Windows 8のライセンス販売が6000万本を突破し、順風満帆のように見えるWindows 8だが、NUI(ナチュラルユーザーインターフェース)や2000年半ばから重要なキーワードとして持てはやされていたクラウドコンピューティングなど、今後クライアントOSとして成長する範囲は多岐にわたる。そこで先頃Microsoftが発表した「Cloud OS」という新ブランドを基にクライアント版Windows 8の進化を愚考する。

クライアント版Windows OSはクラウドへ向かうのか

改めて述べるまでもなくMicrosoftはOS(オペレーティングシステム)で立身した企業である。MS-DOSそしてWindowsとOSをリリースし、現在に至っているが、その流れは未来永劫(えいごう)続くものではない。現にタブレット型コンピューターの台頭により、デスクトップ/ノート型コンピューターの出荷台数が減っているそうだ。米国の調査会社であるGartnerが2012年10月10日(現地時間)に発表した資料によると、2012年Q3(第3四半期)における世界のコンピューター出荷台数は8,750万台。前年同期比で8.3パーセント減となる。

もちろんWindows 8リリース直前の数値であることから、コンピューターベンダーは新製品のリリースを控え、消費者も新しいOSが登場するタイミングでは買い控えても致し方ない。だが、IDCが2012年11月5日(現地時間)に発表した資料によると、2012年Q3のタブレット出荷台数は前年同期比で49.5パーセント増の2,780万台。コンピューターのトレンドが移行していることは誰の目にも明白である。

そのためMicrosoftは、タブレット型コンピューター上での操作性を考慮したモダンUIをWindows 8に搭載し、従来のデスクトップ/ノート型コンピューターとタブレット型コンピューター両方をターゲットにしたのだ。この点だけ見ればWindows OSの開発担当責任者だったSteven Sinofsky(スティーブン・シノフスキー)の大胆な方針転換は間違いではない。だが、ユーザビリティの観点から見るとWindows 8は、中途半端な印象を持たれかねないだろう。

確かにUI(ユーザーインターフェース)の革新は過去そして今後のコンピューターに欠かせないものである。そのためWindows OSが対応に向けて行った一連の改革は、これまでデスクトップというメタファーをまとい、スマートフォン技術では後塵(こうじん)を拝したMicrosoftにとって欠かせないものだった。次期Windows OSもしくはWindows 8 Service Pack 1と噂されている「Windows Blue」も同様の方向性で進むのかは不明だが、Microsoft Office 365のようにアプリケーションやサービスがネット上で展開されるようになると、OS自体もクラウド化する可能性は拭いきれない(図01)。

図01 Webブラウザー上で動作する「Microsoft Office 365」のWeb Apps

1996年頃、Sun Microsystems(サン・マイクロシステムズ:現在はOracle(オラクル)に吸収合併)はNC(Network Computer:ネットワークコンピュータ)を提唱し、ディスクレスのデスクトップ型コンピューターをリリースした。Microsoftは対抗策として、Windows CEをベースとした「Windows Based Terminal」や「Windows NT Server 4.0 Terminal Server Edition」を発表。このとき培われたターミナルサービスは現在のリモートデスクトップに連なっていく。2011年に「Windows Thin PC」というシンクライアントOSをリリースしたことは記憶にも新しい(図02)。

図02 2011年にリリースされた「Windows Thin PC」

このような流れで興味深いのが、近年のMicrosoftが多用するキーワード「Cloud OS」だ。昨年リリースしたWindows Server 2012の発表会や、Server and Cloud PlatformのWebページでも同キーワードを用いている。1月15日(現地時間)には「System Center 2012 Service Pack 1」のリリースを発表し、Microsoftのサーバー&ツールビジネスおよびクラウドOSマーケティング担当副社長であるMichael Park(マイケル・パーク)氏は自社ブログでCloud OSの解説を行った(図03)

図03 「Cloud OS Vision」と題してクラウド化への取り組みを紹介している

発表内容は各クラウド上に展開したデータセンターのリソースを、System Center 2012 Service Pack 1なら単一のプラットフォームとして管理できるというものだ。エンドユーザーと関わる点がないため割愛するが、ポイントはWindows ServerとWindows Azureを組み合わせた環境を「Cloud OS」というブランド名で強調している点である。Cloud OSは現時点でビジネスソリューションに位置付けられるものだが、ネットへの常時接続が当たり前となるデスクトップ型コンピューターなどが、クラウド化していく可能性があるのではないだろうか。

Windows 8では、各種設定やWindowsストアアプリ情報をMicrosoftアカウントに紐付けて、設定のクラウド化を実現している。また、同社のオンラインストレージサービスであるSkyDriveを新たな保存領域としてプッシュしている姿勢も明白だ。エンタープライズ向けの発表情報だが、今後のクライアント版Windows OSに影響を及ぼし、その範囲が「Windows Blue」に及ぶかは不明だが、十年以内には今とは違うWindows OSを手にすることができるはずだ。

阿久津良和(Cactus