発表から5年を経過してもなお根強い人気を持つPCゲーム『Aster』のエンディング曲でRitaが歌う「夢を見る夢」。この楽曲からインスパイアされ、「失ってしまった愛する人への断ち切れない思い」を描いたコンセプチュアルアルバム「星ノ雨-Closed Garden-」が2012年12月26日にリリースされた。

2012年12月26日にリリースされたRita「星ノ雨-Closed Garden-」のジャケットイメージ

今回のアルバムは、2012年10月から放送されたTVアニメ『リトルバスターズ』の主題歌を担当するなど、幅広い活動で話題を集めるRitaが、「夢を見る夢」の制作時にタッグを組んだ気鋭のクリエイター・折倉俊則氏と改めてタッグを組んだ1枚で、全曲を折倉氏がプロデュース。美しい愛と死生観を優しく繊細な音楽群で浮き彫りにした注目タイトルとなっている。

そこで今回は本作の発売を記念して、Ritaと折倉氏が語ったメッセージを紹介しよう。

Rita & 折倉俊則氏が語る「星ノ雨-Closed Garden-」

――今回、コンセプチュアアルバムを出すことになった経緯を教えてください

Rita「今回、全面的にプロデュースしていただいた折倉さんと、一緒にお仕事をした作品が5年前の『Aster』という作品で、そのEDテーマが『夢を見る夢』という曲だったのですが、5年が経った今でも人気の曲で、作品を知らない方でもこの楽曲については好きだといってくれるファンがいらっしゃるんですよ。そんな曲と、その元となる『Aster』という作品のイメージをメインコンセプトにして、『Aster』の中にある『人を失ってしまった悲しみ』や『愛する人への想い』を軸にしたアルバムを作ってみませんか、といったお話を折倉さんにさせていただいたところ、折倉さんもぜひということだったので、今回こういう形でリリースさせていただくことになりました」

――「夢を見る夢」は5年前の曲なんですよね

Rita「この5年の間、いろいろなパターンで披露させていただいて、例えばアコースティックであったり、バンド編成であったり、さまざまなパターンでやっていくうちに、お客さんとシンクロするというか、気持ちが通じ合っていくような瞬間がいくつかありました。この曲を聴くと、元の作品とは関係なく、『雰囲気で涙が出た』とか『心が動かされた』といったご意見を数多くいただいています。なのでこの曲に関しては、すごく大事にしていきたいという想いがこの5年間の中でも強くて、それが今回のCDに至った経緯にもなっています」

――数ある曲の中から5年前の曲が掘り出されたことについて、折倉さんはいかがですか?

折倉俊則氏「この5年の間、Ritaさんとお会いしたときに、何度かこの曲の話が出てきて、ライブで歌ったら目の前のお客さんが泣き始めたとか、すごくありがたいお話を何度も聞かせていただいていたんですよ。それだけでもうれしいことなのに、今回あらためてCDという形にできたことで、二重の喜び的なところがあります」

――5年前に歌い始めた頃と現在で、何か曲の印象で変わったところはありますか?

Rita「印象自体はほとんど変わっていないのですが、自分の中での歌い方や感情の込め方は変化してきている感じがします。今回、リレコーディングという形でもう一度新しく歌い直させていただいているのですが、それによって、これまで自分の中に積み重なってきた歌い方の変化のようなものが表現できているのではないかと思います。5年前を思い返すと、曲に対する感情表現がまだ拙かったというか、自分で思っているようにできなかった部分があったと思うんですよ。もちろんその時は精一杯やっているのですが、それでもやはり表現し切れていなかった部分がきっとあったのではないかと思います。そういった部分が、今回のレコーディングでは消化できたのではないかと思います」

――ご自分で聴き比べてみるといかがですか?

Rita「もう恥ずかしくて(笑)。5年前の歌い方のほうが好きだとおっしゃる方もきっといらっしゃると思うのですが、自分の中では今歌うとこうなる、という形がひとつできあがったのではないかと思っています。でもやっぱり恥ずかしいです」

――あまり聴いてほしくないですか?

Rita「そんなことはないですよ(笑)。それはそれでひとつの形ですし、5年の間、歌わせていただいたことへの感謝、聴いてくださる皆さんがこの曲を好きでいてくださったことに対する感謝の気持ちがすごく大きいです」

折倉氏「実は今回、音色などもまるっと今風に新しく作り直しているのですが、『夢を見る夢』と『二つめの空』、『Aster』に関係しているこの2曲だけは、当時のギターの音データをそのまま使っているんですよ。特に『夢を見る夢』はアコースティックギターの印象が強い曲なので、当時のバージョンを知っている方もすんなりと楽しめるのではないかと思います」

Rita「アコースティックギターの音色が美しい曲なので、ライブでもアコースティックでやらせていただくことが多いのですが、特にそのフレーズは、ギタリストの方が熱心に弾かれるんですよ。自分の横で、生で演奏されるのを聴いていると、こちらの感情もすごく乗ってくる。そういう意味ではライブで育った曲といってもよいかもしれません」

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