ソニーの「Xperia Tablet Z」然り、パナソニックの「ELUGA Live P-08D」然り、防水機能を備えたタブレットが多く登場してきた。そして実際に使った人から「風呂場で使えるタブレットというのは便利なものだ」という話もよく耳にする。

筆者が所持するタブレットは第3世代iPadのみ。iPadをラップでくるんで風呂に持ち込むこともあるが、浸水が不安で、風呂場の中では長時間触るのを避けている。そんな状況なので、「お風呂タブレットは良いものだ!」という話を聞くたびに「防水タブレットとは実際のところ、本当に便利なのだろうか」「もし便利だとしたら、どのくらい便利なのだろうか」という疑問が湧いてくる。

果たして"お風呂タブレット"は買いなのか?

そこで今回、Windows 8搭載機として世界最薄(2012年12月25日時点)、かつIPX8準拠という高い防水性能を持つ富士通のタブレット「ARROWS Tab Wi-Fi QH55/J」を、実際に自宅のお風呂場で3日間使ってみた。先にお伝えしておくと、本稿では一人暮らしの読者向けに、ワンルームのユニットバスという偏った環境で、お風呂タブレット(以下、風呂タブ)としての使い勝手をレビューする。防水仕様の「風呂タブ」は、果たして"買い"の一品なのだろうか?

ユニットバスの縁に置いた「ARROWS Tab Wi-Fi QH55/J」。ユニットバスの宿命だが、そもそも本体を置く場所がない。今回は狭いスペースながら浴槽の縁においてみたものの、水没の危険が非常に高い。使用する場合は浴槽のフタの上に置くのが一番使いやすいと思われる

先に結論を述べてしまうと、個人的に「風呂タブ」は"買い"であった。実際に使用した3日間、撮影にかけた時間を差し引いても入浴時間は15分~20分程度伸び、もともと風呂場で好きな音楽を好きなだけ聞きたい、好きなアニメを好きなだけ見たいという自分のニーズに合致した。満足度は非常に高い。

少なくとも、WindowsもしくはAndroidタブレットを検討しているユーザーで、風呂場利用も狙うならば、なるべく防水仕様を選んでおくことをお勧めしたい。

■主な仕様   [製品名] ARROWS Tab Wi-Fi QH55/J   [OS] Windows 8 32bit   [CPU] Intel Atom Z2760(1.5GHz)   [メモリ] 2GB   [外部メモリ] microSDメモリカード   [ディスプレイ] 10.1型ワイド(1,366×768ドット)   [カメラ] 外側:約800万画素/内側:200万画素   [バッテリ駆動時間] 動画再生時で約10.5時間   [本体サイズ] W264.4×D169.4×H9.9mm   [重量] 約574g   [直販価格] 99,800円(Office搭載)/84,800円(Office非搭載)  

1日目の課題「お風呂で音楽を聞く」

「風呂タブ」試用の1日目。まずはざっと「ARROWS Tab Wi-Fi QH55/J」のスペックを確認しよう。本機は10.1型で1,366×768ドット解像度のWindows 8搭載タブレットだ。CPUはAtom Z2760(1.50GHz)、メモリは2GB。本体サイズはW264.4×D169.4×H9.9mm、重量は574g。

「ARROWS Tab Wi-Fi QH55/J」の右側面(右)と左側面(左)。厚さは9.9mm

本体下面(左)と本体上面(右)。防水だが、充電コネクタは金属が剥き出しになっている。上面にはヘッドホン出力端子も

本体裏面はテクスチャ加工。濡れた手で触っても滑りにくくなっている

普段使っている第3世代iPad(Wi-Fi版)は652gなので、574gの本機を手に取った印象はかなり軽く、9.9mmの本体厚も薄く感じる。本機の肝心の防水性能はIPX5/7/8(このほかIP5Xの防塵性能も持つ)。なお、IPX8という防水性能は、本機の場合「常温で水道水、かつ静水の水深1.5mのところに本機を静かに沈め、約30分間放置後に取り出したときにタブレットとして使える」というもの。

本体左側面。入浴前にmicroSDカードスロットやmicroUSBコネクタ部にはしっかりカバーをかぶせる

さて1日目は、自室にあるWindows 8搭載のデスクトップPCと、本機をホームグループでファイル共有させ、最も試したかった音楽視聴を堪能した。Windows 8のホームグループ機能は、Windows 7と同様、同じネットワーク内の画像、音楽、ビデオ、ドキュメント、そしてプリンタなどの外部デバイスを同一ネットワーク内のPCで共有できる。

満を持して入浴し、ディスプレイ上に表示された楽曲をタップしてストリーミング再生を開始。自室にあるメインPC内の音楽をすべて手元で再生でき、非常に快適だ。スピーカーは高音質ではないかもしれないが、浴室で聞く分には問題ないレベルで、音量も適宜調節できる。自室PC内のプレイリストもそのまま再生でき、アンビエント系ミュージックを中心に流した非常に充実したお風呂タイムとなった。

自宅のメインPCとホームグループで音楽ファイルを共有させた画面。自宅の全音楽ファイルを好きなだけ再生できるという素晴らしいお風呂タイム

視聴中。Windows 8の標準アプリ「ミュージック」で再生すると全画面表示となる

2日目の課題「お風呂場で動画を見る」

2日目は、YouTubeやニコニコ動画、バンダイチャンネルの有料アニメといった動画を視聴するべく入浴開始。まずはYoutube(1080p高画質モード)やニコニコ動画などの動画共有サイト動画を試す。これは問題なく再生した。なお、本機の解像度は1,366×768ドットなので、実際の視聴はフルHDコンテンツが必須ではない。

また、1,920×1,080解像度のフルHD動画(ビットレート8Mbps)をホームネットワーク経由で再生したところ、これは若干もたついた。ただ、同じ動画を本体内部に保存すると問題なく再生。

動画試聴中。フルHD動画のネットワーク経由での再生ではわずかにカクつく

また、筆者が有料会員登録しているバンダイチャンネルのアニメ見放題サービス「月額1000円見放題」コースでの視聴も、LQ画質(384kbps)・SQ画質(768Kbps)・HQ画質(1.5Mbps)いずれもスムーズに再生した。バンダイチャンネルはデスクトップPCの大画面で見ると画質が気になる部分もあるが、10.1型の本機では画質もさほど気にならない。

本機の動画再生はスペック面で少々不安だったが問題なく、どちらかといえばスペックよりも家のネットワーク環境の影響が高かったようだ。

3日間通じて、通信はIEEE802.11nで行ったが、手狭な1Kとはいえ、ドアを2つ越さねばならない風呂場は思ったより電波が受信できない。本機の最大通信速度もIEEE802.11n接続時で65Mbps(規格値)であり、風呂場に限定した場合やや弱いといえる。

今回試した環境では、音楽視聴・映像再生ともに問題なかったが、例えば本機のDTCP-IP対応「My Cloud ビデオ+」機能で、対応レコーダーに録画したテレビ番組を入浴中に消化したい、などの場合には家の中でのルータの位置や、無線LAN中継機の使用などを検討する必要がある。

アニメ視聴中。10.1型サイズで画質も良好

余談だが、バンダイチャンネルの動画をiPadで視聴すると自動的に画質が固定されてしまうため、ユーザー側で画質を選択できるWindows 8での視聴を楽しみにしていたが、これについてはあまり差が感じられなかった。

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