2月27日、世界のシンクライアント市場をリードするワイズテクノロジーが「Wyse Cloud Client Computing Forum 2013 ~世界最大規模シンクライアント導入事例にみる最先端仮想デスクトップソリューション~」と題したイベントを開催する。

同社はこれまで、シンクライアントやゼロクライアントなど、エンドポイントのクライアント端末で強みを発揮してきた。イベントではこの取り組みに加えて、現在注目されているスマートデバイスやモバイルワークスタイルに対応した新たな戦略が発表される予定だ。

ワイズテクノロジーが提供するWyse ThinOSシンクライアント端末

仮想デスクトップ市場は好調。しかし、そこに課題も

近年、セキュリティ対策やTCO削減の一環として、仮想デスクトップソリューションの導入を検討する企業が増えている。さらに、事業継続計画(BCP)やディザスタリカバリに対する高い関心、Windows XPのサポート終了が迫っている点などが追い風となり、今後も市場は拡大し続けると見られている。

ワイズテクノロジー 日本法人代表 松浦淳氏

ワイズテクノロジー 日本法人代表の松浦淳氏は「企業内のコンピューティングをリプレースする際、仮想デスクトップソリューションを選択するお客様は多く、引き合いも増えている」と現状について説明する。

一方、シンクライアントの導入を検討する企業にとって障壁となっているのが、初期導入コストという。

「シンクライアントの導入を単なる"クライアントPCの置き換え"と捉えると、初期導入コストが割高に感じてられてしまうかもしれません。しかし、シンクライアントは管理・運用が容易で、中長期的な目で見れば、TCO削減につながる」と松浦氏は自信を見せる。

実際国内でも、日本を代表する某メガバンクが5万台を超えるシンクライアントを導入しており、行内の約9割の端末をWyseのシンクライアントに刷新した。当日のイベントでは、プロジェクトの全貌が語られる事例セッションも用意されている。


15年間のノウハウが詰まったWyse ThinOS

同社がシンクライアント端末専用OSとして提供しているのが「Wyse ThinOS」だ。「Wyse ThinOS」は4MBと非常にミニマムな構成だ。起動後にロードするシステムサイズが小さいため、シンクライアント端末を高速起動できる。また、端末本体についても、必要最低限の仕様となっている。HDDやファンなどの消耗品が搭載されていないため、ライフサイクルが長く、結果としてTCO削減につなげられる。

セキュリティ面では、サーバからシンクライアント端末へコンフィグレーションが自動配信されるため、端末側で一切データを持たない点が特長だ。これにより、紛失による情報漏えいを未然に防ぐほか、端末ごとにセキュリティパッチを適用したり、セキュリティソフトを導入する手間が省ける。まさに「液晶モニターと同じように扱える」(松浦氏)という言葉が、同社製シンクライアント端末の利便性を物語っている。

「CPUやメモリの仕様だけ見れば、他のOS搭載機のほうがハイスペックかもしれません。しかし、本当に必要なのはハードウェアのパワーではなく、シンクライアント端末としてのパフォーマンスやセキュリティ、利便性を確保していることです。ThinOS搭載機は、この点を十分にクリアしています」(松浦氏)

また、3D CADを多用する製造業など、シンクライアント端末をワークステーション用途で活用する企業に向けて、Wyse ThinOSのモデルを引き続き拡張していく方向性も打ち出している。

モバイル市場を視野に入れたソリューションを展開

同社は現在、伸長を続けるモバイル市場に対するメッセージングを強めている。その先駆けとして投入したのが「PocketCloud」だ。これは、スマートフォンを使ってデスクトップにリモートアクセスし、コンテンツなどを閲覧できるソリューションであり、「セキュアな環境で、効率的にデータにアクセスして仕事が行える」(松浦氏)という点がコンセプトとなっている。

「Wyse PocketCloud」

一方、米国で先行リリースした製品の提供も検討している。

1つは、2013年初旬には同社の強みを生かしたモバイルデバイス管理(MDM)として、「Dell Wyse Cloud Client Manager」をリリースする予定だ。スマートデバイスに加えて、シンクライアント端末も含めた一元管理がクラウド上で行える。モバイル市場が成熟期に入った日本市場で、一早い展開が待ち望まれている。

2つめは、HDMI端子を搭載したスティック型端末の「WyseOphelia」。既存のテレビに接続すると、ネットワーク経由でリモートデスクトップに接続できる。一例を挙げると、「ホテルなど、既にテレビが設置されているシーンに提案できるのはないか」(松浦氏)という。この製品についてのコンセプトについてもWyse Cloud Client Computing Forum 2013でもう少し詳しく紹介する予定だ。

Windows MultiPoint Server 2011向けのWyseゼロクライアント(一例)

3つめは、Windows PCを複数人でシェアする際に活用できるWindows MultiPoint Server 2011向けのゼロクライアント。主なターゲットとなるのは、少人数で仮想デスクトップを利用したいと考える教育機関など。「低価格で導入できるため、コスト重視のお客様にご検討いただけるのではないか」(松浦氏)とのことだ。

シンクライアントのトップベンダーであるワイズテクノロジーの取り組みが、今後の仮想デスクトップ市場に大きな影響を与えることは間違いない。2月27日に行われるイベントでは、今回紹介した製品のコンセプトや今後のロードマップについて、詳細が語られる予定だ。仮想デスクトップソリューションに興味のある企業は、ぜひ会場に足を運んでもらいたい。