米国で開催されるHot Chipsの姉妹学会として誕生したCool Chipsも2013年で第16回となる。「Cool Chips 16」は、4月17日から19日の日程で開催され、会場は、昨年と同じ、横浜情報文化センターである。

今年は、日本IBMの金山氏の「Why and how "Watson" Answered Questions on the TV Quiz Show?」と題する基調講演と、富士通の吉田氏の「SPARC64TM X: Fujitsu's New Generation 16 Core Processor for UNIX servers」と題する招待講演が行われる。

金山氏は、米国の人気クイズ番組「Jeopardy!」で過去のグランドチャンピオン2人を破ったWatsonがどのようにして知識を格納し、自然言語で出される問題を理解して問題を解いているかなどについて講演する。また、IBMは2月8日にWellpointとMemorial Sloan-Kettering Cancer Centerと協力して、Watson上にがんの診断システムを開発したと発表しており、これらの実用化の事例にも触れられると思われる。

富士通の吉田氏の講演は、同社の最新のSPARC64 Xプロセサに関するものである。富士通は京コンピュータ用のSPARC64 VIIIfxとその後継のSPARC64 IXfxを開発したが、これらのプロセサは1チップの計算ノードをTofuインタコネクトで接続するものであった。これに対して、SPARC64 Xは最大64チップまで共通メモリで接続できるマルチプロセサ構成が可能なコマーシャルサーバ用の本命プロセサチップである。このプロセサは昨年のHot Chipsで発表されているが、今回の講演で、どの程度、新しい情報が示されるのかに興味が集まる。

また、NECの百瀬氏が3月18日の基調講演で、同社の次世代ベクトルスパコンについて講演する。

これらのスパコンはCool(恰好が良い)のではあるが物理的には消費電力の大きいHot(熱い)なチップである。Cool Chipsではこのようなチップの発表もあるが、全体的には、低消費電力技術に関する発表が多い。

「What Can Supercomputers Learn from Phones?」と題するIntelのMichael McCool氏の基調講演は、携帯電話などの低消費電力技術をスパコンまで適用するという講演、「CoolChips at the core of a healthier world」と題するIMECのBert Gyselinckx氏の講演は低消費電力のBody Area Networkで体につけたセンサを繋いで健康をモニタするという講演である。

ルネサスは、「A 28nm HKMG Single-Chip Communications Processor with 1.5GHz Dual-Core Application Processor and LTE/HSPA+Capable Baseband Processor」と題する携帯用のプロセサを招待講演で発表する。

また、低電力プロセサのセッションでは、半導体エネルギー研究所がIn-Ga-Zn-Oxideトランジスタを使う高速のパワーゲーティングができるプロセサを発表し、ルネサスが低電力のマイクロコントローラコアを発表する。メニーコアプロセサのセッションでは、慶応義塾大学(慶応大)の磁気結合でチップ間を接続する3Dプロセサの発表をはじめ、韓国のKAIST、NECなどの発表が行われる。この他にも、HW/SWテクノロジのセッションでは早稲田大学の自動並列化コンパイラなどの発表、3Dテクノロジのセッションでは、慶応大とフランスのUniv. of Pierre and Marie Curie Parisからの発表が行われる。

Hot Chipsなど海外の学会に参加するとなると航空運賃や宿泊費が高額となるが、Cool Chipsなら、横浜の地下鉄みなとみらい線の日本大通り駅の上の建物での開催であり、日本人には参加しやすい国際学会である。ちなみに当日、会場に行って参加申し込みすることも可能であるが 4月3日までに申し込むと参加費が割引となる。