組込み技術における初級エンジニアの育成をテーマにした、組込みソフトウェアモデリング+ロボット制御コンペティションの「ETロボコン」。10年を超える歴史を持ち、年に1回、予選的な全国11ヵ所での地区大会と、その各地区の上位を集めたチャンピオンシップ(CS)大会が開催されているロボット系競技会だ。2012年は全国で337チーム、約1900人が参加した。

競技は、プログラミングの完成度と、レゴ マインドストーム NXTのパーツを用いたワンメイク(オプションであるBluetoothの搭載・非搭載意外は全チームがすべて同一の性能)の倒立2輪振子型ロボットによるコースの走行タイムの早さの2点で競われる。2012年も、東京地区大会と、CS大会をレポートしているので、競技の模様や詳しいルールなどはそちらをお読みいただきたい。

そして2012年のCS大会は、HELIOS(アドヴィックス)がETロボコン史上初となる2連覇を達成した(画像1・2)。CS大会の総合優勝チームには、特典として「マイナビニュースに優勝インタビューが載る権利」が与えられる。

2年連続となる同チームへのインタビューだが(2011年のインタビューはこちら)、前回とはメンバーが半分ほど替わり、入社2年目と1年目という完全な若手による編制となった。よって、若手ならではの面白い話をいろいろと伺えた。

画像1。2012年CS大会の表彰式でのHELIOSのメンバーの様子

画像2。インタビュー中のHELIOSのメンバー

なお、さらにもう少しHELIOSについて触れておくと、2008年にも前身のADoniSで総合優勝を果たしており、さらにいえば、ここ5年はCS大会の総合部門で常に優勝もしくは上位に名を連ね、モデル部門では2008年以降2位以下になったことがないというまさに強豪という実績を持つ。

2011年はエンジニアとしてもキャリアがあり、なおかつETロボコン参加歴5年の斎藤信行氏がリーダーを、参加歴6年目で09~11年のモデル部門1位のエクセレントモデル3連覇の原動力となった酒井英子氏がサブリーダーを務めており、ETロボコンは「初級エンジニアを中級に成長させる」ことをコンセプトの1つとしているので、この両名だけでももはや反則ではないかというぐらい強力な布陣だった(画像3)。

画像3。前回(2011年)のメンバー。後列1番左が、今回はスーパーバイザーとして参加した斎藤信行氏で、後列中央がモデル部門3連覇の原動力となった酒井英子氏

しかし、2012年はその両名がチームを抜け(本人曰く「カメラ担当」だそうだが、斎藤氏のみスーパーバイザーとして参加)、2011年の新入社員として参加した4名が残り、そこに2012年の新入社員5名が加わるという若手編制となったのである。

HELIOSとしてのチームの長年のノウハウはあっても、ベテランから若手への「引き継ぎ」に失敗すれば、今回の優勝はなかったはずだ。ETロボコン全体を見れば、HELIOSよりももっと長くCS大会の常連となっているようなチームはあるが、毎年必ずCS大会に進出してなおかつそこでも上位の成績を残しているというチームは多くはない(CS大会への進出すら逃してしまうチームだってある)。

もちろん会社の方針や本業との兼ね合いなど、さまざまな都合もあっただろうが、中には継承がうまくいかなかったチームもあるのではないだろうか。そうした点も含め、2012年の若いメンバーにインタビューを行ってみた。

なお、本来同チームは9名で構成されているが、3名が工場実習ということでCS大会の会場であるパシフィコ横浜には足を運べなかった。よって、2年目の4名と、1年目の2名、そしてスーパーバイザーの斎藤氏の7名に話を伺った形である。チームメンバーは以下の通りだ。

  • 堀江佑太氏(制御第1技術部:リーダー(入社2年目))
  • 今隼太氏(信頼性技術部:サブリーダー(入社2年目)、モデル担当)
  • 原島賢太氏(制御第1技術部(入社2年目)、ルックアップゲート、東海地区大会までの基本(ベーシックステージ)走行担当)
  • 仲本朝哉氏(品質保証部(入社2年目)、階段・ドリフトターン担当)
  • 中野拓也氏(制御第4技術部(入社1年目)、シーソーを下りた後の復帰担当)
  • 塚本駿氏(研究開発部(入社1年目)、CS大会の基本走行担当)

  • 斎藤信行氏(制御第1技術部:スーパーバイザー)

CS大会には参加できなかったメンバー

  • 松岡正憲氏(研究開発部(入社1年目))
  • 金森洋介氏(制御第2技術部(入社1年目))
  • 小野寺真悦氏(制御第4技術部(入社1年目))