NTTドコモは2月5日、全国のドコモショップ店員の代表者を集めた顧客対応コンテスト「ドコモショップスタッフ応対コンテスト マイスター・オブ・ザ・イヤー 2012 全国大会」を実施した。全国35,000人のドコモショップスタッフの中から選ばれた9地域の代表9人が、実際の顧客対応を行ってその内容を競うというもので、優勝は北海道地区代表でドコモショップ苗穂店の徳永飛鳥さんだった。

コンテストは、北海道、東北、関東・甲信越、東海、北陸、関西、中国、四国、九州の9地域の代表で競われた

コンテストは、来店した顧客の要望に応えるというロールプレイング形式で行われた。顧客の要望として4つの事例が用意されており、そのうちの1つを各代表者に割り当てる形で実施された。代表者は事前に事例の概要だけは知らされているが、自分に割り当てられる事例は本番30分前に知らされ、それぞれは実際に自分の店舗で使っている説明資料を駆使するなどして、顧客の対応を行っていた。

実際の顧客対応の様子。普段ショップで使う資料も持ち込んで、リアルな接客を行っていた

事例は、MNP希望の顧客を引き止める「ポートアウト抑止」、iモードケータイ利用者の機種変更希望に応える「新規・買い換え相談」、端末がフリーズするという「フリーズ」、充電しても電池残量が変わらないという「充電不良」の4種類。15分間の時間制限の中で、顧客から要望を聞き出し、解決策を導いていくという流れになっていた。各事例とも、実際によくあるシチュエーションということで、代表者はそれぞれの経験と技術を生かした顧客対応を行い、それを同社加藤薫社長をはじめとした審査員が審査し、優勝者を決めるという形になっていた。

取締役常務執行役員の田中隆氏は、「ドコモを支えているのはこうしたスタッフ」と強調。その中でも各地区の代表者の応対は、「15分間の限られた時間内で言うべきことは伝えられていた」と称賛する。

加藤薫社長

田中隆常務

ポートアウト抑止の事例では、iPhoneを使いたいという声に対し、顧客のやりたいことを聞き出して、それに対してドコモのスマートフォンでできること、料金プランなどを説明して翻意を促すというもの。これに田中常務は「iPhoneは強い部分があり、実際に出ていく人は多い」と認める。

アプリの使い方の問題や電池の持ち、フリーズといった故障と思われる問い合わせも多いが、アプリなどの使い方を説明していくことで状況が改善される例もあるという。実際に代表者は使っているアプリや使い方を聞き出し、そこから解決策を導き出そうとしていており、こうした対応をほかのショップに対しても「水平展開」していくことが、今回のトーナメントの1つの目的でもあるとしている。田中常務は、「この4つのテーマは、実際にも多いし、(ほかのショップスタッフにも)伝えていきたいテーマ」と話す。

今回のトーナメントは、全国大会形式になって4回目だが、スマートフォンの登場で、ショップの接客時間は増えている。今回は15分制限のロールプレイだが、実際の接客ではさまざまな声に応えるため、長時間にわたる対応が必要になっている。優勝者の徳永さんも、「家族4人で半日かかったこともある」ということで、感覚的には従来よりも倍の時間がかかるようになっているそうだ。

優勝者の徳永飛鳥さん(写真右)と加藤社長

それに対して、ドコモでも時間短縮の取り組みを始めており、例えば待っている顧客に対してタブレットを渡し、料金プランや他社との比較などをしてもらったうえで、同社の管理システム「ALADIN」と連携させ、プランや住所の変更、新サービスの適用など、その場でできる手続きはそのままタブレットで行えるようにしている。これはいくつかのショップで検証を開始しているそうで、検証の中で、例えば料金シミュレーションの機能を盛り込むなど、改善を進めている。

スマートフォンによる接客時間の増大は、顧客側がまだスマートフォンに慣れていないという面も大きいと田中常務。「基本的に設定はお客様にやってもらうもの」だが、初めてのスマートフォンだと、それが難しい場合も多い。そのため、パンフレットなどで推奨設定を例示したり、設定を行うだけのカウンターを設けたほか、遠隔サポートアプリを提供し、自宅からでも、遠隔でサポートを受けられるようにしている。

それでも、やはりスマートフォンは難しいという人もいる。そういう人には「らくらくスマートフォン」が人気で、すでに「40万台ぐらいはいったと思う」と田中常務は語る。スマートフォンの機能をより簡単に使いたいという人に向けて、「次のモデルも出すことになるだろう」とのことだ。ほかにも、初心者でも使いやすいようにUIを改善したり、設定方法の資料配付、使い方の紹介などを実施していき、「スマートフォン初心者にはドコモのスマートフォンがいい」と言えるようになることを目指しているという。

優勝者の徳永さんは、従来は端末を紹介するだけで良かったが、最近はやりたいことを聞いて、それに合った機種やサービスを提案するようになっており、接客が難しくなっていると話す。故障対応の原因特定も難しく、月々サポートなどの料金プランの説明なども長時間化しているが、「楽しさもあり、期待も大きい」という。

※編集部追記(2013年2月8日)
出場スタッフの発言の内容に誤りがあったため、該当箇所を修正致しました。読者の皆様ならびにご迷惑をおかけしました関係各位の皆様に深くお詫び申し上げます

実際、訪れる客の数は増えているということで、例えば対応の最初に時間の目安を伝えて目安を知ってもらうなど、工夫をしながら接客を行っているという。やはりiPhoneの人気はあり、ドコモの端末やサービスでカバーできる点を紹介するなどして、客にメリットを伝えているが、それでもどうしてもiPhoneを使いたいと言われた場合は、ドコモを使ってもらって不満に思われないためにも、無理には勧めないようだ。ちなみに、SIMロックフリーiPhoneの持ち込みは、「サポートがないので、基本的にはおすすめしない」(同)が、これまで1年間に2件程度のSIM発行をしたという。

徳永さんは、ドコモショップでの接客を通して、「今は(スマートフォンへの認知の)過渡期」と指摘。今後、スマートフォンに慣れたユーザーが増えれば、接客時間の長さなどの問題は落ち着くとみている。

(記事提供: AndroWire編集部)