人前でイチャイチャするカップルの心理とは

駅やレストランなど、端から見ているとこちらが恥ずかしくなるくらいに抱き合ったりキスしたりしているカップルっていますよね。その一方で、人前でそういった行為をするのは嫌だというカップルも少なくありません。この違いは、一体どこにあるのでしょうか。化粧心理学者で、大学では恋愛心理学の授業も担当している平松隆円さんに解説していただきます。

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イチャイチャするカップルは安定度低め?

人目をはばからずにイチャイチャしているカップル。一見すると、お互いのことが好きすぎて離れ難いとか、愛情の表現としてイチャついているのだと思ってしまいますが、心理学的に考えると大きな問題をはらんでいるのです。話はカップルたちの乳幼児期にさかのぼります。

人は誰しも生まれてからすぐは、自分の力だけでは生きていけません。食事や身の安全など、親や周囲の大人たちに守ってもらわないといけないのです。もし、自分を守ってもらう存在がいなくなったとしたら、生きていけなくなり大変なことになります。そのため、自分を守ってくれる養育者との間に情緒的なつながり(=アタッチメント)を持ち、関係を維持しようとします。養育者が自分から離れていかないように、泣いたりしがみついたりする乳幼児行動が、アタッチメントになります。これは、心理学では愛着理論とよばれる考え方です。子どもは、アタッチメントを通じて、自分に必要な保護を得るだけではなく、自分が社会の中でどういった存在なのかということを学びます。

例えば、養育者が自分から離れようとしたときに泣いたとして、すぐに戻ってきてくれたのなら、自分は大事にされていると養育者に対する信頼や安心を感じます。ですが、泣いてもなかなか戻ってきてくれないのなら心配し不安になり、必要以上に泣いたりしがみついたりするようになるのです。

この乳幼児期のアタッチメントが、大人になったときの恋愛に影響します。恋人から愛されていると安心し、信頼しているカップルは必要以上のアタッチメントをとりません。反対に、例えば付き合い始めたばかりで、相手がどこかに行ってしまうのではないかと不安なカップルほど、抱き合ったりキスしたりしてしまうのです。言ってみれば、カップルの抱き合うという行動は、乳幼児が養育者にしがみつくことと同じなのです。

では、イチャイチャしていないカップルの方が、しているカップルよりも相手を信頼し愛情を感じているかといえば、1つ落とし穴があります。自分は愛されているのだという安心がイチャイチャするという行動を抑制するのと同時に、自分は全く愛される価値がないのだと諦めていても抑制します。

つまり、乳幼児がどんなに泣いても養育者はもう戻ってきてはくれないのだと諦めてしまえば、泣くだけ無駄だと泣きやんでしまうのと同じなのです。「どうせ、私は愛されていない。この人はいずれ違う恋人をつくるのだろう」という思いがイチャイチャを抑制するのです。

人前でイチャイチャしているカップルに遭遇すると不快に感じてしまいがちですが、不安で離れがたいのだなと知ってもらえれば、少しは温かい目で見られるようになるかもしれませんね。

著者プロフィール

平松隆円
化粧心理学者 / 大学教員
1980年滋賀県生まれ。2008年世界でも類をみない化粧研究で博士(教育学)の学位を取得。国際日本文化研究センター講師や京都大学中核機関研究員などを歴任。専門は、化粧心理学や化粧文化論など。よそおいに関する研究で日本文化を解き明かしている。大学では魅力をテーマに恋愛心理学も担当。 NTV『所さんの目がテン! 』、CX『めざましどようび』、NHK『極める 中越典子の京美人学』など番組出演も多数。主著『化粧にみる日本文化』は関西大学入試問題に採用されるなど、研究者以外にも反響を呼んだ。