Intelの日本法人であるインテルは1月18日、都内にて2012年の業績と2013年の同社の経営方針や日本での取り組みなどの説明を、同社代表取締役社長である吉田和正氏が行った。

将来に向けた基礎を築いた2012年

インテル代表取締役社長の吉田和正氏

同社の2012年第4四半期(2012年10~12月期)に業績は既報のとおり売上高は前年同期比3%減の135億ドル、純利益は同27%減の25億ドルであり、通期業績は売上高が同1.2%減の533億ドル、純利益は同15%減の110億ドルとなったが、吉田氏は、「成長としては厳しいものだが、事業の内容としてはさまざまな取り組みを有効に実行できた年」と評した。

Intelのミッションは、コンピューティング技術のイノベーションを起こし、それを通して世界中の人の生活を豊かにしていくことだ。「この5年程度で世界が急変した。これまではPC、インターネット、そしてサーバの組み合わせがIntelの成長を支えてきたが、PCだけでなくさまざまなデバイスが搭乗し、それがインターネットにつながり、色々なサービスを利用することが可能となった。2012年はスマートフォンやタブレットが大きく成長したが、今後、そうした変化が加速していくこととなることが見込まれており、我々としても2012年はそうした変化に対応するための一歩を踏み出した年となった」と吉田氏は2012年を振り返る。

2012年の業績は前年比でマイナス成長となったものの、今後の成長に向けた新分野への橋頭保の確保などが進められた年になったという

また、「PCはスマートフォンやタブレットの市場拡大に押され、もう成長が見込めないのではないか、という風潮もあるが、PCの中身を見てもらうと、小型薄型化が進み、さらに今度はタッチセンサへの対応などによるタブレット化といった進化を見せている」と、デスクトップやノート型といった外側の変化は少ないものの、中身に関しては進化が続いているとした。さらに、そこで重要となるのが「低消費電力ながら高性能を実現できるということ。リッチなユーザー体験を実現するためにはPCでもタブレットでもスマートフォンでもやはり性能が高いことが重要。ここで言う性能というのはCPUの高性能化ではなく、システム全体としてどうかということとなるが、Intelとしてそうしたものをユーザーに届けようという意思表示の年となった」ともした。

特にUltrabookの登場によりPCという定義が変わり、コンパチブル型やデタッチャブル型も登場し、タブレット的な利用も可能になるなど、フォームファクターが大きく変化しつつあり、将来的にはスマートフォンやタブレットも吸収していくことが見込まれるとする。また、スマートフォン分野への注力も2012年に進められた。すでに世界17カ国で同社のプロセッサを搭載した7機種の製品が販売されており、ラインアップが強化される2013年には、この数値はさらに拡大することが期待されるとした。

スマートフォンやタブレット市場の成長は、サーバ分野の成長にもつながったという。特にXeon E5ファミリは同社史上最速の立ち上がりをみせたほか、Atomサーバの登場により、mWオーダーの製品から、Xeon PhiのようなHPC向けのテラフロップスオーダーの製品までをシームレスに提供できるようになっており、製品の提供体制が整備される2013年はより高い成長が見込めるとする。

こうした取り組みについて吉田氏は「半導体プロセスの微細化を実現できる最先端に立つ企業だからこそ」と評価する。すでにPC分野では50%以上の製品が22nmプロセス品に置き換わっており、そうした製品には3Dトライゲートトランジスタなどの新たな付加価値技術が搭載されている。吉田氏は「今後の半導体プロセスの進化を、どのように新しい付加価値につなげて、3年後には30億人に達すると言われるインターネットユーザーに提供していくか。インテルアーキテクチャであるからこそ、さまざまなことが実現できる、ユーザー体験が一番優れていると言われることを目指した取り組みを進めていく」とする。そうした実現のために2013年は、125億~135億ドル程度の設備投資を実施する計画だとする。

次世代プロセスとなる14nmの製造に向けたものに加え、450mmウェハの実用化に向けた施設などにもその多くが投じられる計画で、「450mmウェハを量産に適用しようとすれば、半導体製造装置ベンダが多くいる日本の役割が必然的に高まってくる。すでにそうした多くの協力ベンダと450mmウェハの移行に向けた取り組みとして2012年7月よりJapan Metrology Center(JMC)を立ち上げ、各種の測定サービスなどを提供し、装置ベンダの研究開発の加速を支援している」と日本という地域の重要性を強調する。

これまでプロセスの微細化はムーアの法則を達成するための最大のドライバ役であり、今後もそれを維持していくというのがインテルの姿勢。そのために次世代は14nmプロセスを立ち上げることとなるが、同時に450mmウェハの量産適用に向けた取り組みも進めることとなり、それが研究開発ならびに設備投資費用を上昇させる要因となる。日本には多くの半導体製造装置ベンダやウェハベンダが存在しており450mmウェハでの量産を実現するためにはそうした各企業の協力が不可欠となる

また、「450mmウェハでの量産は単なるウェハサイズを巨大化するというだけの意味合いではない」と指摘。450mm化に併せて、さらなる低消費電力化、高性能化、低コスト化などが可能となるとし、近い将来、450mmウェハでの量産が実現されることになるだろうとした。

2013年は半導体ベンダからソリューションベンダへの進化を目指す年

では2013年はどうなるかというと、22nmプロセスを採用する第4世代Coreプロセッサファミリとして位置づけられる「Haswell(開発コード名)」が投入されることとなり、これにより「PCのイノベーションはもとより、モバイルデバイスの新たな可能性が示されることになる」とする。

Haswellにより、さらなる低消費電力化、小型薄型化、そして軽量化が進むことで、高い性能を維持したままファンレス化などが実現される可能性が高くなる。そうなればデザイン性は向上することになるだろうし、バッテリの寿命も延長されることとなる。「これまでのUltrabookは、ノートPCと変わらないと言われてきた。しかし、Haswellの投入により、その姿が大きく変化することになる」と吉田氏は語る。また、Haswell以降の新たなユーザー体験を実現するものとして五感を活用するようなインタフェースの研究も進められており、こうした成果がHaswellでも取り入れられることになるという。

五感を活用したインタフェースにより、コンピュータはより感覚的に操作することが可能になるということで、Haswellはそうした機能を実現するための最初のステップの製品となる

しかし吉田氏は「スマートフォンを中心としたモバイル機器において、プロセッサがIntelになったとしても、それをエンドユーザーは気にしない状況」と分析しており、エンドユーザーに対してよりも、他のアーキテクチャを用いるタブレット/スマートフォンよりもPCとの親和性による開発コストの削減や、ソフトウェアの連動性などをエンジニアなどに付加価値として提供していくとし、WindowsのほかにもAndroidへの対応も強化していく姿勢を示した。

また、日本地域を見た場合、「高速ネットワーク環境が整備されているという意味で、どういった機器が利便性が高いのか、ユーザーからすればどういったものが良いのか、というニーズを調べる最善の地域。そのためそういったニーズを本社に日本法人として提案していきたい」とするほか、モバイル機器の活用によりクラウドサービスの利用拡大が見込めることから、「データセンターのリプレースなどが期待できるほか、スーパーコンピュータなどの分野での話題が増えてくると思っている」との見方を示し、「単にPC向けデバイスを売る、というのではなく、今後、タブレットとの垣根がなくなってくることを考えると、ネットワークに接続する端末としてのPCという意識を持ってPC市場の拡大を目指す」とするほか、インテルアーキテクチャベースのスマートフォンやタブレット市場の拡大、それに伴うデータセンター/クラウド分野でのサーバ市場の拡大やリプレース。そしてインテリジェントシステムや車載製品、イメージング分野といった組込市場の拡大に向け、ソフトウェアやサービスといった分野と、Intelのプロセッサの上でどういったことを行うことで新たなユーザー体験を実現することができるのか、といった連携を強めており、その結果として国際競争力の強化、教育・人材開発、災害対策、少子高齢化、エネルギー問題、医療の高度化といった現代日本が抱える社会的な課題を解決できるソリューションをICTで創り出すことができるようになるとした。

2013年におけるインテルとしてのスローガンと、日本における活動の目標

「日本は素晴らしい国であり、世界の中でも生活がしやすい。インテルとしても日本からICTの利活用を中心にエネルギー消費を抑える取り組みなどを本社に向けて提唱してきており、2013年はそれをさらに強化し、世界に向けたメッセージとして発していきたい」と吉田氏は語り、「Intelは新しいことに挑戦していく気概を持つ企業。そうした意味では2013年は、新しい姿へと生まれ変わる年で、従来のPCとサーバに向けた製品を提供するというビジネスだけではなく、インテルアーキテクチャをべースとした製品を搭載したさまざまな機器が、シームレスにつながるソリューションを提供していく企業になるための取り組みを進めていきたい」と今年の抱負を語った。

日本はネットワークのインフラ、コンピュータの進化を支える各種の製造技術や材料技術、そして高い品質の実現へのこだわりといったものを有しており、そうしたすばらしい点を生かし、世界に向けて日本発のイノベーションを広めていきたいというのが吉田氏の考え。(中旬も過ぎようとしているが、とは本人も語っていたが)1月ということもあり、書初めを披露。書かれたのは「Big Hairy Audacious Year」で、元々は1994年に発行された「Built to Last: Successful Habits of Visionary Companies」の中に記載された「Big Hairy Audacious Goal(BHAG)」という言葉。書初めでは最後がGoalではなくYearになっており、吉田氏は「今年はすごいパッションを持って、新しいチャレンジを行っていく年にする」という決意表明であると説明していた