3月16日(現地時間)、米AppleのWebサイトにiPhone 5の優位性をアピールする"Why iPhone"ページが登場した。同ページは、韓国Samsung Electronicsが14日に発表したGALAXYシリーズの最新モデル「GALAXY S 4」の発表後すぐに公開されており、同端末に対する対抗策と見られている。

昨年の9月にAppleが「iPhone 5」を発表した際、Samsungが米国の新聞各紙に当時の最新モデル「GALAXY S III」とのスペックを比較した広告を掲載しており、こちらのニュースも話題になった。

今回のAppleのiPhone 5のアピールページの公開は、昨年とまったく逆の状況となっているのが興味深い。昨年はSamsungがAppleを追いかける状況だったが、今年は逆になるのだろうか? 何かと話題の多いこの2社の動向について考えてみたい。

Why iPhoneのページ

GALAXY S 4は、米ニューヨークで3月14日(現地時間)に発表された。マイナビニュースでも発表会の様子搭載機能の解説多くの記事を掲載している。

4.99インチでフルHD(1920×1080ドット)のSuper AMOLEDディスプレイや1300万画素カメラ、8コアCPUと、スペック面でも優れた端末だが、Samsungは今回、"ユーザー体験"を大きくアピールしている。これまでSamsungが端末スペックでAppleのiPhoneより優れていると訴求してきたことを考えると興味深く、同時に"ユーザー体験"はAppleが得意としていたところでもある。

これは、iPhoneがこれまでアドバンテージとしていた領域に、ついにGALAXY S 4が踏み込んだと見ることができるだろう。そうだとすれば、Appleは少なからず焦りや脅威を感じていると考えられる。それが今回の"Why iPhone"ページの公開につながったのかもしれない。

"Why iPhone"ページの公開については、海外メディアでも多く取り上げられている。米メディアAndroid Centralは、「Appleはついに皆の前でオープンに、真剣に競争を打ち出そうとしているように見える」と述べている。また、同じく米メディアのAll Things Dは、「GALAXY S 4発表のわずか2日後にAppleがWebページを立ち上げたことは、Samsungを脅威に感じていることを意味する。明らかにAppleは熱くなっている。あるいは、もしかするとAppleは必死なのかもしれない」と報じている。さらにAll Things Dは、「SamsungとAppleは携帯電話市場で覇権を争い、互いを打ち負かそうとしている。これは"ゴジラ対メカゴジラ"だ」と続ける。

ちなみにAppleは、かつてパソコン市場で「Macが好きになる理由(Why You'll Love a Mac)」と題して"Why Mac"ページを立ち上げたことがある。今回の"Why iPhone"ページも同様のキャンペーンと見ることができるかもしれないが、Windowsが優位なパソコン市場におけるMacと、これまでスマートフォン市場で優位だったiPhoneとでは立ち位置がだいぶ異なる。以前であれば、このようなiPhoneのアピールはあまり考えられず、王者の戦い方とは言えない。

また、あたかもGALAXY S 4と競うかのように自らの良さをアピールすることは、iPhoneがこれまでのように先進性やイノベーションを強く押し出すことができなくなってきていることを意味している。スティーブ・ジョブズが健在であったとすれば、決してこのような方策は取らなかったのではないだろうか。これはもはや、Appleがなりふり構っていられない状況と見ることもできる。かつてのパソコン市場のように、GALAXY を優位な存在と認め、守りに入っているともとれるかもしれない。

実際に、米調査会社IDCが2013年2月に発表した2012年第4四半期における世界のOS別スマートフォン出荷シェアでは、Androidが70.1%、iOSが21.0%となり、iPhoneがAndroidスマートフォンに大きく引き離されている。Androidは、Samsungの端末も含め多数の製品が存在するので、一概には言えないがiOSのシェアが少ないのは事実だ。また、米Strategy Analyticsが2月に発表した2012年の世界のスマートフォンの出荷台数のメーカー別シェアでは、Samsungが30.4%を占め1位となっている。

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iPhone 5をアピールする"Why iPhone"ページの公開は、Apple自身が「SamsungのGALAXY S 4はライバル端末であり、脅威だ」と認めてしまったように感じるのは筆者だけではないだろう。Appleらしくない展開にユーザーはどう受けいれていくのか。これまでスペックではなく、"ユーザー体験"で先行していたiPhoneだが、ライバルのGALAXY S 4も同様の部分をアピールしてきている。今後、この部分の優位性も拮抗してくるのだとすれば、スペック面でGALAXY S 4に劣るiPhoneには、苦しい戦いが待っているかもしれない。