Google Glassの発表を皮切りに、「ウェアラブル・コンピューティング」が再び盛り上がりを見せつつある。この分野の歴史は比較的長いが、最近ではさらにAppleが腕時計型デバイスを、それに続く形でSamsungも参入するという噂が出ており、大手メーカーらが集う一大注目分野となった。このウェアラブル・コンピューティングについて、最新トレンドや今後の流れを追いかけてみる。

話題のGoogleが提供するヘッドマウント型ディスプレイ「Google Glass」

センサー型デバイスで広がるウェアラブル・コンピュータ

体にコンピュータを身につけて動き回るというアイデアは比較的古くからあり、その一端は1960年代ごろのSFドラマなどにも現れ、実用レベルのものでもすでに20~30年程度の歴史がある。当時のコンピュータは巨大なもので、小型のスマートデバイスを持ち歩くというのは夢物語に近かった。その中で腕時計やヘッドマウント・ディスプレイに情報処理機能を持たせ、出先で情報を引き出したり通信を行うといった使い方が模索された。だが現在、携帯電話の小型化が進んだうえ、一昔前のPC並みに機能が集約されたことで、当時考えられていたようなウェアラブル・コンピュータの機能はほぼ「スマートフォン」上で実現できるようになってしまった。ゆえに現在のウェアラブル・コンピューティングとは、「高機能なコンピュータを体に身につける」というよりも、「スマートフォンだけでは難しい機能を補う周辺デバイス」といった意味合いが強くなりつつある。

その典型的なものが先日日本上陸したばかりのFitbit、ファッショナブルなデザインで話題となったFuelbandMisfit ShineJawbone Upといった健康器具の機能を持つウェアラブルなデバイス群だ。この種のデバイスは加速度センサーを搭載して歩数計の役割を持つほか、場合によっては位置情報記録や脈拍測定が可能になっている。ランニングなど運動時は記録に努め、後ほどスマートフォンやPCに接続することでデータを取り出して測定結果を集計する。収集データをクラウド上にアップロード可能なサービスもあり、こうした日々のトレーニング情報を時系列で後から比較することもできる。他のデバイスやクラウド連携を前提にしている部分が、単機能の従来の万歩計との大きな違いだ。iPodの「+Nike」オプションにみられるように、本来iPodにはない機能を補完する、あるいはスマートデバイスなしでもウェアラブルなデバイス単体で利用可能な点でメリットがある。

こうしたウェアラブルなセンサー型デバイスは「ライフロガー(Lifelogger)」などとも呼ばれる。健康器具のセンサーだけではなく、体に身につける小型カメラや位置情報/気圧測定ユニットなども合わせてライフロガーの一種とするケースもある。

スマートフォンと連携するARデバイス「Google Glass」

気軽に身につけて情報記録が可能な点がライフロガーの魅力だが、一方で情報検索といった用途にはスマートフォンやPCが必要となる。そこで登場するのがヘッドマウント型ディスプレイの装置だ。パワードスーツをまとって天才発明家の社長が活躍する「アイアンマン」というアクションムービーがあるが、ヘルメットを被った本人には外部の風景が内側のモニターに映像として表示され、さらに追加情報がウィンドウや吹き出しの形で視界に出現する。武装の制御や情報検索などは内蔵のコンピュータと会話形式で行われ、基本的にパワードスーツを装着している間はキーボード等の装置に触れる必要がない。AR (Augmented Reality: 拡張現実)を組み合わせたこのユーザーインターフェイスは、ヘッドマウント型のウェアラブル・コンピュータの特性をよく説明している。

基本的には自然界の映像情報がそのまま視界に入り、それを補う形でARの補助ユーザーインターフェイスが被さる。さらにハンズフリーでの運用を実現するため、コンピュータとはスピーカとマイクによる音声対話が中心となる。ヘッドマウント型ディスプレイというとソニーの「HMZ-T2」などが思い浮かぶかもしれないが、これはあくまで大画面映像を楽しむための専用装置であり、こうしたウェアラブルなスマートデバイスを意図したものではない。むしろ普段から身につけて、外出先でも自宅でもどこでも利用できる手軽さが望ましい。そこで登場してきたのが「Google Glass」だ。

次ページ: スマートフォンと連携して動作するデバイスも