説明書を読まなくても使い方がわかるのが、iPhoneの魅力であり強みです。しかし、知っているつもりが正しく理解していないこともあるはず。このコーナーでは、そんな「いまさら聞けないiPhoneのなぜ」をわかりやすく解説します。今回は、「なぜiPhoneには赤外線通信機能がないの?」という質問に答えます。

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歴代のiPhoneには、赤外線通信機能がありません。赤外線を送受信する装置(IrDAポート)が装備されていないため、赤外線通信をうたうアプリを導入しても無意味です。そういったアプリは別売の赤外線通信アダプタ用ですから、単体でインストールしたところで肝心の赤外線がありません。

なぜiPhoneに赤外線通信機能が搭載されなかったかですが、多くの国ではあまり需要がなかったから、ということが最大の理由でしょう。ではなぜ需要がなかったかというと、それは「海外ではメッセージのやり取りがSMS主流だった」ということに尽きます。

ここ日本では、「iモードメール」など携帯メールサービスが独自の発展を遂げました。絵文字を使用できる、写真を添付できるといった機能が消費者にうけたためで、そういった機能がないSMSはあまり利用されませんでした。

SMSの場合、電話番号がわかればメールの宛先が(もちろん音声通話も)判明します。だから、アドレス交換したい相手へ俗にいう「ワン切り」を行い、履歴に残った番号を登録してもらえばいいのです。端末同士を近づけなければならない赤外線通信を、わざわざ行う必要がありません。絵文字も写真の添付(写メ)もできませんが、そのシンプルさが海外では支持されました。

一方、日本の携帯メールサービスでは、携帯電話番号だけではメールの宛先がわかりません。iモードメールを例にすると、サービス開始当初は「携帯電話番号@docomo.ne.jp」でしたが、迷惑メール対策もあり任意の文字列を利用できるようになりました。文字列が長くなると口頭で伝えることが難しくなり、誤配信などのトラブルを避けるため、名前や住所などその他の個人情報も含めて赤外線で送信する、という機能が重宝されるようになったのです。

海外では赤外線通信機能があまり必要とされず、次第に省略されるようになりました。Android端末でも、赤外線対応機はあまり見かけません。世界共通モデルが前提のiPhoneに関していえば、今後も赤外線通信に対応する可能性は極めて低いといえるでしょう。

写真で解説

電話番号がメールアドレス代わりになるSMSは、そのシンプルさゆえに海外ではメッセージのやり取りの主流になりました。赤外線通信機能が必要とされなかった理由の一因でもあります