ジュニパーネットワークスは2月15日、米国本社からSDNソリューション・アーキテクト兼テクニカルマーケティング・マネージャーのJames Kelly氏を招き、SDNへの移行に必要な包括的なビジョンと戦略に関する記者説明会を開催した。

米ジュニパーネットワークスでは、1月17日、年次グローバル・パートナー・コンファレンスにおいて、企業やサービスプロバイダーが従来のネットワーク・インフラストラクチャからSDN(Software Defined Network)に移行するための包括的なビジョンを発表。今回の記者説明会はこの内容をベースにしたものだ。

James Kelly氏は、SDNに対する包括的なビジョンを発表した背景を、「業界では、SDNに対する定義が多々あり、急ぐ必要はないが、明確に打ち出すことは必要だと考えた」と説明した。

そして「我々は、SDNに対する戦略として、6つの原則、4つのステップ、1のライセンスモデルを掲げており、『641の戦略』と呼んでいる。ただ、SDNに対する戦略を拙速に進めるつもりはない。広く汎用的なものを定義することによって、さまざまなネットワークにSDNを適用することができると考えるからだ」と語った。

米ジュニパーネットワークス SDNソリューション・アーキテクト兼テクニカルマーケティング・マネージャー James Kelly氏

6つの原則とは、「ネットワーキング・ソフトウェアの明確な区分」、「最適な集中化」、「クラウドの活用」、「プラットフォームの構築」、「プロトコルの標準化」、「SDNの主要原則を幅広く応用」の6つ。

「ネットワーキング・ソフトウェアの明確な区分」は、ネットワークのレイヤ(プレーン)を、マネージメント、サービス、コントロール、フォワーディングの4つに分離して、各プレーンを最適化するためのアーキテクチャ基盤を提供することだという。

マネージメントには、ネットワーク管理、エレメント管理、ネットワーク解析やデザイン、プロパティのプロビジョニングなどがあり、コントロールは、ネットワークの動的な状態を管理していくもので、接続性、ルーティング、パスの決定、トポロジの把握などが含まれるという。そして、サービスは、フォワードレイヤでできないことをサービスで行い、具体的には、セキュリティ、ロードバランス、コンテンツキャッシュ、分析などがあるという。

James Kelly氏は「4つのプレーンにおいては、マネージメント、サービス、コントロールの部分がソフトウェアで実現されており、これらをすべてハードウェアから分離していく。それが、ジュニパーと他社との差別化ポイントだ」と語った。

「最適な集中化」は、マネージメント、サービス、コントロールの3つのレイヤを可能な限り、中央で一元化することだという。それによって、ソースが1つにまとめられ、プロビジョニングを行う際も1つになる。ただ、一元化には、現在のネットワークと相互運用性を確保しながら実現する必要があるとした。

「クラウドの活用」は、マネージメント、サービス、コントロールのレイヤをできる限り仮想化していくことで、これにより、スケール、経済性、シンプルさを活用できるとした。

「プラットフォームの構築」、「プロトコルの標準化」は、オープンなプログラミングのプラットフォームを活用していくことだという。これにより、拡張性や柔軟性をもたらされ、他社製品との接続性を確保できるという。

そして、「SDNの主要原則を幅広く応用」は、SDNをデータセンターだけの狭い範囲で利用するのではなく、すべてのソリューションにまたがって利用できるものだとした。

同社では、2013年以降、SDNネットワークのメリットを享受するために必要なステップとして、次の4つを考えているという。

ステップ1は、管理を集中化し、一元化することで、Junos Spaceというアプリケーションにより、ネットワーク・マネージメント、分析、および設定機能を集中化を実現することだという。

ステップ2は、サービス仮想マシン(VM)の構築により、基盤となっているハードウェアからネットワーキングとセキュリティのサービスを抽出。これにより、業界標準のx86系ハードウェアを使い、ソリューションに対するニーズに基づいてネットワークとセキュリティのサービスを個別に拡張することが可能になり、この次世代プログラマブル・ネットワークは、2013年第1四半期に提供が予定されているJunosV App Engineにより実現するという。

ステップ3は、コントローラーの集中化で、複数のネットワークおよびセキュリティ・サービスがネットワーク内のさまざまな機器と連携して接続することを可能にするため、集中化されたコントローラーを導入することだという。これは「SDN Service Chaining」と呼ばれ、仮想的にサービスをネットワークトラフィックのフローの中に、ソフトウェアを使って挿入する。ジュニパーでは、Contrail Systems社から買収したSDNコントローラー技術と、JunosV App Engineの進化を通じて、2014年中にSDN Service Chaining機能を提供する予定だ。

そして、ステップ4は、ネットワークおよびセキュリティ・ハードウェアの最適化で、これは継続的に実施していくものだという。

また同社は、ソフトウェアの新しいライセンスおよびメンテナンス向けモデルである「Juniper Software Advantage」も先月発表。これは、企業向けソフトウェアライセンスモデルを基盤とし、ジュニパーの機器と業界標準のx86サーバとの間でソフトウェアライセンスの移行を可能にする。それぞれのソフトウェア向けライセンス供与パッケージおよび新しいライセンスへの移行を2013年に発表する。

James Kelly氏は、「これまではハードとソフトを一体化したアプライアンス思考のライセンス体系だったが、新しいライセンスモデルはハードウェアからソフトウェアを切り離すライセンスモデルで、1つのハードウェアに縛られることをなくし、ライフタイムあわせたライセンスや使用権限にもとづいてライセンスを購入できる」と語った。