オフィスのPCにおけるスタンダードは、ひと昔前であれば、セパレート型のOA機器然としたデスクトップを思い浮かべるだろう。最近は省スペースなセパレート型や、これまた省スペースがメリットの据え置きA4ノートあたりか。一方で、今までになく盛り上がってきているのが、いわゆる"一体型PC"と呼ばれるオールインPCである。これは何故か? オフィスで一体型のメリットは? というあたりを、マウスコンピューターの法人向けPCブランドである「MousePro」から、最新オールインワンPCである「MousePro Aシリーズ」を見ながら確認していきたいと思う。

「MousePro Aシリーズ」。黒を基調とした引き締まったデザインに、ごちゃごちゃ感の無いボード状のシンプルなきょう体が良く合っている

さて、オールインワンPCは、どちらかと言えばコンシューマ向けというイメージを持っておられる方が多いだろう。TV代わりになる20インチ程度の液晶モニタが一体型となっており、場所をとらず、ひとり一台の個室利用や、親元を離れる新生活にぴったりということで、"テレパソ"ブームの主役となっていたことは記憶に新しい。これが、セパレート型デスクトップや据え置きA4ノートを差し置いて、オフィスで導入されるという要因は、どういった事情によるものであろうか。

例えば、日本のオフィスでのA4ノートの使われ方というと、そもそも重量が2~3kgあってカバンに入れるには重く、加えて企業のセキュリティリスクの問題もあるのだろうが、それを外出時にそのままモバイルというより、デスク上にそのまま据え置きして利用し、せいぜい会議の時に社内で持ち運ぶ……ということが多いだろう。客先でもPCを利用したい営業マンなどは、オフィスでは会社支給の据え置きA4ノート、外出用には別の軽量モバイル(やタブレット)の2台持ち体制という、やや本末転倒な環境例は、よく見る光景だ。あくまで、セパレート型のデスクトップ比での省スペース性や、ケーブル接続の簡便さといったあたりの程度が、据え置きA4ノートが選択される際の合致ニーズと見られる。

一方のMousePro Aシリーズを見てみると、スペースはモニタ1枚ぶん。停電対策兼ちょっとした持ち運びのためのバッテリも内蔵し、重量は約4.8kgで、しかもきょう体上部には金属性で丈夫な折りたたみ式の取っ手も備えている。社内で持ち運びは問題ないし、ワイヤレスのキーボードとマウスも安価で選択可能なので、ケーブルでごちゃごちゃになるということも無く、このあたり実ユーセージで据え置きのA4ノートに大きく劣らない。対してモニタの大きさ、つまり作業効率に直結する部分では上回っているので、据え置きメインのオフィスクライアントとしては、こちらの方が使い勝手が良い場面が増えてくる。どうせ2台持ちという環境が前提なら、オフィスでは作業効率に優れ生産性を追及できる上に省スペースなオールインワン、外ではビューアー端末兼プレゼン端末としての軽量モバイルとした方が、明らかに適材適所だ。

20インチ以上のひろい作業領域を確保できるが、スペースはモニタ1枚分で収まる

MousePro Aシリーズでは、IntelのIvy Bridgeをベースとしたモバイル・プラットフォームを採用しているため、省スペースであるだけではなく、電力消費量がとても少なく、動作音もかなり静かだ。内部がモバイル・プラットフォームであるため、CADをバリバリ使うとか、高解像度のレンダリング処理を走らせまくるといった高いマシンパワーを必要とする業務などでは、さすがにフルサイズデスクトップを選ぶべきなのだろうが、会社一律支給のコモディティPCで間に合うような一般的な業務であれば、パフォーマンスが問題になることはまず無い。クリエイティブ系の業務であっても、例えばWebコンテンツの製作程度であれば、これ1台で済んでしまう。このように、先入観無しに見てみると、オールインワンPCというのは、かなりオフィス用途との親和性が高いフォームファクタであると言える。

そのような背景があると思われるオフィス利用に向けて、マウスコンピューターが法人向けブランドを冠に投入したのが、今回取り上げるMousePro Aシリーズである。発売時のリリース記事はこちら(うち現在A210XはA210Vにモデル変更されている)にあるが、ここで改めて仕様を紹介しておくと、大きな特徴は、まずWindows 8採用のタッチ操作対応している点だ。液晶モニタは10点マルチタッチをサポートする21.5型ワイドのフルHD解像度(1920×1080ドット)液晶で、角度調整が簡単にできフラットに収納もできる自立スタンドのほか、VESAマウントも備えるので、設置形態の自由度は非常に高い。

直感的なWindows 8のタッチUIを組み合わせて操作できる

正面にはスタートメニューを呼び出すWindowsボタンのみで、余計なものは一切無い

自立スタンドは自在に角度調整できる上、たたんで収納できてしまうので、テーブル上に設置することもできる。複数人で画面を囲んでディスカッション……といった用途も考えられる

細かいスペックは、BTO対応であるため一例として挙げると、BTOベースモデルの最上位機種である「MousePro-A210V」で、CPUがIntel Core i7-3632QM(2.20GHz/Turbo最大3.20GHz)、チップセットがMobile Intel HM76 Express、グラフィックスがIntel HD Graphics 4000(CPU内蔵)、メモリが8GB PC3-12800(4GB×2,最大16GB)、ストレージが500GB SATA3Gbps HDD、光学ドライブがDVDスーパーマルチドライブというものだ。価格は、BTOでパワーアップさせると8万9万程度だが、直販の最小構成モデルであれば6万円台からと、手頃な価格帯に収まっている。

インタフェースはUSB 3.0×1、USB 2.0×3、GigabitEthernet、IEEE802.11b/g/n、Bluetooth 4.0+LE、マルチカードリーダ、ヘッドホン出力、マイク入力など必要十分。バッテリは駆動時間が約1.8時間で、ちょっとした打ち合わせや急な停電程度には余裕で対応可能だ。本体サイズ/重量はW536×D26×H363mm/約4.8kgと20インチ級の液晶モニタと大差ない。かつ前述の取っ手があり、さらにキーボードとマウスはコンパクトなものが標準で付属するので、ネットワークが無線LAN利用であれば、OSを起動したままでも、電源ケーブル1本を抜き差しするだけで簡単に持ち運ぶことができる。

右側面に電源ボタンと、USB 3.0×1、ヘッドホン出力、マイク入力

左側面に光学ドライブ、USB 2.0×2、マルチカードリーダ、ケンジントンロック

下部には、AC電源の端子や、GigabitEthernet端子、USB 2.0×1

普段はたたんでおいて、持ち運ぶ際に使うと便利な、金属素材で丈夫なつくりの取っ手も備える

性能面で業務利用に耐えうるものなのかどうか、スペック表とにらめっこするだけでなく、実際に実機を用いたベンチマークテストでも検証しておきたい。用意したテストマシンはMousePro Aシリーズではミドルクラス程度のBTOとなる、Intel Core i5を中心に構成したもので、ほか主なBTO構成は以下の表にまとめておくので確認いただきたい。

■表:テスト機のBTO構成
CPU Intel Core i5-3230M (2.60GHz)
メモリ 4GB DDR3 (PC3-12800)
ストレージ 320GB HDD (SATA II/5400rpm)
グラフィックス Intel HD Graphics 4000
OS Windows 8 Pro 64ビット版

ベンチマークは、PCの基本性能の指標となるWindows OS標準の「Windows Experience Index」と、業界標準の総合ベンチマークソフト「PCMark 7」を実施した。どちらも、Windows OS上での様々な一般動作の指標となるスコアを計測できるものだ。結果スコアを見ると、PCMarkの総合スコアで2700を超え、個別スコアも悪くないなど、Ivy Bridge世代のWindows 8パソコンとして良好な水準をクリアしている。強いて言えば3Dグラフィックス性能がやや力不足という程度なので、特殊な用途以外で不満を感じる場面は少ないということが、実際に確認できるスコア水準だ。

ただ、このベンチマーク結果でちょっと気になったのが(テスト機がSSDモデルではなくHDDモデルということもあり)ストレージの性能であったので、これは個別にベンチマークテストを追加してみた。「CrystalDiskMark」を用いたストレージの転送速度を計測したものだ。結果スコアはデータ読み込み/書き込み速度の実測で、リード/ライトともに最大60MB/秒以上の転送速度が出ているので、これについても、大容量データと読み書きが頻発するような場合を除けば、実用性で問題は無い水準と言える。もっともMouseProの場合、どうしても気になれば高速SSDにBTOしてしまえば良いだけ、という強みもある。

オフィスでオールインワンは、思った以上に好印象

セパレートのデスクトップよりも省スペースで、据え置きA4ノートほどではないにせよ、持ち運び含め設置の自由度はとても高い。それでいて21.5型フルHDモニタの作業領域は生産性向上に大きく寄与し、最新のWindows 8とマルチタッチパネルを搭載することで直感的なフィンガータッチ操作を利用することもできる。実際に触れてみるとわかりやすい、用途の応用の幅広さと使い勝手の良さは、オールインワンPCのオフィス導入のメリットであった。

パフォーマンスはIvy Bridgeベースということで過不足無く、一般業務では十分以上のものだが、先にも少し触れたように、大きなマシンパワーを必要とする用途ではさすがに力不足となる。そういった用途では、上位のCore i7にディスクリートGPUまで搭載したデスクトップが必要……となるのだが、ついでに、そういった用途向けの製品も、MouseProブランドでは製品ラインナップを豊富に用意している。

特に中小SOHO企業の場合などは、一律のスペックというよりは、千差万別の様々な業務にそれぞれ最適化されたニーズがあると思われる。さらにMouseProでは、上記だけでなく15インチオーバー級の据え置きノートや、数人~数十人規模でのグループ構築にも適した小型サーバなどもラインナップがあり、幅広くニーズを吸収できる製品群を展開している。多様なニーズへの対応力というのは、BTOパソコンのノウハウに長けた同社ならではだろう。

また、こちらの同社小松社長へのインタビュー記事などをあわせてご覧いただきたいが、同社は「日本品質」への拘りを強いメッセージとして打ち出している。業務パソコンでのトラブル発生は、クリティカルな問題に発展しやすい。この日本品質への信頼感の存在も、製品を選ぶ際の判断基準として重要になってくるポイントであろう。