『Shall we ダンス?』(1996年)で日本アカデミー賞全部門を制覇し、『それでもボクはやってない』(2007年)では主要映画賞30冠を達成するなど、日本を代表する映画監督として名高い周防正行氏の話題作『終の信託』(2012年)がBlu-ray/DVDとなって、2013年4月19日にリリースされる。

『終の信託』のBlu-ray/DVDは4/19の発売

医療か殺人か……。終末医療の現場で起こる生死を巡る問題の数々。知られざる検事室での聴取。数奇な運命に翻弄される女医……。現役弁護士である朔立木氏の同名小説を原作に、周防監督が大胆に脚本化した本作。『Shall we ダンス?』以来、16年ぶりの共演となる草刈民代と役所広司のほか、浅野忠信、大沢たかおらが出演し、愛、そして命の重さを描き出す。

そこで今回は、Blu-ray/DVDの発売を前に、作品の魅力や注目ポイントについて、周防監督があらためて語ったメッセージを紹介しよう。

周防正行監督が語る『終の信託』

――昨年10月に公開された『終の信託』ですが周りからの反応はいかがでしたか?

周防正行監督

周防正行監督「観てくれた方には深くいろいろな問題を投げかけられたと思うんですけど、映画館に足を向けてくれる人が少ない映画で(笑)。すごく重い印象を持たれるのが嫌で、公開前にはあまり重くないですよみたいな言い方をしていたんですけど、実際のところやはり重い映画なので、その重さをきちんと感じてくださいと言うべきだったかなと思っています」

――重さをわかった上で観てほしかったわけですか?

周防監督「僕自身、最近は地味だけれども大人がじっくり観られるタイプの作品に魅かれていたこともあるので、こういう世の中だからこそ、きちんと向き合える映画、じっくりとがっぷり四つに組んで観られる映画を作りたいという思いがあり、そういった作品を作ったんだから、ちゃんとそう言えば良かったかなって今にして思います。実際に観ていただいた方からの反応は、この映画が好きという人も嫌いという人も、かなり深いところでいろいろと話してくれている印象があります。特に医療関係者の方が応援してくださった。最初、反発を受けるんじゃないかと思っていたのですが、共感してくださる医療関係者の方が多かったのが一番うれしかったですね」

――やはり医療現場からの反応は気になりましたか?

周防監督「そうですね。医療現場からは、この問題に向き合ってくれて本当にありがたい、というお話をいただき、医療雑誌の取材やお医者さんとの対談などもけっこうありました。医療関係者がどういう反応をするかは、一般の観客の方以上に気になっていました。だって、僕は患者の立場では部外者ではないけれど、これは先生の視点からの映画ですから。お医者さんや看護士さんはどう思うんだろうっていうのはすごく気になりました。海堂尊さんと公開の場で討論したとき、やはり医療現場に司法は介入してほしくないとおっしゃっておられたし、それは僕もちょっと感じていたところだったので、この映画が伝えようとしたことはわかってもらえたかなって思います。ただ、逆に言うと、映画を楽しむという意味では、テーマが重すぎる印象があったかもしれない。でも、その重さこそがこの映画の魅力なので、そのあたりをきちんと言っておけばよかったなと思います」

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