【レポート】

2013年SICE制御部門パイオニア技術賞を受賞したJMAABという組織

やや旧聞となるが、2013年3月に公益社団法人 計測自動制御学会(The Society of Instrument and Control Engineers:SICE)制御部門の2013年パイオニア技術賞を、JMAAB(Japan MBD Automotive Advisory Board)が受賞した(注:リンク先はpdf)。このパイオニア賞の授賞式は3月5日~8日に福岡で開催された、「第13回制御部門大会」の中で行われ、JMAABのボードメンバーと事務局が代表して受賞式に参加された(Photo01)。

Photo01:授賞式に参加したボードメンバー。右から大畠明氏(トヨタ自動車)、山田元美氏(三菱電機)、久保孝行氏(アイシンAW)、迫田茂穂(ヤマハ発動機)の4氏。左端は今回お話を伺った事務局の飯野浩道氏である

と、ここまで書いたところで殆どの読者からすれば「?」マークが多数浮かぶであろうことは間違いない。今回の本題はJMAABという組織をご紹介することであるが、まずは順を追って説明したい。

まずSICEであるが、こちらは純然たる日本の社団法人である。前身となるのは1947年に発足した自動制御懇話会と1950年に発足した社団法人 日本計測学会であり、この2つが合併して1962年1月1日より計測自動制御学会になった。すでに設立から50年を超えており、2011年には「創立50周年記念式典」も行われている。SICEは、さらにその下に計測/制御/システム・情報/システムインテグレーション/産業応用/ライフエンジニアリングといった部門に分かれ、それぞれが活動を行っている。今回はこの中の制御部門が主催する部門賞の中で、本来は「今後の発展に大きく寄与すると期待される新規性の高い研究業績をあげた若手の研究者・技術者個人」に贈呈されるはずのパイオニア賞を、個人ではなくJMAABという組織が受賞したことで、非常に話題になった。

さて、そのJMAABとは何か?である。現在のJMAABは"Japan MBD Automotive Advisory Board"の略であるが、実は2011年までは"Japan MATLAB Automotive Advisory Board"の略である。そして頭にJが付く事からも判るとおり、実はJが付かないMAAB(Matlab Automotive Advisory Board)という組織が世界的に存在しており、これの日本版がJMAABということになる。このJMBBAについてもう少し細かい話を、事務局を運営されているMathWorks Japanの飯野浩道氏(Photo02)に伺った。

Photo02:Mathworks Japanのインダストリーマーケティング部シニアマーケティングスペシャリスト兼JMAAB事務局の飯野浩道氏

具体的なJMAABの活動は?というと、自動車業界では、10年以上前からMATLAB/Simulinkを使ってのモデルベース開発に早くからチャレンジしていたが、何分にもまだ定着していない分野だけに判らない事も多く、また自社のみの開発では色々限界があったようだ。そんな折、JMAABのボードメンバーの一人でもあるトヨタ自動車の大畠明氏がたまたまUSのNA-MAAB(North America MAAB)に参加し、帰国後に関係者に声を掛けたことで2001年にJMAABがスタートした(Photo03)という。当時はまだMathworks Japanが存在しておらず、日本ではサイバネットが代理店をしていた関係で、当時サイバネットに在籍していた飯野氏がそのまま事務局を勤め、その後Mathworks Japanの設立にあわせて飯野氏もMathworks Japanに移籍、引き続き事務局を勤めているという。

Photo03:これは「JMAAB活動10周年! その足跡と新たなる挑戦」という、本田技術研究所の嶋田敏氏によるJMAAB Open Conference 2011におけるプレゼンテーションより抜粋。まぁ最初はこんなところから始まるのだろう

さて話は前後するが、この団体はJMAAB、発音としては「ジェイマーブ」となる(Photo04)。基本としては自動車メーカーと、ここの1st Tier、つまり直接ECUを自動車メーカーに納めているベンダーがターゲットとなる。目的はMBDの普及であり、当初からスローガンとして「開発環境構築は協調し、競争は製品で」を掲げてきたそうである。

Photo04:後述するが、MBDを進めてゆくと、MALTAB/Simulinkだけで留まらなくなってくることから、あえてMATLABをMBDにしたのだとか

もっとも当初は「協調」といっても中々難しかったそうで、「ピリピリ感は強かった」(飯野氏)ため、これをいかにうまく納めてゆくかで事務局としても苦労されたとか。この雰囲気が変わってくるのは、WG(Working Group)が発足してかららしい。WGの場合、特定の内容に絞り込んだ上で徹底的に議論するという形になるので、そこの参加メンバーの知識レベルも必然的に揃ってくることになり、こうなると例えば知識レベルの差に起因する議論の発散とか険悪な雰囲気は起こり難くなるからということだそうだ。結果、今では例えば日産のメンバーとトヨタのメンバーが隣り合い、MBDについて喧々諤々の議論を行い、そこにサプライヤーからのメンバーも加わって一緒に議論することが普通だという。面白いのは、ここで自動車メーカーだから立場が上とかサプライヤーだから立場が下ということは一切無く、そのWGのテーマに関しては完全に同一の立場で議論するという。また後述するが、ここにMathworksのエンジニアも、ObserverというよりもMemberとしてやはり参加されるのだそうだ。

Photo05:この第4回JMAABから飯野氏も参加された模様

そのJMAABの現在の構成はこんな感じ(Photo06)。ボードメンバーは運営に責任を持ち、コア会議で候補者を募集する形になっている。次がコアメンバーで、WGでの貢献が求められており、基本はInvitationなり推薦なりが必要な形になっている。基本的にはコアメンバーはあくまでも自動車業界ということで、自動車メーカーや、ここにECUなどを入れているサプライヤーということになり、他のTool-chainのメーカーなどは入っていない。Photo06から判るとおり、国内の主要な自動車メーカーのほとんどは網羅されている。ただ、メンバーが多くなりすぎると、ディスカッションが発散してしまう事をボードメンバーとしては恐れているそうだ。実際WGでは定期的に会合を開く事になるが、その際にメンバーが多いとスケジュール調整も難しくなってしまうといった事もあるとか。そうした事もあり、コアメンバーに参加するためには、基本的にはボードメンバーからの推薦を必要とする形になるそうだ。

Photo06:現在、日本の自動車メーカーとしてはダイハツと日野自動車以外はすべて参加されているとか。事務局としてはダイハツと日野自動車にもInvitationは送っているそうである

また韓国の現代自動車の名前もあるが、これは現代自動車もやはりMBDを手がけるにあたってこうした協調を行いたいと思ったものの、現実問題として韓国には現代自動車グループしか自動車メーカーがないので、KMAABの様なものは作りにくいというか、一社で完結してしまう。そんな折にMathworks Koreaが現代自動車にJMAABの情報を説明したそうで、その結果としてJMAABに参加することになったそうだ。ちなみにもう少しアジア地区のメンバーが増えれば、AMMAB(ASIAN-MAAB)といった事も可能で、潜在的にはインドや中国、インドネシア、マレーシアなどの参加もありえるのだろうが、現実問題として今のところは日本+現代自動車のみという形になっているとする。

さて、この2つに加えて一般メンバーという項目があるが、これは要するにJMAABのWebサイト(Photo07)にログイン登録を行ったユーザーの数だそうである。実はこのサイトの管理も飯野氏の作業で、今は手作業で登録されているとか。このサイト自体も、ユーザー登録をしないとWGの成果物とかOpen Conferenceの資料などにアクセスできないちょっと不便な構造(何でもJMAABの立ち上げ時期に作った構造そのままだそうだ)なので、見直しを考えているそうである。流石に「今さらIDとPassword管理ってどうよ?」という話は出ているらしく、トップページから公開している資料類をログインせずに取得でき、コアメンバー以上はID/Passでメンバーページに入る様な構造にする事を考えているらしい。

Photo07:ログイン画面では若干のリリースがおかれているだけで、ほとんどの資料はログインした先にある

それはさておき、そんな訳でJMAABの諸々の資料にアクセスするためには現状IDを取得する必要があり、このIDを取得した人をすべて一般メンバーという形で数えているそうだ。この一般メンバーには参加要件などは特になく、基本的には申請すれば誰でもIDを取得できる形になっているが、コアメンバー会議などには参加できないことになっている。

この会員数、2011年の段階では500社、2100名余(Photo08)、現在は2500名にまでなっているが「退会という仕組みは特に用意していないので、Active Memberがこのうちどの程度かは全然わからない」そうである。またメンバー登録時の企業からプロファイリングすると、一番多いのは自動車メーカーであるが、それ以外の企業とか、あるいはツールベンダーなどの参加、それと学生なども少なくないらしい(Photo09)。

Photo08:これも2011年の嶋田氏の資料より。基本的にはOpen Conferenceがあるたびにググっと人数が伸びる傾向を示しているそうだ

Photo09:この比率は、例えば電機メーカーは当初からそれなりに居たそうで、大きく変わっているわけではない模様

MBD自体は決してMathworksの専売特許ではなく、他社からもMBDのツール類は出ているわけで、Mathworksから見ればある意味商売敵ではあるのだが、Mathworksの製品フィロソフィとしては、特定のベンダーと深く協業するというよりは、広く間口を用意してあとはお客さんにお任せという形になっており、競合メーカーであっても必ずしも排除したりはしないということだった。穿った見方をすると、まだMBDは広く普及しているとは言いがたい状況なので、Mathworks一社でお客の囲いこみをするより、複数のベンダーから様々なツールが出て、そうした組み合わせによりMBDの裾野が広がるほうがマーケットの拡大に効果的ともいえるし、そうした状況ではむしろオープンに資料などを公開したほうが良いと判断したのかもしれない。

そのOpen Conference、2年に1回開催を行っており(Photo10,11)、2013年も7月4日に品川カンファレンスセンターを使っての終日イベントを行う事がすでに決定している。内容は過去2年のWGの活動報告、それとコアメンバーの中からプレゼンテーションをお願いしているという。ほかに、関連メーカーによる展示も予定されているそうだ。ちなみに今年のOpen Conferenceであるが、流石に10年もWGを続けていると、WGの内容がどんどん上級者向けになってきており、MBDをこれから始めたいといった人には「?」な内容になってしまってきている傾向が見えてきたとの事で、今年に関しては午後のセッションを2つに分け、1つは従来通りのWGの報告を行うとして、もう1つはMBD初心者向けトラックを用意することを企画しているとの話であった。そもそも何で2年おきか、というと最近はWGの内容が深くなってきており、1年程度では成果が出ない事があり、このためにも2年程度の期間が必要なほか、昔はそもそもサイバネットの予算の問題もあって毎年開催は難しいといった事もあったらしい。

Photo10:主催はあくまでJMAABで、後援がMathWorks Japanという立場。これについては後述

Photo11:これは2009年の模様

お金の話が出てきたところで少し予算的な話を。先にEU-MAABとかNA-MAABといった組織があることをご紹介したが、JMAABはこうした組織の下部団体という訳ではなく、MathWorks Japanが後援する形での独立した組織として活動している。JMAABとしては会費などはとっておらず、基本的には参加者の手弁当で賄う形になっている。ただ、WGなどをする場合には、当然会議室なり何なりといった場所の確保が必要であり、特にWGは平均して年間7~8つが活動しており、この結果毎月2~3回はどこかのWGが会合を開く事になるため、こうした会議場所の提供はMathWorks Japanが行っているとの事。もっともそこまでの交通費や、場合によっては宿泊費用などは当然各メンバーの自腹というか、各メンバーの活動をそれぞれの会社が認知した上で、交通費などを支給してもらう形になっている。一方Open Conferenceに関しては、これはMathWorks Japanが500人規模のConferenceを開くための予算をきちんと計上しているとの事だ。

こうした予算をとってまでするメリットは? ということになるが、MathWoks Japanにとっては、JMAABというメンバーにきちんとMathWorks製品を使ってもらい、要望などの声を上げて貰うのという点で非常に重要な位置づけとなっている。元々MathWorksは顧客の声を吸い上げる事を重視する、というポリシーを持っており、1年に何度も開発者が顧客と話をする機会を設けているそうである。「普通の会社は開発陣がお客様のところに行く事はないと思うのですが、弊社では非常によくあります」との事である。ところが、MathWorksとしてもユーザー一人ひとりの意見を全部聞いていたら、とてもではないが作業が追いつかないし、顧客と会ってばかりいたら開発も進まない。ところがJMAABの様な組織があって、そこにMathWorksのエンジニアも加わって議論する、という機会は同社にとっても顧客の深いニーズを集中的に聞ける良い機会である。この結果としてJMAABから上がってくる要求とは、日本の自動車業界の声であるとすでに本国からも認識されている。またWGでの議論にはMathWorksのエンジニアも混じっているので、通常よりも吟味された要求だと認識されているそうで、結果としてJMAABからの要求に対する扱いは、通常の顧客からのニーズより高いPriorityで扱われる事になるのだとする。

同様にOpen Confenceについても、MathWorksの潜在的な顧客を500名規模で集めるイベントと考えられる訳で、また自動車業界はMBDがもっとも普及している分野であるから、当然他の分野でMBDを考えている開発者が参考にするために参加することが期待できる。これはMathWorksにとって、潜在顧客を増やすためには費用対効果の高いイベントと考えられるからだ。

ではメーカーの側からのメリットは? といえば、MBDを早くものにすると共に、足りない機能の要求をMathWorksに出す際にも、顧客単独の声よりもJMAABとしての声の方が通りやすいという点が挙げられよう。またWG活動を通して、MBDを習得したエンジニアを増やせるといったメリットも挙げられる。

もっともこうした形で盛んなのは、実はJMAABだけといった状況だそうだ。先にNA-MAABとEU-MAABがあるという話をしたが(Photo12)、どちらも縮小傾向にあり、現在動いているWGで言うとNA-MAABが1つだけ、EU-MAABは0だそうである。そのNA-MAABについても、現在あるのはGuideline WGといって、Simulinkのガイドラインを作るWGである。ただすでにガイドラインそのものは存在しており、単にこれの見直しをするだけのWGだそうだ。

Photo12:NA-MAABもEU-MAABもそれなりの規模の会社が入っている割に、やはり数年で活動が下火になってきてしまったのだそうで

なんでWGのトピックが出てこないのか? という議論を飯野氏も何度か本国の担当者となさったそうだが、結論として出てきたのは「カルチャーの違いでは?」ということらしい。曰く「日本は隣が何をしているか非常に気にする文化なので、例えば隣の会社がMBDをどう使って何をやってるか、知らないと不安でしょうがない。これに対して北米やヨーロッパは独立独歩で、他人のやってる事を気にしないので、そういう土壌が育たないんじゃないのか?」という、半分笑い話の結論に落ち着いたそうだ。もう1つ理由を挙げるとすれば、北米は自動車業界全体の不調で、MAABの活動に割ける余力が無くなりつつあること。一方ヨーロッパの自動車業界の場合、何だかんだと言ってBOSCHの支配力が半端ではないのだが、EU-MAABには同社も名を連ねているにも関わらず、EU-MAABで「お会いしたことはない」そうで、案外このあたりが理由なのかもしれない。

さて、話を再びJMAABに戻す。Photo13はJMAABにおけるWGの代表的なものを、V字型開発の図式に当てはめたものである。WG自体は全部で40くらいあり、原則として1つのWGは1年で完了する。氏によれば、最初の5年間は、図で言うとV字の左側にあたる部分、つまり仕様を策定して開発を始めるところに関係したWGが多かった。ところが最近はむしろ図の右側、つまり検証の段階に関するWGが増えつつあり、またV字開発に乗らないWGも増えてきたとしている。これは要するに「どう開発を行うか」から「どう検証するか」「どうシステムモデルを作るのか」といった、より高いレベルに移行しつつあるということだそうだ。この結果として、これまでとは違ったWGがあるという。

Photo13:最近では環境整備向けのWGが増えてきているとする。これも詳しくは後述

例えばMBDの場合モデルといえばSimulinkにおけるモデルになるわけだが、このモデルをどの位の抽象度で作りこむか、あるいは「このステージでこの抽象度は必要か」という議論があるという。ミーティングにおいても、「抽象度の高いモデル・低いモデル」という言い方はよく出てくるそうだ。要するにステージごとに必要な抽象度のレベルは違うはずなので、「1つのモデルで上流から下流までと」とは言うものの、実際にはディテールは異なるはずだ、という議論は良く出てくるのだそうだ。もちろん最初から緻密なモデルは作れないから、当初は当然ざっくりとしたモデルになる。ただ量産に入って、最終的にモデルをMCUなどに入れ込んでゆくステージになると、現実的なコードサイズに抑える必要があるかので、どこかでモデルを作りこんで、精度をきちんとそれなりのものにする必要がある。こうした、いわゆる「V字開発」のもう一段上の議論であるとか、最近はエレメカ連携などの話も多いという。エレメカというのは、CADとかPLMの話である。従来だと自動車会社はCADで作ったモデルをどう管理するかということでPLMを導入しているが、最近ではSimulinkで作った制御モデルもかなり大規模になっており、こちらもCADモデル同様に管理する必要がある。そこでシーメンスPLMソフトウェアのTeamcenterとかPTCのIntegrityといったPLMとの連携という話が出て来るそうで、実際飯野氏も、こうしたPLM関連ベンダーとお会いする頻度がここ1~2年で猛烈に増えたとの事。JMAABも当然これをターゲットにしており、昨年か一昨年にこうしたWGをすでに設けているという。

こうした取り組みの結果として、JMAABはすでにMATLAB/Simulinkだけをターゲットにするのではなく、むしろMATLAB/Simulinkを核にしたツールチェーン全体を整備しないとMBDは実現できないという方向に意識が変わってきたそうだ。冒頭にJMAABの"M"が昨年"MATLAB"から"MBD"に変わったのも、こうした事を意識して、との事。ちなみにMathworks的にそれはアリなのか? と伺ったところ流石に本国からクレームはついたらしい。ただ、事務局からこうした事をしっかりと説明したところ、「Simulinkを核にしてくれる限り問題ない」ということでOKとなったそうだ。

さてそのJMAABが近年力を入れているもう1つの項目が人材育成であるという。Photo13をみても、エンジニア育成WGとか教本WGといったものが見られるが、こうした形でMBDを扱える人材をもっと増やそう、という活動も積極的におこなっており(Photo14)、その成果物の1つがETSS-JMAABである。これはMBDに必要な知識を、ETSS(組み込みスキル標準に準拠する形でまとめたものである。こうした活動が認められたことで、SECからソフトウェアエンジニアリングベストプラクティス賞を受賞したりしている(Photo16)。

Photo14:これは2008年に置きなわれた"JMBBA説明会 in 仙台"における三菱電機の山田元美氏のプレゼンテーションより抜粋

Photo15:これらの資料は全部JMAABの会員ページから入手可能

Photo16:この時は、合計8企業・団体が受賞している。主な受賞内容は「SECが策定した組込みスキル標準(ETSS)を活用して、自動車業界におけるモデルベース開発(MBD)エンジニアに必要なスキルを明確化・体系化し、MBDエンジニアのスキル標準を作成した。その成果をJMAAB内で普及・浸透させるとともに、Webサイトでその内容を公開し、業界内での利用を促進している」との事

ということでやっと冒頭の話に戻る。実は今回SICEの受賞にあたっては、この人材育成に対する貢献が認められたとしている(Photo17・18)。主要な理由はもちろんMBDを広めようということで、そうした技術確立の内容が評価され事であるが、人材育成への貢献と品質向上に対しての貢献、それと企業間の壁を取り払った事も評価された。この最後に関しては、先にもちょっと触れたが、いかにギスギスした感じを取り除くかに飯野氏も随分苦労されたそうで、それが外部から評価されたことを大変に嬉しく思っているとの事であった。またこのSICEの各賞は、SICEの会員からの推薦を受けて内部で評価を行った結果決まるものであるが、2013年度に関しても複数の候補があり、内部で選考の結果としてJMAABの受賞が決まったという話であった。

Photo17:こちらは推薦理由。ETSS-JMAABの活動などが評価された

Photo18:こちらは受賞理由。この2番目は、特に事務局が心を配った部分だという

今後の話について。JMAABでも次の10年はどうする? という話は出たものの、まだ結論は出ていないという話であった、ただどちらかというと、人をちゃんと育てたいという思いが強くなってきたか。また環境整備に着目しており、またモデルベースコンカレントとかシステム単位のモデルをつくろうといった話も出ているそうだ。この人材育成に関しては、JMAABのメンバーは、それぞれの会社内でのMBD推進担当でもあるわけで、こうした人々がそれぞれMBDを広めてゆくと共に、JMAABとしてはそうした事に役立つガイドラインをちゃんと作ってゆく事を行っていきたいとしていた。具体的には、初心者の方に呼んでもらえばちゃんと判ってもらえるような書籍を作る事を現在検討中とか。

別な話としては、SIPAとかIPA、自動車技術会といった他の団体との協調が非常に増えているとの事で、こうした方向をさらにすすめてゆきたいという話であった。またJMAABとしては、広く成果物を共有して、多くの人にMBDを広めたいと考えており、なのでOpen Conferenceへの参加やJMAABのページに置かれた資料に多くの人がアクセスされる事を望んでいる、というのが飯野氏のお話であった。

最後にJMAABを外れてもう少しMathworks寄りの話を。こうしたユーザーグループは、Mathwoksにとっては「顧客のニーズとか使い方を教えてもらう場」という位置づけにある。なのであるが、今のところこうしたユーザーグループは自動車業界のみ。昨年、電機/半導体向けにMAB(Mathworks Advisory Board)をスタートしたが、今は数名のお客様を招待して本国の開発者と話をしてもらったり、信号処理/画像処理の製品に対するアドバイスを戴いたり、という程度だという。なぜ自動車業界の普及が進み、電機/半導体業界で進まないかという理由の1つは開発期間だという。自動車業界の場合、製品の開発期間は長いものだと4~5年に達するのに対し電機業界とかだと、例えば携帯電話などは半年のオーダーである。その半年という短い期間でMBDを習得してMBDベースで開発、というのはなかなか難しいという話だった。ただMATLAB/SimulinkもR2012aで半導体との連携強化がスタートしており、R2012bではEditorやUIも変わった。特にR2012bではMCU向けのNative Codeを吐き出せる様になるなど機能強化もしているので、今後はもう少し強化してゆきたいとのことであった。



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