日本のロボット技術はやはりすごい - NEDOの最先端災害対応ロボットたち (1) 産官学連携で進む災害対応ロボット開発

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日本のロボット技術はやはりすごい - NEDOの最先端災害対応ロボットたち

1 産官学連携で進む災害対応ロボット開発

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災害時に活躍することを目的に開発されたロボットたち

新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、移動ロボット研究所(移動ロボ研)、日立製作所、東芝、三菱重工業、千葉工業大学(千葉工大)、CYBERDYNE(サイバーダイン)の7者が2月20日に、最先端災害対応ロボット技術の開発成果を公開したことはすでに既報のとおり。今回はその記事で予告した通り、それらロボットたちと関連技術の詳細をお届けする。

今回のロボットたちは、自然災害や原子力災害、産業施設全般の事故や災害など、人間が入り込めないような過酷な現場で状況把握や機材運搬、復旧活動を行うためにNEDOが取り組んできた「災害対応無人化システム研究開発プロジェクト」で開発されたものだ(画像1)。

同プロジェクトは、2012年2月23日から2013年2月28日までの約1年間にわたるもので、9億9600万円の予算を用いて進められた。ロボットおよび関連技術の開発目的は前述した通りだが、特に原子力災害、実際に未だ大きな問題となっている福島第一原子力発電所での利用が前提とされている。今後の燃料棒の取り出し、原子炉の廃炉、建屋の解体などの作業に向けて、事前の環境調査、機材の搬入、除染、後事などに広く活用することを目的としたロボットテクノロジーというわけだ。

研究開発項目は、大別して3つある。(1)作業移動機構の開発、(2)計測・作業要素技術の開発、(3)災害対策用作業アシストロボットの開発だ。(1)には、(a)小型高踏破性遠隔移動装置、(b)通信技術、(c)遠隔操作ヒューマンインタフェース(HIF)、(d)「狭隘部遠隔重量物荷揚/作業台車」、(e)「重量物ハンドリング遠隔操作荷揚台車」の5種類がある。

(a)のもう少し具体的な開発内容は、過酷な環境下でも使用可能な狭隘空間先行調査型の小型移動装置や重量計測機器搭載可能な移動装置などで、移動ロボ研が担当。同様に(b)は、過酷な環境で使用可能な汎用性の高い通信技術で、日立が担当。(c)は汎用性の高いHIFで、東芝が担当。(d)は作業員の立ち入り困難な建屋内の高所の作業が可能な荷揚/作業台車で、三菱重工が担当。(e)は、建屋各階(最上30m)へ機器などの搬入が可能な通称「スーパーリフタ」で、東芝が担当する。

そして(2)は、(a)ガンマカメラ、(b)汚染状況マッピング技術、(c)「災害対応ロボット訓練シミュレータ」、(d)水陸両用移動装置の4種類。(a)は小型高踏破性遠隔移動装置への搭載により高線量下での計測が可能なガンマ線カメラで、日立が担当。(b)は周囲の構造物や環境などの情報を統合して3次元表示するマッピング技術などで、千葉工大が担当。(c)は文字通り、災害対応ロボットの操縦訓練シミュレータで千葉工大が担当。(d)は水中の構造物や水流の調査が可能な水中調査センサとそれを搭載可能な水陸両用の遠隔移動装置で、東芝が担当している。

最後の(3)は過酷な環境下で作業員の安全に配慮した有人作業を可能にする作業アシストロボットなどで、サイバーダインが担当する。

そして、実際に開発されたのが、以下のロボットたちというわけだ。(1)の(a)で実際に開発されたのは、2012年10月に開催された展示会「Japan Robot Week 2012」で公開済みの狭隘空間先行調査型移動ロボット「Sakura(櫻)」(画像2・3、動画1・2)と、今回の発表で初披露された重量計測器搭載型移動ロボット「Tsubaki(椿)」、「移動ロボット遠隔自動充電システム(自動充電システム)」、「小型移動ロボット遠隔除染システム(除染システム)」の4点だ。

画像1。モックアップの階段を難なく上っていくSakura

画像2。モックアップの幅70cmしかないU字階段の踊り場で旋回するSakura

動画
動画1。Sakuraの階段昇降の様子
動画2。Sakuraがグレーチング上をまったく引っかからずに走行する様子

Sakuraの詳細はこちらを参照していただくとして、まずはTsubakiから紹介しよう(画像4・5、動画3)。Tsubakiは、放射線源を特定できるガンマカメラを搭載可能なロボットだ。Tsubakiを運用して計測情報を収集することで、建屋内の汚染状況マップを作製できるのである。

画像4。新型の重量級ロボットTsubaki。開発は、Sakuraと並行して行われた模様

画像5。Tsubakiを横から。上に乗っているのがガンマカメラ

動画
動画3。150kgの重量を背負って、Tsubakiが階段を昇降する様子

新たに1から開発されたTsubaki

福島第一原発に実戦投入された「Quince(クインス)」以降、「Rosemary(ローズマリー)」(記事はこちら)、Sakura、Tsubakiと千葉工業大学未来ロボット技術研究センター(fuRo)と移動ロボ研では、小柳栄次fuRo副所長(移動ロボ研の代表)らが中心となって矢継ぎ早に開発している。Quinceで判明した短所を強化してRosemaryが誕生し、Rosemaryでは通行不可能な70cmの階段を通過できるよう小型化したのがSakuraというのが大まかな開発の流れだ。

しかし、TsubakiはRosemaryやSakuraの流れとは少し異なる。大変な重量物であるガンマカメラを運ぶことのみを目的として開発されたものなのだ。ガンマカメラは本体だけでも90kg近くもあるため、RosemaryやSakuraでは搭載できず、新たに1から開発されたというわけだ。

ちなみにカメラ本体と書いたが、そのほかにもカメラのリフトアップ用のパンタグラフ機構(41kg)と、カメラを上下左右に向けるパン・チルト機構(20kg)もセットになっており、本体と合計で約150kgを搭載する必要がある。そのため、小型化を追求したSakuraの全長500mm×全幅390mm×全高220mm・重量32kgというスペックとは真逆で、Tsubakiは全長1500mm×全幅530mm×全高710mm・ロボット本体の重量72kgと、かなり大型・重量級となった(それでも極力小型になるよう配慮されている)。

ちなみになぜパンタグラフ機構やパン・チルト機構が必要なのかというと、床面の汚染状況を正確に計るには、ガンマカメラを高い位置に固定し、俯瞰視する必要があるからだ。それで、パンタグラフ機構でリフトアップするのである。さらに、カメラを上下左右に向けるためのパン・チルト機構があれば、いちいち機体を旋回させる必要もないし、天井を見るには必須というわけだ。

いうまでもないが、Tsubakiは、原子炉建屋内の床面、壁面、天井、各種装置や配管などすべての資材、そのほかガレキから放射される線量マップを作製することを目的に運用される。まだまだ建屋内の汚染状況の詳細がわかっていないため、何よりも線量マップ情報が求められているのだ。それを基にして除染可能なものは除去し、できないものは遮蔽し、そうして作業員が入るための安全エリアを広げていくのである。また、建屋内の除染や遮蔽の施工が終了した後も、ガンマカメラで再調査することで、人が立ち入ることのできる作業環境の構築を支援できるというわけだ。

ロボットのメンテナンス時の被ばくを防ぐロボット

次に、自動充電システムについて(画像6・7、動画4)。これは、人が汚染されたロボットに直接触れて作業することなく、バッテリを充電できる移動ロボット用の遠隔自動充電システムである。サイズは全長940mm×全幅590mm×全高740mm。

災害対応ロボットには防水・防塵機能が求められるため、バッテリの交換作業はかなりの時間を要してしまうのである(しかも、対放射線仕様で、作業者は何重のゴム手袋などをするなど、ドライバー1つを回すだけでも大変な作業となる)。その結果、汚染されたロボットの間近にいることで、作業者が被ばくしてしまうので、それを防ぐのが狙いというわけだ。

画像6。移動ロボット遠隔自動充電システムの充電ステーションと、それにドッキングしたSakura

画像7。充電ステーション側のコネクタ

動画
動画4。Sakuraが充電ステーションにドッキングする様子

すでにSakuraやTsubakiは自動充電を想定して開発されており、機体には自動充電回路と電源ソケットが装備されている。遠隔操作で充電ステーションにロボットを進入させ、ステーション側のコネクタに接続することで自動的に充電が始まる仕組みだ。自動充電回路はバッテリの安全性も確認するよう設計されており、充電電流の制御を行う。充電時間は4~6時間ほどで、終了は自動的に行われる。

この自動充電システムのステーションは作業者が被ばくすることを防げるだけでなく、充電中のロボットを遮蔽することも可能だ。よって、原子炉建屋内にステーションを設置することができれば、ロボットには高性能カメラが搭載されていることから、定点観測装置として24時間モニタリングも行えるようになるのである。

そして(a)の最後となる除染システムについて。SakuraやTsubakiなどはすべてクローラを移動機構として用いていることから、最も汚染されるのが同部分だ。そこで、クローラ表面に付着した放射性物質を超音波と気泡により洗い落とすようにしたのが、この除染システムである(画像8・9、動画5)。こうして除染することにより、作業者の被ばくを減らせるだけでなく、放射性物質に起因する経年劣化を低減することもメリットだ。サイズは、全長2000mm×全幅1000mm×全高603mm。スロープの幅は850mmで、傾斜は20度。

実際の使用イメージとしては、出入り用スロープをロボットが上がっていき、除染槽に入る。水の張られた除染槽にはローラーが並べられており、その上をゆっくりと空走することで、一様にクローラ表面を洗浄する仕組みだ。洗浄後、ロボットは自然乾燥させる仕組みで、メンテナンスや必要なオプション機材の装着などの作業を、安全に行うことが可能となるのである。

画像8。小型移動ロボット遠隔除染システム。

画像9。除染槽の内側

画像10。除染槽にSakuraが入っている様子
動画5。除染槽からSakuraが出て行く様子
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インデックス

目次
(1) 産官学連携で進む災害対応ロボット開発
(2) より柔軟な作業の実現に向けた無線を使った遠隔操作
(3) 放射線源をどうやって特定するのか
(4) 人が実際に現場で作業するための装着型ロボット
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