5人のプロ将棋棋士がコンピュータ将棋ソフトと団体戦で戦う「第2回将棋電王戦」がプロ棋士1勝3敗1分という結果で20日に幕を閉じ、最終戦・第五局の終局後に東京・千駄ヶ谷の将棋会館にて全体記者会見が行われた。

会見には、日本将棋連盟会長・谷川浩司九段、「第2回将棋電王戦」主催のドワンゴ・川上量生会長、コンピュータ将棋協会会長・瀧澤武信氏に加え、「第2回将棋電王戦」で対局を終えた5名のプロ棋士と、5名のコンピュータ将棋開発者が出席。3月23日~4月20日と約1カ月にわたった激闘を振り返るとともに、それぞれの想いや今後の展望について語った。

谷川浩司九段:「今回の結果は、プロ棋士にとって厳しい現実をつきつけられましたが、5名のプロ棋士はきっちりと準備・研究をして、全力を出し切ったと思います。今日の三浦八段の姿を見ると心が痛みますが、決して責任を感じることなく胸を張って欲しい。若いプロ棋士は(電王戦の経験を)プラスに繋げて欲しいと思います」

左から三浦弘行 八段、塚田泰明 九段、船江恒平 五段、佐藤慎一 四段、阿部光瑠 四段

谷川浩司九段:「5対5の団体戦ということで、勝負に重きが置かれるかと最初は思っていましたが、5局すべてにドラマがありました。私自身、特に印象に残ったのは第三局であり、通常は形勢が苦しくなると心が折れてしまう。しかし、苦しくなっても、読み筋に穴が開いても、現時点での最善手を追求していく――コンピュータにとっては自然なことかもしれませんが、なかなか人間には難しい。精神力の重要性をコンピュータに教わるとは思ってもいなかった。電王戦を通じて、人間、コンピュータそれぞれの長所と短所が明らかとなり、今後に繋げていきたい。コンピュータと人間は共存共栄。将棋を通じて人工知能の進歩・発展に繋げ、広くは医療や災害救助の現場に活かしていただければと思っております」

瀧澤武信氏:「私は1974年に初めて将棋のプログラムを作り始めましたが、こんなにも早くプロ棋士の方々と対局ができる日が訪れ、中には勝つような結果が得られるとは思っておりませんでした。このスピードには驚いています。アマチュアでは、今の将棋プログラムがどれくらい強いのかもうわからない。それが解明できる機会でもあり、深く感謝しています。コンピュータは悪手も指しますが、その悪手はアマチュアではとがめることができない。それをプロ棋士にとがめていただき、コンピュータ将棋のさらなる進歩につながっていきます。そして何より、とても感動しました。どの対局も人間ドラマがあり、一番はすべてが素晴らしい対局であったことです」

左から竹内章氏、山本一成氏、一丸貴則氏、伊藤英紀氏、金子知適氏

川上量生会長:「電王戦のような将棋の歴史の中での重要なイベントを、ドワンゴのような歴史のない会社が行うことは、大変おこがましいことだと思っています。ただ、主催させていただいた以上、できる限りのことをして盛り上げようと努力してきました。ビジネスとしての部分ももちろんありますが、将棋の発展に寄与したいという気持ちが80%は占めている。今回のコンピュータと人間の戦いには、勝敗だけでなく、そこには人間ドラマがあったと思います」……続きを読む(プロ棋士、コンピュータ将棋開発者コメント)