初代iPhoneが2007年夏に登場してから5年半、いまもなおiPhoneの躍進は続いている。iPhoneの製品としての魅力が落ちたわけではないが、一方で環境はつねに変化しており、性能や使いやすさ、価格などのあらゆる面で競合が激しくなっている。実際に2012年年末商戦でAppleの伸びが減速しているかをこのタイミングで語るのは時期尚早だが、今月1月23日に行われる同社会計年度で2013年第1四半期(2012年10-12月期)決算で明らかになるだろう。

そして問題となるのが、今回のテーマである3つめのミッドレンジ以下の市場でのシェアとライバルの躍進だ。先日の「2013年のAppleと"iPhone 5S"を考察する」のレポートにもあるように、今後もAppleが成長を続けるのであれば、新興国や(先進国での)低所得層をターゲットとした市場の開拓は避けて通れない。近年、米国でも(低所得層をターゲットとした)プリペイド専業キャリアが次々とiPhoneの取り扱いを開始しているが、一方で端末がフル価格の500~650ドルのラインであり、Androidなどのライバル機が100~200ドル程度で購入できることを考えれば非常に高価だ。おそらくは、iPhoneのネームバリューをもってしても対象層にはフル価格での訴求は難しく、両者の価格差は埋めようがないと思われる。これは中国をはじめとした新興国でも同様で、市場を拡大するほどに価格面でのギャップが増えることになるだろう。

とはいえ、単純に低価格な製品をリリースするだけでは既存のブランド価値を損なう可能性もあり、新規ユーザーを獲得できる可能性がある一方で、これまで高い中古価格に支えられていた既存ユーザーのiPhone買い換えサイクルも破壊する可能性がある。戦略としては、既存のiPhone路線はそのまま残しつつ、別の基軸の製品を用意するのが適していると思われる。筆者の予想ではあるが、例えば若年層向けに高級感よりもカジュアル製を前面に押し出した製品などだ。小型サイズであったり、iPod touchライクな形状のカラーバリエーションを持った製品であったりと、iPhoneのアプリや基本機能が使えつつも、より安価で提案型の製品にすることで、新規層の開拓が期待できる。

また販路の拡充も重要な要素だ。既存の携帯キャリアに加え、新興国と先進国の中小キャリア、特にプリペイドサービスを中心に展開する事業者をパートナーに迎え、積極的に拡販することが求められる。これにともない、これまで大手でiPhoneの取り扱いを行っていない事業者である「中国移動通信(China Mobile)」「NTTドコモ」といった「最後の砦」を崩すのが課題となる。これら事業者で最終契約に至らない理由に、コミッションなどの契約条件があり、これを当該業者が認めないことになるとみられる。既存の携帯キャリアとの契約もあり、これら条件をすぐに緩めるとは思えないが、今後Apple側の情勢の変化や新規製品ラインナップの追加にともない、軟化姿勢を見せる可能性はある。いずれにせよ、2013年以降、Appleをとりまく情勢は大きな岐路に差し掛かると予想する。