ちょっと古い話であるが、2013年1月23日に英ARMのJem Davies氏(Photo01)が来日、HSA Foundationに纏わる動向などについて説明を行った。といっても説明はそれほど多いものではなく、大半は質疑応答に費やされることになったので、氏の説明をそのまま掲載するのではなく、最近のHSA Foundationの動きと併せてご紹介したいと思う。

Photo01:Fellow, VP of Technology, Media Processing DivisionのJem Davis氏。ARM内でGPUのテクノロジーロードマップを策定したり、同社のArchitecture Reviewの委員会メンバーを務めるほか、HSA FoundationにおけるBoard Memberも務めている。というか、以前のレポートにも登場している

HSA Foundationの現状

まずHSA Foundationのその後の動きについて。HSA Foundation発足時にはFounder5社のみがメンバーだったが、今はFounderにQualcommとSamsung Electronicsが入ったほか、Promoter/Supporter/Contributor/Adademicに多くのメンバーが参画している(Photo02)。特に興味深いのはInvitation OnlyのFounderにQualcommとSamsungが入っていることであろう。

Photo02:Contributorsにソニーが入っているのも色々と意味深なものがある

さて、そのHSAの目的は、これは言うまでもなくCPU+GPUのヘテロジニアス構成を簡単に扱えるようにすることである(Photo03)。これを実現するためには、H/WとS/Wの両方の環境が揃う必要がある(Photo04)。AMDが急速にこの方向に舵を切っているのは周知の事であるが、ARMも同様である。このARMの話は後述するとして、S/Wについて。時々誤解されるが、としながらHSAはOpenCLと対立するものではなく、むしろ協調するものであると強調した(Photo05)。

Photo03:そういえばHSA Foundationの設立の際、TIに「DSPはどうするの?」という質問が出て、今のところDSPは考えてないという返事があったが、まぁ最初からすべてのヘテロジニアスをサポートするのはあまりに大変ということだろう

Photo04:Physical Integrationはすでに完了しており、今はOptimized PlatformとArchitectual Integrationがどちらも部分的に実現という程度

Photo05:もちろんHSAから見るとMicrosoftのDirectComputeも1つの解になるが、現実問題として一番幅広いプラットフォームで利用できるのがOpenCLということになる

ここから話は一転、同社のMali GPUについて。現状はまだMali-400ベースが大半であるが(Photo06)、これに続くMali-T600シリーズ以降はHSAに対応できる機能が当初から持ち込まれている(Photo07)。つまりARMプラットフォームに関しても、Cortex-A7/A15世代以降+Mali-T600以降であれば、技術的にはHSAの恩恵を享受できる形になる。

Photo06:これは専らMali-400や、その前のMali-200シリーズの実績であって、GPGPU的に使えるMali T600シリーズはこれからという形になる

Photo07:Photo04で言えば、Mali-T600はOptimized Platformの機能は搭載しており、Architectual Integrationの機能に関しては今後の世代で実現ということになる

さて話は再びHSAに戻るが、HSA Foundationでは様々な標準化作業を行っている。その1つがHSAIL(HSA Intermediate Language)であり、これを利用してプログラミングを行うことで、より効率化を図る事ができるという話がちょっと紹介された(Photo08)。

Photo08:HSAILの位置づけは後述

これはかなり氏の話をラフにまとめた話で、他にもHSAは様々な標準(OpenCLやOpgnGL、DirextXやdvi/Displayport/JEDEC)に準拠する(プロプラエタリな技術は利用しない)とか、HSAによってパフォーマンスを14倍にしたり、あるいは消費電力を14分の1に落としたりといったことが可能になるといった話も触れられたが、これらはある意味それほど新しい話ではないので、ここでは割愛する。