ソニー ホームエンタテインメント&サウンド事業本部 企画マーケティング部門 TV&VIDEO商品企画部 企画2課 プロダクトマネージャーの下倉健太郎氏

ソニー ソフトウェア設計本部 ホームアプリケーション設計部門 5部1課 ソフトウェアマネージャーの満生一隆氏

iOSアプリ「Twonky Beam」がアップデートでDTCP-IPに対応し、レコーダーに録画したデジタル放送をiPadで視聴することが可能になった。iOS版Twonky Beamが最初に正式対応した製品はソニー製レコーダーだったが、その対応の早さを探るため、ソニー ホームエンタテインメント&サウンド事業本部 企画マーケティング部門 TV&VIDEO商品企画部 企画2課 プロダクトマネージャーの下倉健太郎氏と、同社ソフトウェア設計本部 ホームアプリケーション設計部門 5部1課 ソフトウェアマネージャーの満生一隆氏に話を聞いた。

―― 「RECOPLA」のiOS版がアップデートされ、「お手もと再生機能」に対応しました。ついに、DLNA/DTCP-IPコンテンツの再生が可能になりましたね。反応はいかがですか?

下倉氏「おかげさまでご好評をいただいております。我々のリソースも限られていますので、まずは自社端末でスタートし、次にiPadを含む他社製タブレットでという順序になりましたが、今回の対応で多くのお客さまにお楽しみいただけると考えています」

―― 「お手もと再生」に対応するレコーダーは?

満生「RECOPLA自体は一昨年前のモデルから対応していますが、『お手もと再生』は昨年のモデルからとなります。iOS端末で再生するときには、レコーダー側でモバイル機器向けのトランスコード(※)が必要になるためです」

※ 映像フォーマット/解像度変換処理のこと。MPEG-2 TSからH.264への変換などフォーマット(コーデック)変換のほか、フォーマットは変えず解像度のみ1080p→720pに変えるといった解像度変換に大別される。

―― それは、H.264のトランスコードに必要なハードウェア的条件が満たされていないという理解でよろしいですか?

満生「そのとおりです。一昨年のモデルといえば、ちょうどアナログ停波のタイミングで買い換えが進んだ時期ですから、我々としてもご要望にお応えしたいところなのですが、ハードウェア的に対応していません」

―― Twonky BeamのiOS版がDTCP-IP対応を果たしたのが11月末、それから2週間ほどでRECOPLAもTwonky Beamと連携する方法で、間接的にDTCP-IP対応を実現しましたね。

満生氏「ソニーのレコーダーが採用しているトランスコード方式は、モバイル端末にも配慮された『モバイル端末にやさしい』設計が行われています。この『やさしい』には、モバイル端末で再生してもあまり負荷が高くならないビットレート設定や、どのプラットフォームでも再生可能なコーデック、MPEG-2 TSのマルチプレックス仕様など様々な意味があります。おそらくiOS端末との相性はいいだろう、ということは早い段階で見えていました」

iOS版「Twonky Beam」がアップデート、DTCP-IP対応により地デジなど著作権保護されたコンテンツの再生が可能になった(画面はiPhone 5のもの)

―― その「相性のよさ」ですが、具体的にいうと?

満生氏「ビットレートが適度だということもあるでしょうし、ノウハウに絡むことなので詳細は話せませんが、コーデック周りの仕様も大きな要因です。元々、『Xperia Tablet』と『Sony Tablet』をターゲットに設計・開発を進めており、iOS向けにチューニングしたわけではありませんが、結果としてiOS端末に搭載されているデコードチップやメディアプレーヤーとの相性がよかったことが、早い時期にTwonky BeamおよびRECOPLAでDTCP-IPコンテンツ再生を実現したことにつながっています」

―― トランスコードの条件は?

満生氏「すべての番組は、一律にMPEG-4 AVC/H.264でトランスコードされたうえでストリーミング出力されます。解像度は720p、ビットレートは約3Mbpsです」

―― 2012年秋冬モデルの「BDZ-ET2000」を利用し、いろいろな録画済番組をTwonky Beam/RECOPLAで再生してみましたが、最高画質のDRモードで録画した番組もコマ落ちすることなく、スムーズな再生を楽しめました。

下倉氏「無線LANの帯域には気をつかいました。それほど速度がでない環境でも利用でき、かつハイビジョン品質の映像が提供されなければなりませんから。その辺りを考えて現在の仕様に落ち着いたわけです。トランスコードするにしても、想定したスペックに収まるよう配慮しました。具体的には、ビットレートの調整などです」

満生氏「約3Mbpsというと、弊社のレコーダーではLRモード相当ですからね。動きの激しいシーンや画質のことを考慮し、もう少しレートを上げたいところでしたが、そうすると動画の視聴条件が厳しくなります。ユーザの皆さんの使い勝手と天秤にかければ、720p/約3Mbpsというスペックが現状では最適だと思います」

―― サッカー中継など、動きの激しいスポーツ番組でもコマ落ちは発生しませんでした。

満生氏「ビットレートが3Mbps程度ですと、チューニングに難があれば粗が目立ってしまいます。弊社製品では、その辺りに気をつかいながら、インテリジェンスエンコーダを利用しH.264トランスコードを実行しています」

iPad版Twonky Beamを使い、DRモードで録画した地デジ番組を再生したところ。1080pから720pにトランスコードされてはいるが、コマ落ちのない滑らかな映像を楽しめた