴはいつから使われているのですか?

開局60年ということで、2013年1月1日から使用しています。

――ロゴのアートディレクションについてですが、布村さんがすべて行ったのですか?

アートディレクションについては、博報堂のクリエイター3人と、日本テレビ宣伝部の私を含めた3人の計6人からなるチームで取り組みました。

――これまでそういったチームでデザインやキャンペーンを行うことはあったのですか?

チームで進めることはこれまであまりなかったのですが、「新しいことをやれ」ということでしたので、制作体制も新しい形でやってみることにしました。

――なるほど。こうした新たなチャレンジによって現在の日本テレビのロゴが生み出されたのですね。

私たちだけでなく、会社自体がチャレンジしているといいますか、社をあげて「0から考え直す」タイミングでもあるので、そういった会社全体の意思も込められたロゴになっています。日本テレビは、開局60年を機に、 「0からベース」で、各所でさまざまなことに取り組んでいます。今後の展開にもご期待いただきたいと思います。

――ありがとうございました。

見た目は非常にシンプルな日本テレビのロゴですが、込められた意味は「日本初の民放テレビが紡いできた60年、そしてこれから紡いでいく60年」という大きなものでした。CMやカラー放送など、さまざまな「テレビの初めて」を行ってきた日本テレビ。開局60年の今年、どんな展開を見せてくれるのか、これからも楽しみですね。

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(貫井康徳@dcp)