だが現時点で関係サプライヤらが生産量を増やしはじめ、Foxconnなどのアセンブリメーカーが具体的な動きを見せている様子もなく、直近のタイミングでiPhoneが発売されるとは考えにくい。サプライヤが本格的に動き始めてからFoxconnでの大量生産が始まるまで3ヶ月程度のリードタイムは必要となるため、原稿執筆時点でこうした話が出てこない以上、製造量にもよるが、少なくとも6月中の製品発売は難しいと考えられる。現時点で最速は7月、状況次第では例年通り9月以降になる可能性が高くなりつつある。

Gizmoratiの日付で1つ疑問なのは、スペシャルイベントの日程が6月29日の「土曜日」に設定されていることだ。これだと発売日が土曜ということになるが、こうした発売日を金曜日に設定して週末3日間でセールスを比較的に伸ばす戦略を採るAppleが、わざわざ土曜日に設定する可能性は考えにくい。しかも土曜日にスペシャルイベントを開催してメディアを招集した場合、もちろん記者は集まったとしても、肝心の媒体各社が週末モードで休みに入ってしまっているため、せっかくの露出機会を逃す結果となる。その意味では、Mac Fanの6月20日発表(こちらは「木曜日」)、実際の発売はそれ以降のいずれか……というほうが現実的だ。

iPhoneに関してもう1つ気になるのは、次期iPhoneのタイミングで発表されるとみられる「iOS 7」だ。例年であれば、新端末発売3ヶ月ほど前にiOS新バージョンの概要が発表されて開発者向け一般ベータ版配布が始まり、アプリの対応や検証を促すのが恒例となっている。以前までの6月iPhone発売サイクルのときには3月にiOS新バージョンのプレビューイベントが実施され、iPhone発売が9月以降にずれてからは6月のWWDCでiOSプレビューが行われている。少なくとも現時点でiOSプレビューが行われていないということは、6月に新OSを搭載した次期iPhone登場の可能性は低いということだ。

以上を検討すると、6月中の製品発表があったとしても、実際の発売は7月以降にずれ込む可能性が高い。また具体的な大量生産に向けた動きが鈍いことを考えると、7月発売という線も現時点では薄くなりつつある。現実解として、米国における新学期シーズンである8月後半から9月にかけての時期がiPhone発売の現時点のメインターゲットであり、売上増を見込むのに適した時期だと考えられる。また、もしカラーバリエーションや低価格をを売り物にした、いわゆる「廉価版iPhone」が登場する場合、そのターゲットはいま盛り上がっている新興国や低所得層向けの市場だけでなく、「若者層」をAppleは狙ってくると考えられる。キャンペーン展開もそうした層がメインとなるため、9月の新学期シーズンを狙うというのは理にかなっている。

次期iPhoneのスペックに関する噂

Gizmoratiの記事では特に触れられていないが、次期iPhoneのスペックに関する噂がいくつか出ている。それぞれ検証していこう。典型的なのが台湾Digitimesなど複数の情報ソースをまとめたCNETの記事などだ。それによれば、次期iPhoneは基本的に現行iPhone 5のマイナーチェンジ版にあたり、幾分か高速化されたプロセッサとより高画素になったカメラモジュールを搭載することになるという。これまでiPhone 3GSやiPhone 4Sがリリースされた経緯をほぼ踏襲したような形だ。当初アナリストらが予想していたような、さらなる高精細液晶採用や大画面化、バリエーション増加などはみられない。筆者的に見ても、このDigitimesの報道内容は順当に見え、「iPhone 5で上昇した部品コストを低減する」という目標を考えれば、おそらく次の世代で大胆に中身を変更してくる可能性は低い。

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