米Dellが12月13日まで米テキサス州オースティンで開催した「Dell World 2012」での主役のひとつが、同社が秋に発表した「Active System 800」だ。サーバー、ストレージ、ネットワークを一体にしたコンバージドインフラ製品で、日本でも2月に登場を予定している。Dell Worldで明らかになったデンターセンター/エンタープライズ事業の戦略をまとめる。

PCベンダーからエンタープライズへ拡大を図るDellは、約4年前から多数の企業買収を通じてポートフォリオを構築してきた。現在、サーバー、ストレージ、ネットワークはエンタープライズソリューション事業部の下で進められている。そのエンタープライズソリューションを率いるのがMarius Haas氏だ。Mark Hurd氏(現在Oracle)時代にHewlett-Packard(HP)に勤務したこともあるこの分野のベテランで、今年の夏にDellに入社した。

Haas氏は会期中、エンタープライズ戦略を説明するパネルを開いた。そこで同氏はまず、各分野の状況についてまとめた。主力となるサーバーは好調で、アジア太平洋など一部市場で台数ベースでのシェアナンバー1を獲得している。

台数ベースでは世界市場でも首位のHPに肉薄していると強調した(だが、価格面ではIBMやHPに大きく水をあけられている。例えばIDCの2012年第2四半期のデータでは、トップのIBMと約17億ドルの開きがある)。PowerEdgeラインで投入するサーバーは第12世代を迎え、社内開発を中心にメモリ仮想化のRNA Networksなどの企業買収も続けている。

Dellは主として買収によりエンタープライズポートフォリオを構築してきた

ストレージは2007年に買収したEqualLogic、2010年に買収したCompellent Technologiesなど買収した技術が中心となる。ネットワークでも、2011年夏にForce 10 Networksを買収した。すでに業界4位のポジションにあるという。これらをソフトウェア側のセキュリティなどで固めるのがエンタープライズのポートフォリオとなる。

だがストレージでは課題もある。Dellは長年続いたEMCとの提携を2011年後半に解消、その後自社製品でストレージを進める戦略をとってきたが、売上高ベースでは伸び悩みの状態にある。

Haas氏はこれについては、好調なサーバーを軸にした展開戦略を描いてみせる。「PC事業で成功し、それをサーバーに拡大してきた。われわれはサーバーではWeb 2.0企業から高性能データセンターを必要とする大企業まで幅広い顧客を抱えており、(これらの顧客に対し)今後はソリューションとしての提供に切り替えていく」とHaas氏。

その上でのストレージの差別化については、Compellentの特徴である階層技術を取り上げる。「データの重要度に合わせて最適なレベルに配置することで、サービスとコストの両方で最適化を図る。最大80%改善も可能だ」(Haas氏)。

個々の戦略よりも、Dellの最新のフォーカスはこれらを事前に統合したソリューションの提供にある。「これまでのITは価格性能比にばかり目がいっていた。だが顧客との対話から、ワークロードの最適化、運用の効率化にニーズが移っていることを感じている」とHaas氏は背景を説明する。

一方で、予算はこれまで通り、あるいは削減傾向にある。それに対するDellの回答が、10月に発表した「Active Infrastructure」構想となる。

「Active System 800」はその第一弾で、PowerEdge(サーバー)、Compellent(ストレージ)、Force 10(ネットワーク)を組み合わせ、事前統合・検証済みのオール・イン・ワン型のデータセンターアプライアンスとなる。VMwareやMicrosoftのハイパーバイザーをサポートし、ハイパーバイザーに依存するスタック全体を管理できる専用ソフトウェア「Active System Manager」も備える。モジュラー型、統合管理などの特徴により、運用環境までの作業を最大75%削減できるという。

「Active System」

会期中Dellは、Active System 800向けに認定・最適化されたワークロードソリューションのリファレンスアーキテクチャを発表した。これを利用して、Citrix XenDesktop、Microsoft Exchange 2010/SharePoint 2010/Lync 2010、VMware View向けのソリューションとして利用できるという。

コンバージドインフラは、ライバルの米Cisco Systemsの「UCS」など各社が投入している。Dellの差別化は何か?ーーHaas氏は表を示しながら、「価格性能と運用効率の両方を実現する。この両方を実現するソリューションはDellだけ」と強調する。Ciscoソリューションと比較するとワット当たりの性能は最大45%改善し、プロビジョニングのエラーは最大25%削減できると胸を張る。

Dellのコンバージドインフラの市場でのポジショニング。価格性能(横線)と運用効率(縦線)の両方を共に満たすという。Ciscoは左上の新しいプロプライエタリシステムと位置づけた

これをさらに強化するのが、11月に買収したGale Technologiesのインフラ自動化技術だ。「ベアメタルレベルでのプロビジョニングやオーケストレーションを行うのではなく、ハイパーバイザーレベルに持ち上げ、DellおよびDell以外のコンポーネントも管理できる。プロビジョニングやオーケストレーション機能を加速化できる」と買収の理由を説明する。

Gale技術統合以外のActive Infrastructureの計画としては、ISVと協力しながらSAP HANA、Oracleなどの業務アプリケーションの最適化をすすめる。同時に、提供地域も拡大し2013年2年以降に日本を含む米国外での提供を開始する。

「Dellにはレガシーがない。すべての研究開発を将来のバリュー提供につながる技術に注ぐことができる」とHaas氏は述べ、顧客との対話を通じてエンタープライズ分野の戦略を進めていくとまとめた。