【レポート】

新たな半導体産業の在り方「Foundry 2.0」を提唱するGLOBALFOUNDRIES

2013年2月7日、GLOBALFOUNDRIES(GF)は都内で記者説明会を開催、同社CEOであるAjit Manocha氏が同社の状況について説明を行った(Photo01)。実はManocha氏は日経BP社が2月6日に開催した世界半導体サミット@東京2013の講演のために来日しており、翌日に開催されたこの記者説明会のあとすぐに帰国された。そんな訳でプレゼンテーションそのものは前日に氏が講演に利用されたものを流用し、そこからダイジェストという形で説明が行われた。

Photo01:同社CEOのAjit Manocha氏

半導体の未来を救うFab 2.0

さて、まず氏による説明から。氏はまず急速なモバイルモバイルマーケットの普及について説明を行い(Photo02)、今後は人口を遥かに超える台数の携帯電話が利用されるだろうとし、その一方でPCなどを使った従来型のInternet Userの伸びはあまり期待できないとしている(Photo03)。この結果として、従来半導体業界における需要の牽引役であったPC向けを超える勢いで、携帯電話向けの需要が伸びており(Photo04)、最終的にはスマートフォンがPCに取って代わってゆくだろう(Photo05)という予測を示した。

Photo02:世界人口が70億程度なのに、すでに携帯電話が60億台近くなっており、その一方でInternetに繋がっている人口は20億程度である。つまり、少なからぬユーザーが1人で複数台の携帯電話を持っているということになる

Photo03:こちらは予測の入らない実データをベースとしたもの

Photo04:2012年~2013年が丁度PCと携帯のクロスポイントであり、これに加えてタブレットなどの携帯機器も計算に入れると、さらに伸びは大きくなるとする

Photo05:もちろんこれは用途によるとは思うが、ある程度代替され始めているのは周知のことである

こうしたトレンドの結果として、よりモバイル向けに高機能かつ低消費電力を実現する半導体が要求されるようになり(Photo06)、この結果としてモバイル向けの製品が従来のPC向けに近いところに導入サイクルが移行しつつあるとした(Photo07)。

Photo06:モバイル向けのさまざまなコンポーネントがどんどん微細化されていくと共に、どんどん集約化も図られているという話である。ちなみにこれはGartnerによる予測とのこと

Photo07:以前はあるプロセスノードでPC向けの量産が開始されてから、それがモバイル向けに利用されるようになるまで2年程度のタイムラグがあったが、最近はこれがどんどん短縮されているという話

この結果として、今後は「先端プロセス」への需要が増えており、37%もの成長率が見込めるとした上で(Photo08)、この結果として今後5年間あたり、毎年1つずつ、60万ウェハを製造できるFabを追加していかないとこのデマンドには対応出来ないとする(Photo09)。

Photo08:氏の定義による「先端技術」は45nm以下のプロセスとの事。もっとも現実問題として、最近のモバイル向けSoCは40nmないし28nmプロセスで製造されているから、概ね正しい認識とは言える。ちなみにこの数字はロジックプロセスの話で、DRAMやFlashなどはまた別との事だった

Photo09:600K Wafer/Yearだから、月産5万枚規模の300mmウェハの量産できるFabを毎年追加してゆく計算になる。ちなみにこの規模のロジック向けFab工場になると、概ね50~70億ドルのコストが掛かることになる

もちろんこれは携帯機器向けのみの話ではなく、様々なほかの分野でも同様のトレンドがおきつつあるとし(Photo10)、これらは単に技術的なチャレンジだけではなく、経済的なチャレンジも同時に発生していくとする(Photo11)。

Photo10:最近は自動車業界向けもやはり急速に拡大しつつあり、ここも新しい技術の導入で次第に規模が拡大しつつある。同社はファウンドリビジネスなので、当然こうした全業界向けの製品を手がけている

Photo11:これは良く聞く話である。氏曰く「われわれが安眠できない理由がこれ」。まぁ常にせめぎあいが続くのは致し方ないところではある

こうした要求をすべて満たしてゆくためには、従来型のIDMや、Foundry 1.0ではすでに解決が難しい、というのが氏の主張である(Photo12)。この背景にあるものの1つは、LSI製造のエコシステムが複雑化していることである(Photo13)。

Photo12:Foundry 1.0とは何ぞやというのは後述

Photo13:従来ならばすべてIDMが一貫して提供できたさまざまなソリューションだが、現在は複数のベンダにまたがらざるを得ないし、こうした幅広い範囲の複雑なエコシステムを使うのに、IDMや従来型ファウンドリでは不十分、というのが氏の主張

こうした事柄に対する解決策として、氏が提唱しているのが「Foundry 2.0」である(Photo14)である。元々のアイディアは、当初はばらばらにサービスを提供していたベンダが、ジョイントベンチャー(JV)あるいは買収などで複数のサービスを提供するようになり、次いでAllianceを提携して、最終的には様々なファブレスベンダとファウンドリが協業してすべてをカバーするサービスを提供するようになる、というものである。

Photo14:これは2008年に氏が説明した内容である。当時、氏はPhilips Semiconductorに在籍しており、2020年にはこうなるとした内容が「すでにもうこうなっている」そうである

例えば同社はこの(Photo15)リストで言えばオレンジの部分を提供し、ブルーの部分は他のパートナーが提供することになるが、これを共同で提供することで、いわばVirtual IDMを提供するのがFoundry 2.0であるとする(Photo16)。

Photo15:全部を1社でやるのは当然無理であり、だからと言ってサービスを絞ると顧客のニーズに応えられない。そこで、関係するベンダや顧客まで巻き込んでの協業という形にするのがFoundry 2.0になるというわけだ

Photo16:言いたいことはまぁ判らなくもない

毎年新たなプロセスの立ち上げに挑むGF

ここから話は同社の現状と今後について切り替わった。現状同社は業界2番手のポジションにつけており(Photo17)、また昨年は記録的な成長率を果たしたとする。さらに今後については、毎年新しいプロセスを立ち上げてゆくほか(Photo18)、4つのチャレンジについても積極的に取り組んでいくとしている(Photo19)。すでに同社は2013年1月、ニューヨーク(NY)のFab8に20億ドルを投じてTDC(Technology Development Center)を開設する事を発表しており、これによって技術開発やロードマップの充実を可能にできるとした。またすでにFab1とFab7の2つのFabに加え、まもなくNYのFab8も稼動する事を紹介した(Photo21)ほか、10nm世代の開発も加速していることにも触れた(Photo22)。

Photo17:4年前は4位だったとするが、当時は旧AMDのFabだけで、その後Chartered Semiconductor Manufacturingを買収した結果の2位だから、これがそのままFoundry 2.0の成功に結びつくかと言われるとちょっと首を傾げざるを得ない

Photo18:今年は20nmのBulkを、そして来年にはFinFETを導入する予定。このあたりについては後述

Photo19:450nmの導入時期についても後述

Photo20:TDCでは、TSVによる3D StackingやEUV露光などについて、パートナーと共同で開発を行うための設備で、2014年末の完成を見込んでいるとか

Photo21:この翻訳はちょっと不正確で、オリジナルは例えばFab 1は"45nm and below"で、つまり45nm以下になる。実際Fab1は32nmSOIと28nmの製造も行っている。ただ20nm以下については、当面NYのFab 8がターゲットであろう

Photo22:左が主な研究パートナーで、ニューヨーク州立大のCNSE(College of Nanoscale Science and Engineering )JDA(Joint Development Alliance)ベルギーのIMEC(Interuniversity Microelectronics Centre)米SRC(Semiconductor Research Corporation)シンガポールのIME(The Institute of Microelectronics)などと提携をして技術開発を行っていることを紹介した

最後にまとめとして、Foundry 2.0に必要な要素を同社が提供できることを改めて紹介し(Photo23)、これが日本の電子産業に貢献できる(Photo24)と締めくくった。

Photo23:同社としては、TSMCにない強みとして地理的にグローバルであることを強調したいようで、何度かこの「グローバルな分散」が出てきた。実際のところ、明示的に勝っているのはそのくらいしかない、とも言えるが

Photo24:これはちょっと説明が必要。野球に例えれば、日本は2塁までは進出できているが、3塁やホームに進出できない状況であるとした上で、「まだゲームセットではなく、6回裏の段階だから、これからまだ挽回できる」として、Foundry 2.0に参画を呼びかけたものである

さらにこの後の質疑応答では、まず28nmに関してはTSMCに対して遅れを取ったことを認めた上で、ただしすでにテープアウトしたデザインが100以上あり、現在急速にキャッチアップしようとしている、と説明した。また設備投資に関しては、2012年には35億ドル、2010年~2012年の3年間では120億ドルを投資したが、2013年はこれを45億ドルに増額する予定とのこと。この設備投資の内訳は公開できないが、NY/ドイツ/シンガポールのそれぞれに投資を行うとの事だった。また450mmに関しても、G450 Consortiumに加盟しており、これに併せて活動を行っているが、それが2017年なのか2019年なのかというタイムフレームに関しては現状まだ不明とし、「最初に450mmを導入することはないと思うが、最後でもないと思う」とした。

さて、時間も無かったため、あまり将来のロードマップなどを深く説明することなく終ってしまったのだが、もう少し補足などを。まず最後に出てきた日本との係わり合いであるが、もともと今回の説明会の下敷きが前日の日経BP社の講演のもので、この前日の講演では日本の半導体業界に関しての言及が冒頭にあった(Photo25~29)事と関係していると思われる。

Photo25:これは今更説明の必要はないだろう

Photo26:ここでUMCを抜いたのは意図的かどうか。20nm世代からUMCもCommon Platformに参画する形になるので、要するにCommon Platform、TSMC、Intelという3大陣営に集約される形になる

Photo27:こちらも説明の必要は無いだろう。日本はすでに新規Fabの建設どころか、旧来のFabの閉鎖や売却が急務となっているのが現状である

Photo28:氏が一番訴えたかったのはここであろう

Photo29:Disるだけでなく、ちゃんと持ち上げているところは流石であるが

GLOBALFOUNDRIESとしては、当然ながら自社Fabを使って製造を行うベンダを少しでも増やしたいわけで、日本企業はそうした観点で有力な顧客候補である。Foundry 2.0というのは、要するに「従来型の日本のIDMのやり方ではもう立ち行かないし、TSMCなどの提供するサービスも先端プロセスでは十分ではないから、どうぞ一緒に開発しましょう」という意味である。

このメッセージがいまいち説得力に欠けるのは、肝心の28nmの立ち上げに失敗しているからであるが、元々GLOBALFOUNDRIESは28nmに関して、HKMGの構造とか一部の設計ツールなどは32nm SOIと共通なので、32nmが立ち上がれば28nmは難しくないというものだった。ところがその32nm SOIですら難航し、やっと2012年中に歩留まりの改善に成功したというレベルなので、28nmに関しては2013年が本番という事なのかもしれない。

そのGLOBALFOUNDRIESは、2月5日にSanta Claraで開催されたCommon Platform Technology Forum 2013の開催にあわせて、Synopsysと共同で設計ツールを提供するとかRAMBUSと共同で14nm-XM向けにIPの開発を行う、14nm-XMを使ったDual Cortex-A9プロセッサの試作を行うなどの発表を行った。28nmに関しても、AMDのPiledriverで実装されたCyrosのResonant Clock Meshを28nmのCortex-A15に実装したほか、AdaptevaのEpiphany IVの製造が同社の28nmプロセスで行われたことを発表するなど、手を緩めていない。

実のところCommon Platformは元々IBMの32nm SOIをベースに28nm世代を開発しているので、余り28nmには力が入ってないのだが、とはいえまだまだしばらくは28nm世代の需要はかなりあるから、いつまでも手を抜いている訳にはいかないし、これがうまくいかないと20nm世代の立ち上げも難しくなる訳で、しかも14nm-XMは20nmの配線+14nmのFinFETという組み合わせなので、14nm-XMの立ち上がりにも影響しかねない。質疑応答でManocha氏は「急速にキャッチアップしている」としたが、それが出来ないと今後のロードマップに思いっきり影響が出ることになる。

Common Platfotm陣営としては、この14nm-XM世代でTSMCやIntelに追いつくことを狙っており、ここに向けて全力投球というのが現状である。

当初は2012年に同社の28nmを使うことを予定していた大口ユーザー(その1つがAMDだ)には大分逃げられてしまった同社だが、2013年にこれをリカバーできるかどうか、が20nm世代や14nm-XM世代の動向を占う1つの目安になりそうである。

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